ピーター・ゲイゴがワイン造りの基本哲学を紐解く「ペンフォールズ・マスター・クラス」

penfoldsbottle

BIN 51 Eden Valley Riesling 2015

ステンレスタンクで3 か月間熟成され、数か月前に瓶詰めされたばかり。ハイ・エデンとウッドバリーという2 つの畑の葡萄を使用。Abv11.5%、RS 0g、TA7.2 g。南オーストラリアのリースリングは一般にライムの香りが強いが、「時にグレープフルーツやラベンダーのアロマがあり、熟成させるとハニーサックルのニュアンスも」出てくるのが特徴だ。ライムやシトラス、そして素晴らしくピュアな酸をもつこのワインは「若くしても楽しめるが、10年、20 年、30 年は熟成可能だ」という。

 

BIN 311 Tumbarumba Chardonnay 2014

ニューサウスウェールズ州の冷涼栽培地タンバランバの葡萄を使い、100%フレンチオークの古いバリックを使って自然酵母で発酵、8か月間熟成。ノン・フィルターで、ごく最近瓶詰めされた。ミネラリーで白い花やローストしたナッツの香り、口の中ではオイリーだが引き締まった舌触りときれいな酸が感じられ、余韻も長い。

 

Kalimna BIN 28 Shiraz 2012

1959 年以来毎年つくられている。最初の年はバロッサ・ヴァレーにあるペンフォールドのシグネチャー畑カリムナの葡萄を使っていたが、現在は南オーストラリア州各地のシラーズ100%を使い、アメリカンオークのホグスヘッド樽で13 か月熟成。プラムやラズベリー、チェリーなどの赤い果実香とスパイス、アニス、れになめし革のニュアンスも。ソフトなアタック、フルボディだがとても滑らかなタンニン、樽香が溶け込んでフレッシュな味わい。

「2012 年はまだとても若く、個人的には20年経ってから飲んでみたい。南オーストラリアは暖かく葡萄の成育期が乾燥している。かつて沼沢地だったボルドーと違い、“Clean & Green”。スプレーも少なくて済み、結果として葡萄の樹齢が伸びる。ここではシラーは樹齢が110 年、カベルネに至っては130 年超という古木が栽培され、収量は少ないものの果実は早く凝縮し、過度な抽出を必要としない。クナワラのように冷涼地のシラーにはアメリカンオークを使うこともあるが、このワインには古いアメリカンオークが適している。オーストラリアではいまシラーズにごく少量のヴィオニエを加えることがファッションになっているが、それはペンフォールズのスタイルではない」。

 

BIN 389 Cabernet Shiraz 2012

ラットンブリーやバロッサ・ヴァレーなど南オーストラリア各地の葡萄を使い、アメリカンオークのホグスヘッド樽(新樽40%、1 年樽60%)で12 か月熟成。1960 年の初リリース以来55 年連続してつくられ、オーストラリアのワインオークションでは「毎年、グランジと共に一位、二位を独占する人気ワイン。なかなか手に入れることが難しいワインとなっている」という。しかし、連続してつくることがこのワインの命題ではなく、基本コンセプトは「スタイルを維持できないような年にはつくらない」という。

カベルネ100%で造られる「BIN 707」がしばしば“Grange Cabernet”とよばれるように、このワインは“ベビー・グランジ” と呼ばれている。その理由は、新樽を除くと、前の年のグランジに1 回使われた古樽を使っていること、グランジと同じように長い熟成が可能であることに加えて、「グランジ1 本の価格で、1ケース以上買うことができる。“スマート・マネー・バイ” のワイン」であるからだという。とはいえ、1993 年のリリース時には20 ドル以下で買えたこのワインも、いまではオークションで120 豪州ドル以上の値がつくのだそうだ。日本における参考小売価格は1 万円( 税別) というが、むしろお買い得なのかも知れない。

 

RWT Barossa Valley Shiraz 2012

南オーストラリア各地の最良の葡萄を、時にはカベルネもブレンドしてつくられるグランジに対して、バロッサ・ヴァレーのシラーズに特化してつくられるシングル・リージョナル、シングル・ヴァラエタルのワイン。RTW はRed Winemaking Trial(実験的な赤ワイン)の略で、1997 年が初ヴィンテージ。2012 年はフレンチオークのホグスヘッドを使い、新樽75%、1 年樽25%の比率で16 か月熟成。98 年産は新樽100%でつくられているが、「すべてのキュヴェをテイスティングした結果、テイスターの支持を集めたのが新樽100%のキュヴェばかりだった」。グランジの年間生産量は7000〜9000 ケースとボルドー1 級シャトーワインより少ないが、このRWT の生産量はさらにそれより少ないという。

 

Grange BIN 95 2010

南オーストラリア各地のシラーズをベースに、ごく少量(通常は最大8%まで)のカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドし、100%アメリカンオークの新しいホグスヘッドを使って18〜20か月かけて熟成されるグランジは、1951年、マックス・シューバートによって初めてつくられて以来毎年つくられてきた。

とはいえ、ボルドーグランヴァンに匹敵する長期熟成可能なワインを生み出すべく手間とコストのかかるこのワインは当時のペンフォールズ社の認めるところとならず、1960年にファーストヴィンテージが評論家によって高い評価をうけて正式に醸造が再開されるまでは、シューバート氏が秘密裏に造り続けたのだという。1989年まではGrange Hermitageの名前でつくられ、また現在のようにBin 95の名前が付されるようになったのは1994年ヴィンテージからだ。現行ヴィンテージの2010 年産は、カベルネ・ソーヴィニヨンが4%ブレンドされ、ホグスヘッドの新樽100%で17 か月熟成されている。

非常に張り詰めた凝縮感と緻密なテクスチャー。バランスがよく、砂糖漬けされた果物やダークチョコレート、ハーヴやスパイスなど豊かな香りが汪溢している。2008 年産はロバト・パーカーやワイン・スペクテイターが100 点をつけたが、「個人的には2008 年よりも2010 年の方が出来がよく、50 年以上は素晴らしく熟成すると確信している」と、ピーターは断言する。

ちなみに、続く2011 年産はシラーズ100%でつくられるようで、シラーズ100%というグランジは1951、52、63、99、2000 年につづいてわずか6ヴィンテージしかないのだという。 (M. Yoshino)

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