オーストラリアワイン紀行 ビクトリア&タスマニア 注目を集める冷涼栽培地域を往く

オーストラリアの冷涼地域のワインが、ようやく世界に認知され始めた。洗練された冷涼地域のワインは昔からあったが、かつてはフルボディのシラーズの陰に隠れていた。近年のライフスタイルの変化や食生活の多様化に伴い、より多くの人々にその価値が認められるようになったのだ。今、この波に乗り、今まで以上に自由な発想でワイン造りに取り組み、限界に挑む生産者たちがいる。彼らに会いに、ビクトリアとタスマニアを訪問した。

ビクトリア州

ビクトリア州は、ワイン生産者の数が最も多い州だ。生産者の数だけでいえば、実はオーストラリアにおけるワイン総生産量の半分を占める南オーストラリア州よりも多いのだ。その分小規模生産者の数が多いということになる。

今回はメルボルンからそれぞれ1時間から2時間弱の距離にある、モーニングトン・ペニンシュラ、ヤラ・ヴァレー、そしてギプスランドを訪れた。

これらの地域では、灌漑は排水をリサイクルするなどして最低限におさえるか、もしくは一切行わないところもある。さらに、化学薬品の排除など、長期継続を見越した環境と人に優しいワイン造りがもはや当然のこととなっている。

 

モーニングトン・ペニンシュラ

紺碧の森と壮大な海岸線が美しい産地で、風光明媚という言葉をまさに体現したような場所だ。メルボルンから車で約50分、富裕層に人気の避暑地でもある。三方を海に囲まれた海洋性気候で、この地域にある全てのブドウ畑が、海から7㎞以内の範囲にあり、海からの涼しい潮風がシャルドネやピノ・ノワールなどの生育に適した環境をもたらしている。長く穏やかな秋がブドウをゆっくりと成熟させ、果実由来の酸とタンニンを助長する。

ワイナリーは全体的に小規模生産者が多く、ピノ・ノワールが全体の50%を占め、白の主力品種はシャルドネだ。また、オーストラリアで初めてピノ・グリが植えられた土地でもあり、他にシラー、ソーヴィニョン・ブラン、さらにはオルタナティブ品種も散見される。

クィーリーのワイン

クィーリー

Quealy

最初に訪れたのはクィーリー・ワイナリー。オーナーであるキャサリン・クィーリーと夫のケヴィン・マカーシーは、モーニングトン・ペニンシュラだけでなくオーストラリアのピノ・グリ( グリージョ) のパイオニア的な存在である。

30年前、二人はこの地にピノ・グリ、ピノ・ノワール、そしてリースリング、マスカットなどを植えた。自社畑ではオーガニック、もしくはオーガニックに近い農法を実践している。モーニングトンは、オーストラリアでも数少ない灌漑をしなくてもブドウ栽培が可能な産地だ。

「雨は十分に降るの。ある程度の犠牲を払うこともあるけれど…」と語る。

キャサリンは除葉も避ける。ブドウはゆっくりと成熟することにより味わいと気品を培うが、葉を取り除くことでブドウの中の酸が低下し、成熟のスピードを速めてしまうと考えるからだ。

日照を最大限に受けられる北向きの斜面に植え、空気の循環を良くする目的で畝間は2.5mと広め。冷涼なモーニングトンでは、しっかりと日が当たっても焼けることはないため、ブドウに存分に日を浴びさせることができる。

ピノ・グリージョ キャサリンにとって、グリ、ではなくグリージョは、「隠しごとのできないまっさらなワイン」だ。浅い土壌ではブドウが早く熟すが、その代わりに素晴らしい酸が生まれる。土壌が浅くなおかつ灌漑をしない畑では、ブドウは葉よりも果実を成長させようとするという。果実由来のキレのある酸が印象的だ。

タジー・マジー・ヴィンヤード ピノ・グリ アルコールの強い、ビッグでテクスチャーのあるピノ・グリだ。重い赤い土壌の畑で、遅めに収穫し、ステンレスタンクで1年熟成。キャサリンいわく「オーブンで焼いたカボチャや上質なオリーブオイルやウォールナッツのよう」。燻製やハチミツのようなリッチな香りもする。

マスク・クリーク ピノ・ノワール クローンはMV6。タイムやスペアミントやラズベリーの香りがある。「クラシックな冷涼気候のピノ・ノワール」と表現する。デリケートで、同じ畑からできたピノ・グリが対照的にパワフルなのが面白い。

セブンティーン・ロウ ピノ・ノワール  モーニングトン最古のピノ・ノワール。1982年以来そのままの、3.5m幅で植えられている。畝間を広くとることで日照量が増え、空気の循環もよくなり、病気のリスクも減るという。凝縮した果実などの華やかな香り、ピュアな酸、ピノ・ノワールの良さがすべて詰まったワインだ。
Text & photo by フロスト結子

 

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