特集・アルゼンチンワイン 新鮮でエレガントなマルベック

急速なインフレの進行でアルゼンチンの物価が跳ね上がっている。在アルゼンチン日本大使館がまとめた9 月のデータによると、

「全国規模のCPI 統計では、9月のインフレ率は前年同月比14.4%、前月比1.2%の上昇。また、9 月の議会インフレ率(一部の野党議員が発表している民間コンサルタント会社8 社の推計を平均した値、首都圏のみの調査に基づく)は、前年同月比25.91%、前月比1.92%の上昇と発表された。9 月のブエノスアイレス市発表インフレ率は、前年同月比24.0%、前月比1.7%の上昇となった」という。2001 年の1,000 億ドルにのぼるデフォルト(債務不履行)以降、アルゼンチンは国際的な信用を失い孤立を深めている。なかには崩壊の危機に瀕していると指摘するむきもある。豊かな資源と自然環境に恵まれた国がどこでどう舵を取り違えたのだろうか。

 

インフレ率の上昇はワインの国内消費と輸出にも大きな影を落としている。今年の日本向け輸出は前年を大きく割り込み、1~9 月累計で前年同月比33.3%も減少した。先行きの見通しも決して明るくない。日本向けワインの競合国がEPA やTPP 合意などで次々と有利な競争条件を獲得するなかで、アルゼンチンだけは蚊帳の外だからだ。

 

しかし、アルゼンチンの葡萄畑と醸造所では着々と品質改善が進み、メンドーサやカルチャキのマルベックがさらなる新境地をひらいている。メンドーサのマルベックは、フランスのコンサルタントとアメリカの批評家によってその名声が確立されたといっても過言ではない。だから自ずと濃縮した大きなワインになっていた。新しく拓いたウコ・ヴァレーなど海抜高度の高い葡萄畑のマルベックも過熟させて摘み、大きなワインにしてきた。しかし、従前より2 ~ 4 週間も早く摘んだというマルベックを飲んで驚いた。そこには未熟の青さは微塵もなく、しなやかなタンニンと上質の酸味があった。濃縮を求める思いが強すぎて、少しずつ収穫時期が遅れていたのだろうか。

 

グラルタジャリーのカリカタ(土壌分析のために掘削した穴)。ここは石灰質土壌だ。

グラルタジャリーのカリカタ(土壌分析のために掘削した穴)。ここは石灰質土壌だ。

もう一つは、涼しさを求め葡萄畑の標高に拘ることはアルゼンチンではとても大事だけれど、涼しさを確保したうえで、それぞれの畑の土壌プロファイルを知ることがもっと大事だという考えが広がっている。ウコ・ヴァレーの一部に石灰質を含む土壌がある。それまではウコ・ヴァレーをみなブレンドしていたけれど、石灰質土壌のマルベックを分けて仕込み、畑の個性を生かすことにした。特定の土壌から生まれる果実を最大限に生かすため熟成はオークの風味のつかないフードルを採用した。

 

こうして新しいマルベックが生まれた。ウコ(メンドーサ)、サンタ・マリア(カルチャキ)、ペデルナル(サン・フアン)を訪ね、アンデス高地で着実に進行するフレッシュでエレガントなワイン造りの実際をレポートする。(K. B.)

つづく/これ以降の内容につきましては、「ウォンズ」本誌「12月号」P.34〜50をご覧下さい。WANDS本誌の購読はこちらから

画像:アルタミラ(ウコ・ヴァァレー)からアンデスを望む

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る