シャトー・ジンコ 2016年 ワインへの思いがつのりボルドーへ飛んだ 百合草梨紗さんの初ヴィンテージ発売開始

ワインに詳しい友人に連れられてワインショップで試飲を重ねているうちにワインに魅せられて、2000年に21歳で渡仏を決めた。百合草梨紗さんは穏やかな雰囲気ながら思い切りのよい人だ。それから10数年。今では小さな畑を購入しワイナリーを経営することになった。2016年の初ヴィンテージが完成し、日本でも発売が始まろうとしている。

 

ネゴシアンを経て

渡仏にあたり、向かった先はボルドーだった。試飲したワインの中で、最も気に入ったワインのラベルには「サンテミリオン」の文字が記されていたからだった。2002年からはボルドー商工会議所が運営する専門学校で、醸造や試飲などを学び始めた。

その後、夫となるマチュー・クレスマン氏と出会い、共に「カイワイン」という名のネゴシアンを設立した。約10年にわたるネゴシアンの経験で人脈も広がった。ある時、畑を購入して自分自身でワインを造りたい、と呟いた。すると、それを耳にしたマチューが、即座に畑探しを始めてくれた。

また幸運にも、家族で住む建物の1階にはシャトー・ペトリュスの元醸造長であるジャン=クロード・ベルーエ氏が住んでいた。そして候補に上がった畑を見てもらうと、ベルーエ氏が太鼓判を押してくれたのだ。2015年11月に、1.5haの畑をコート・ド・カスティヨンのサンフィリップデグイ村に購入することになった。この畑は、石灰質の母岩に1.5mほどの粘土土壌で、百合草さんが愛してやまないサンテミリオンの土壌の流れだ。そこには平均樹齢35年のメルロのみが植えられていた。前オーナーのルシン家が丁寧に手入れをしていたため、とても状態がよい畑だった。有機栽培を実践している。2017年には、隣接する0.15haの畑も購入した。こちらもやはりメルロで、樹齢80年の古木が植わっている。どちらも南向きのなだらかな斜面の畑で、標高は100mの地にある。

 

初ヴィンテージ

2016年の初ヴィンテージは、10月10日の早朝から収穫を始めた。気温はまだ5℃だった。畑で選果しながら手摘みした後、醸造所でも選別し、粒選りし、破砕せずにステンレスタンクへ入れる。高さ1.5mと低めで幅広なタンクで、ピジャージュとルモンタージュを繰り返しながら醗酵が始まるのを待つ。醗酵温度は20〜25℃と低めに保ち、ゆっくりとソフトな抽出をする。熟成用の樽はもちろんフレンチオークだが、容量500ℓと大きめのものだけ。初年度はほぼ新樽となった。

Ginkgo Bilobaがイチョウの葉を表す言葉で、愛と友情の印であることから、次女の誕生を祝して畑の側にイチョウの木を植えた。そこからシャトー・ジンコと命名した。また、セカンドワインのCeleb by Ginkgoの可愛らしいイラストは、長女のお絵描きをプロのデザイナーに依頼したもの。年間3,500本ほどと小規模ながら、ワインや家族への愛情のこもったボトルができあがった。

7月中旬に百合草さんが帰国して開かれたお披露目会で試飲した時には、少し早めに瓶詰めしたものだった。そのためまだ若干固さが見られたが、ブドウの成熟した様子や丁寧な造りが印象に残った。7月31日に正式なボトリングが無事終了し、日本へ間もなく到着するようだ。(Y. Nagoshi)

WANDS2018年10月号は「日本ワイン・秋編」「ウヰスキーの新しい時代」特集です。
ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る