- 2015-11-5
- Wines, ニュージーランド New Zealand
テッド・レモンの話を基本に考えると、今存在するワイン産地では本来的なバイオダイナミクスが実現できる場所は本当に少ないと推測できるが、リッポンはその数少ない場所のひとつのように思う。蛇足だが、ここにはまだフィロキセラも到達していないので、自根で栽培していると、以前ニックから聞いたことがある。自根の場合、ヴィティス・ヴィニフェラは毛細根がアメリカの台木よりも細かいので、そこから得られる何かが違うのではないかと思っている、というようなことも語っていた。リッポンという農場で、独自の世界が出来上がっている。
「果皮の色、香り、甘さ、これらが鳥を呼び寄せる。これは、葡萄という果実にとって子孫繁栄のために必要なこと。これらとは、別のことについても話しておきたい。最も大切な部分だ。その土地の情報をすべて蓄積しているのは、種だと考えている。再生することが最も大切で、次の世代に受け継がれるべきものだから。種を食べてみると、食感、味わい、香りなど、遺伝子的な情報を含んでいる種の中に普遍的なものを感じる。年による差異も出てくるが、ワインのテクスチャー、形や印象、口の中で感じる質感は、種の影響を受けている」。
種。リッポンを理解するのに、これがひとつの鍵となる。
昨年は、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのド・ヴィレーヌ氏含め、3名のブルゴーニュの生産者がセントラルオタゴを訪れたという。「昔のブルゴーニュのテロワールは、一体どこに行ってしまったのだろうか」という疑問をもっての視察だった。ニック・ミルズは彼らと10年以上前から、共に学び続けている。そして、ここのクリマが新しく読み解かれていくのだろう。
「ブルゴーニュでは、今はあまりにも畑、村が細分化されてしまい、失われかけているものがある。ナポレオンの時代にはあったが、今はない。かつては、ひとつのブルゴーニュの村として、すべてを自給自足して成り立ち、それをワインに表現していたが、今はそれがない」。
「微生物から人間の汗まで、すべてを含め、この農場のひとつの声として、ひとつのワインとして、世に出したい」。
これが、ニック・ミルズの願いなのだ。講演のタイトルをThe Farm Voiceとしたのは、そういうわけだった。
「私たちは、ナチュラルワインのトレンドにのったわけではない。もともと、何も加えずにこの土地の表現すうるために考えた結果が、自然な造りということだ」。
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