チリ・レイダヴァレーのパイオニア「レイダ」 アサヒビールが輸入販売開始

レイダヴァレーはチリ・サンティアゴの北にあるDOアコンカグアのサブ・リージョンで、太平洋に面したとても冷涼なブドウ産地である。すぐ近くにチリワイン積出港のひとつサン・アントニオ港があるので、このサブ・リージョンは「DO サン・アントニオ/レイダ」と呼ばれている。レイダがピノ・ノワールやシャルドネの産地として注目を浴びたのは1990 年代の後半になってからだ。それまでこの地はあまりにも寒くて水利もなく、電気も通っていなかったから、ここには牧畜と林業を営む人々がいただけだった。

レイダの創業者は8kmも離れたマイポ川の河口近くからパイプラインで水を引き、村から電線を渡して土地の灌漑に着手した。レイダのブドウ畑の創業は1998年である。その後、ビニャ・レイダはリマリヴァレーのビニャ・タバリの傘下に入り、タバリがサンペドロ・タラパカ・グループの一員だったことから、サンペドロと繋がりの深いアサヒビールがこの9月4日からこのワインを日本市場に輸入・販売することになった。

 

レイダは164haもの自社畑を所有し、ここにピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、シャルドネを植えた。2007年に女性醸造家ビビアナ・ナバレテがレイダのチーフワインメーカーに就任すると、そのワインの評価がぐっと上昇して世界から注目されるようになった。アサヒビールはビニャ・レイダの新発売に当たり、ビビアナ・ナバレテを東京に招いてワインセミナーを開催した。以下、ビビアナの解説を紹介する。

 

<レイダヴァレー>

DOレイダには2,000haのブドウ畑があり、これを10の栽培家とワイン生産者が所有している。太平洋岸から4km~12kmの位置にあり、ここは海岸山脈の西側斜面にあたる。一般にチリのコスタ(海岸山脈にあるブドウ畑の総称)は、カサブランカのように海岸山脈の東側に位置するがレイダは海に面した西側にあり、海風が直接に吹きつける。

平均気温はチリのブドウ栽培地の中で最も低く、気温の日較差はそれほど大きくない。このためブドウが緩やかに成熟し、香りの成分が豊かになる。そしてレイダにはカサブランカのような遅霜の被害がない。朝霧がブドウ畑を覆うのでブドウの酸度が保たれる。この酸は、長い成熟期間がもたらす香りや糖とうまくバランスしている。

レイダヴァレーは最も高いところで海抜180m、緩やかに起伏している。その土壌は、①赤い色の粘土質、②花崗岩とシルトの崩積した混合物、③花崗岩、④一区画にだけみられる石灰質という構成。

 

<ビニャ・レイダ>

ビニャ・レイダは4 年前から土壌研究をスタートしている。その結果を基にしてピノ・ノワールを植えた。ピノ・ノワールの畑は85ha になった。ビニャ・レイダは自社畑のブドウだけでプレミアムワインを造るワイナリー。その品質階層は、レセルバ・シリーズ(ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、シラー、シャルドネ)とシングル・ヴィンヤード・シリーズ(ラス・ブリサス・ピノ・ノワール、ガルマ・ソーヴィニヨン・ブラン)で構成されている。

レイダ・シングル・ヴィンヤード・ガルマ・ソーヴィニヨン・ブラン2017

ホールバンチで仕込み、濁度100~120の果汁を発酵させる。青リンゴや火打石の香り。キリッとしたリンゴ酸の味わいがある。「リンゴ酸は日差しにとても敏感な性質があり、日差しの強い畑のブドウはその含有量がとても少ない」と、ビビアナが解説した。味わいに厚みとしっかりしたテクスチャーがあり、ほんのり塩味がフィニッシュに感じられる。一般にチリの2017年ヴィンテージは、森林火災の影響を色濃く反映して煙のニュアンスがあるが、このワインには感じられない。レイダは山火事の影響が無かったからか。

 

レイダ・シングル・ヴィンヤード・ラス・ブリサス・ピノ・ノワール2016

50%は自然酵母で発酵し、30%は樽熟成している。スミレ、イチゴ、カシスの香り、かすかに土っぽい香りもあってとても複雑。香りのヴォリュームも大きい。フレッシュなアタック、味わいに強さと膨らみがある。こちらもほんのり塩気を感じる。洗練された味わいで余韻が長い。

 

レイダ・レセルバ・シラー2017

3日間のコールド・マセレーション、開放桶で発酵しパンチダウン。30%は樽熟成。ラズベリー、チェリー、熟したフルーツの香りとスミレや白胡椒の香り。この胡椒の香りはクール・クライメット・シラーの特徴。アタックはフレッシュで、ここにも胡椒のニュアンスがある。タンニンは甘く熟しているがほんの少し粗い感じがする。またひとつ、おいしいシラーを見つけた。(K.Bansho)

 

WANDS2018年10月号は「日本ワイン・秋編」「ウヰスキーの新しい時代」特集です。
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