日本ワイン・レポート 早池峰の自然の恵みに育まれた “いわてのブドウ100%”にこだわる エーデルワイン

ブドウの葉が紅葉を始めた10月中旬、収穫と醸造に多忙を極めるさなかにエーデルワインを訪問した。

東京駅からはやぶさで約2時間40分、新花巻駅で下車し、車で30分弱。刈入れを待ち黄金に輝く稲穂や茶色の雑穀、真っ赤に色づいたリンゴなど豊かな自然の恵みを車窓から眺めていると、雨よけのビニールを被ったブドウの畝が見えてきた。まもなくワイナリーに到着だ。

早池峰山に咲くハヤチネウスユキソウはアルプスの名花エーデルワイスの近縁種でワイナリーの名前はここからきている。この花がとりもつ縁で、オーストリアのベルンドルフ市と1965年に姉妹都市となった。

ワインシャトー大迫(おおはさま)で、藤舘昌弘社長からエーデルワイン設立の経緯やこれまでの足跡について次のような説明があった。

大迫には南部藩の隠し金山がありゴールドラッシュに沸いた時があった。また、かつては盛岡と遠野を結ぶ遠野街道の宿場町として、人・金・酒が揃い賑わった。「私はこの地は岩手のラスベガスだったと思っている」と藤舘氏。

藤舘社長

 

「大迫の気候はボルドーに似たり」

岩手県知事だった國分謙吉氏のこの発言を契機にして、ブドウ栽培が始まった。その背景には、昭和22、23年のカスリン・アイオン台風の影響でそれまで行なわれていた葉タバコ栽培が困難になったことがある。この地は奥羽山脈と北上山地に挟まれ、降水量が少なく、気温が高めの夏と厳しい寒さの冬、四季や昼夜を通して寒暖差が大きい典型的な盆地性気候。国内でも有数の古い地層で、弱アルカリ性の土壌には石灰質が多く含まれる。

 

エーデルワインは1962年に大迫町と大迫農協の出資により設立された岩手ブドウ醸造合資会社に端を発する。1974年に株式会社エーデルワインが設立され、翌年同社を吸収合併。1981年には本格的なワイン専用ブドウの栽培が始まった。現在大迫地区の醸造用ブドウ栽培者はすべてエコファーマーとして認定され、化学肥料や農薬を控えた土壌造りを基本に据えたブドウ栽培に取り組んでいる。エーデルワインでは、大迫地区の34 軒の栽培者からブドウを仕入れている。

 

「渋くてスッパクてウマグネ!」

このように言われ続けた40年。岩手ブドウ醸造合資会社が設立された1962年、町の名士が列席したとある祝賀会の時に初めて大迫で醸したワインが出された。それは仕込んで間もない新酒で、日本酒に慣れ親しんだ舌には馴染まなかったようだ。当時は麦飯と漬物の時代、しかも甘口のワインが大流行中だったから当然かもしれない。しかし、「良いワインは良いブドウから」という信念のもと、主力のリースリング・リオンを育て、まじめにワインを造ってきた。そして苦節50年、地元産のリースリング・リオンを使った限定醸造ワイン「五月長根葡萄園」がコンクールで数々の賞を獲るようになって、ようやく汚名返上かなった。

 

花巻市長、上田東一氏の説明によると、岩手県内には現在12 のワイナリーがあり、ここ大迫町にはエーデルワインの他に、2015年に高橋葡萄園、2016年に亀ケ森醸造所が製造免許を取得し、3ワイナリーがある。しかし、人口減少・高齢化によりブドウ生産農家とブドウ園の減少が深刻な問題となっている。

花巻市・上田市長

こうしたことから、市ではブドウ生産とワインを核とした産業振興のため次のような取り組みをしている。①集落支援隊や新規就農者支援、空き家バンクなどブドウ生産者への支援 ②花巻クラフトワイン・シードル特区認定及び農地取得要件の緩和による環境整備 ③醸造志向者への支援( 補助金給付) ④花巻ワインのPR。

 

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