ピエモンテ州最大の自社畑所有を誇る 家族経営ワイナリー、ベルサーノBersano

ピエモンテのランゲ・ロエロ・モンフェッラート丘陵が世界遺産に認定されてからというもの、北欧、ベルギー、スイスなどからこの地への訪問客が急増しているという。

そのランゲとモンフェッラートに家族経営では最大のブドウ畑250haを所有しているのがベルサーノだ。州内11か所に広がる自社畑でバルベーラ、ネッビオーロ、モスカート、グリニョリーノ、ブラケットなどを栽培し、ワイン生産量の90%を自社畑のブドウで賄っている。本拠地はニッツァ・モンフェッラートの鉄道駅前にあって、ワイナリーだけでなくワイン博物館も併設している。

 

ジュゼッペ・ベルサーノが1907年にニッツァ・モンフェッラートの高台に立つクレモジーナ宮殿とその周囲のブドウ畑(DOCバルベーラ・ダスティ、現在はDOCGニッツァ)を取得してワイン造りをはじめたのがベルサーノ社の始まりだ。すでに110年を経過している。ジュゼッペの跡を継いだ息子のアルツーロ・ベルサーノが1950年代から1960年代にかけてモンフェッラートの自社畑を拡張してベルサーノ社経営の基礎を築いた。この頃に使われていた農機具や醸造用具、そして販売関連の書類・広告などがワイン博物館に所蔵されている。

 

ベルサーノはバルベーラ・ダスティのリーダーだ。若いうちは気難しくて熟成に時間のかかるネッビオーロに比べると、バルベーラは果実味豊かでやさしいタンニンと爽やかな酸をもち、若い時も熟成してからもたのしく味わえる品種である。ブドウ栽培責任者フィリッポ・モブリーチは、バルベーラの栽培に精通しており、ベルサーノの責任者だけでなくバルベーラ・ダスティ協会のディレクターを務めるバルベーラ栽培のリーダーでもある。

 

醸造責任者のロベルト・モロジノットはバルベーラ造りのエキスパートだ。ロベルトは2000年にベルサーノにやってきた。2005年に醸造責任者になって今日のベルサーノ・スタイルを確立した。1991年から2000年まではジャコモ・ボローニャ(ブライダ)で働いた。バルベーラの改革者と称されるジャコモ・ボローニャが急逝したのは1990年のこと。当時、ジャコモの息子・ジュゼッペは醸造学校を卒業したばかり。いまだ学生とみまごう痩せた青年だったが、数年前に会ったとき、すっかり貫禄が出ていて驚いた。ロベルトは若いジュゼッペを助けてブライダで10年勤め、ブライダが一段落した頃に請われてベルサーノにやってきた。それからというものベルサーノのバルベーラが長足の進歩を遂げたのだった。

 

日本市場のバルベーラに対する評価はまだまだ厳しい。ネッビオーロの場合は、バローロ、バルバレスコが有名になって、幾つかのクリュや小さい生産者のワインが大きな評価を得ている。そしてこのごろはフォンタナフレッダのような大きな生産者のネッビオーロも見直され評価されている。ところがバルベーラの大手生産者ベルサーノはずっと等閑視されたままだ。過去10数年の間にベルサーノ・バルベーラの品質は格段に進化した。しかも求めやすい価格を維持したままである。小売価格2,240円のコスタルンガは、コスト・パフォーマンスのとても優れたバルベーラだと思う。

 

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