世界最古の修道院ブルワリー ヴェルテンブルク修道院醸造所

クラフトビールブームの昨今、多様なビアスタイルを日常的に楽しめる環境になった。新進気鋭の尖ったアイテムをひととおり試して、古き良きものの良さを再認識することもある。そしてそれが、クラフトビール生産者が目指す到達点だったりもする。ここで改めて伝統的ブランドに目を向けてみたい。

 

〈悠久の歴史〉

ヴェルテンブルク修道院は、617年頃にドナウ河畔ケールハイムの地に建てられたバイエルン州最古の修道院だ。学術的裏付けのある文献には1050年にビール醸造所設立の記録があるが、1035年の醸造長の鬼簿があるから、それ以前から生産はしていたのだろう。巡礼者や賓客に提供でき、自給自足生活の修道士の栄養源にも修道院の財源にもなるビールの重要度は大きい。1803年の世俗化により生産は一時期中断されたが、 1846年に再び修道院所有に戻り、今日まで続いている。紛れもなく、現存する世界最古の修道院醸造所だ。1973年より25kmほど離れたレーゲンスブルクのビショーフスホーフ醸造所の傘下に。ヴェルテンブルクで醸造までを行い、80年代に設備を拡張したビショーフスホーフで瓶詰・出荷。現在28か国に輸出している。

〈伝統的醸造〉

輸出部長のトビアス・フンケ

ドイツにもクラフトビールの波は押し寄せ、国産ビールのスタイルも広範なものとなっている。そんな中、ヴェルテンブルクは麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする1516年制定のバイエルンのビール純粋令を遵守している。モルトは地元の複数の生産者から購入。ホップは基本3種、アロマホップはハラタウトラディションとペルレ、ビター・ホップはヘルクレス。地下80mから汲み上げた低硝酸塩の水で仕込む。酵母は上面発酵用・下面発酵用とも、原材料と醸造用水に合うよう、ビショーフスホーフのラボで独自に培養している。マッシングはドイツの伝統的なデコクションで、2回煮沸法により濃厚な麦芽の風味を引き出す。麦汁は地下40mの岩盤を掘った貯蔵室に運ばれ、主醗酵が始まる。所要日数は4週間から3か月とスタイルによって異なるが、最も長いのが麦汁濃度18%以上のドッペルボックであるアザム・ボックだ。まだ完全に後醗酵は終わっていない状態で、タンクからの試飲をした。アルコール度数約7%の力強さと、適度な甘みとホップの苦みが複雑に絡む。エスプレッソやダークフルーツの香り。濾過前のため酵母の存在感のある、まろやかなテクスチャー。輸出部長のトビアス・フンケは「大抵のボックは甘味が強くて1杯で充分だが、アザムは後を引く甘みで何杯でもいける」と、試飲というのに1/3ほどのビールを入れた1ℓのマースジョッキを差し出しながら言う。彼らの何杯でも、は日本の感覚の何倍もの量に違いない。(Saori Kondo)

土日は参加費11,80ユーロでブルワリーのガイド付きツアーあり。ツアー参加申し込みは、Stadtmaus TCH Veranstaltungsにて

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