特集・アルゼンチンワイン/アンデス高原2,000mのワイン

サルタ州カファジャテは、前の週末に強烈なソンダZondaに襲われた。フェーン現象の一種で、太平洋の寒冷風がチリ側アンデスに雨を落とし、乾いてアルゼンチン側に吹き下ろす。これは、時に台風を上回る規模を持つ。この時も、瞬間風速80~100km/hだったという。カファジャテの町の街路樹が何本も倒れ、残った樹も若葉がそぎ落とされて道路に積もっていた。早朝のジョギングでエル・トランジト畑を訪ねたら、ここでも街路樹が1本、畑側に倒れてブドウ樹をなぎ倒していた。しかし、この週の天気は「台風一過の秋晴れ」ならぬ「ソンダ一過の春晴れ」で、とても爽やかだった。

 

エル・エステコの醸造責任者アレハンドロ・ペパ

エル・エステコの醸造責任者アレハンドロ・ペパ

今回の目的は標高2,000mのブドウ畑、チャナル・プンコを訪ねること。チャナル・プンコは、エル・エステコの旗艦ワインを生み出す高地の畑である。キルメス山脈とアコンキハ山脈に挟まれて南北にのびるカルチャキ・ヴァレーの南端に位置するカタマルカ州サンタ・マリアにある畑だ。カファジャテからは約90kmのドライブ。途中、道路の一部は未舗装だったが、信号もなく約1時間で到着した。

 

チャナル・プンコは、南緯26度の特徴(極端な暑さ)と、標高2,000mの特徴(極度の寒さ)を併せもつ極めてユニークな葡萄畑である。南緯26度は南回帰線(23.5度)からほんの少し南下しただけの亜熱帯。ここが本来、どれだけ暑くて乾燥しているかというと、たとえば北半球の26度線は北アフリカのサハラ砂漠、アラビア半島、中国の雲南省、沖縄本島の南を通過し、北アメリカではメキシコ領バハ・カリフォルニアを通ってメキシコ湾を横断しフロリダ半島南端を横切っている。椰子、バナナ、サボテンなどに代表される常夏の植生で、葡萄栽培にはとてもじゃないが暑すぎる。

 

一方、標高2,000mは寒冷高地である。日本でいうと、雲上絶景宿で有名な高峰高原ホテルや、富士山須走口五合目が相当する。また、月山や早池峰山は山頂そのものが2,000mに達していない。つまりここでは高山植物がほんの少し育つ程度で葡萄栽培どころの話ではない寒さである。

このように南緯26度と標高2,000mという地理的条件は、それぞれが単独ならば葡萄栽培とはまったく縁のない土地だが、それらの条件が同時に存在すると、暑さと寒さが絶妙に組み合わさって中和され、興味深い葡萄の育つ土地になる。それがチャナル・プンコである。

 

(中略)

 

エル・エステコ・チャニャル・プンコ2012

エル・エステコ チャナル・プンコ

エル・エステコ チャナル・プンコ

ラベルにはビニェドス・デ・アルトゥラViñedos de Altura(高地の畑)とある。この年は8,600本の生産。フレンチオークの新樽(225ℓ、300ℓ、500ℓ=主体)で発酵。アルコール発酵は10日間、マセレーションは28日間、MLFはそれぞれの樽の中で。全部で18か月熟成。2013年ヴィンテージから熟成にフードルを使用、2015年ヴィンテージから発酵・熟成にエッグタンクを採用。

マルベック65%、カベルネ・ソーヴィニヨン35%。手摘み、選果台で房と粒のダブル選果。濃くて深い色合い。熟したフルーツの香り、リコリス、杉、スパイス、ダーク・チョコレート、ミネラルなどのアロマ。香りにたくさんのレイヤーがある。複雑味とインテンス。タンニンは丸くしなやか、とてもエレガントでしかも力強い。フィニッシュにきれいな酸味があり余韻も長い。マルベックは3月末、カベルネ・ソーヴィニヨンは4月初めの収穫。アルコール分15%、残糖分2.9g/l、総酸5.9g/l、pH3.8。

(K. B.)

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画像:サンタ・マリア・ヴァレー(カタマルカ州)

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