カリフォルニア銘醸ピノ・ノワール「ヴィジョン・セラーズ」オーナ マック・マクドナルド氏来日

カリフォルニアでピノ・ノワールに特化した造り手として知られる、マック・マクドナルド氏が、輸入元のTYクリエイションの招聘で来日し、そのユニークな経歴と、ワインへの思いを語った。

6種類ほどのピノ・ノワールを造っており、クリントン政権時代から何度かホワイトハウスで使われたこともある銘柄だ。かつてはガス電力会社に務めていたマクドナルド氏がワイン造りを始めたのは、ブルゴーニュの偉大なピノ・ノワール好きが高じて、という理由だけではなかった。

12歳でワインに目覚めて以来、PG&Gで働いていた最中もずっと、いつかワインメーカーになりたいという夢は捨てられずにいた。そしてついに、57歳となり退職した。

「実は、高校時代のフットボールのコーチに相談したらことがある。するとカリフォルニアへ行け、と言われたが、カリフォルニアのワイン業界は、白人男性の社会で、とても黒人などマイノリティにワイン造りを教えてくれるわけがなかった」という。断られるのを覚悟して出向いたところ、「ケイマス」のワグナー一家に出会った。そしてその後、15年間にわたり、栽培から醸造まで、会社の休日に通い続けた。すると、オーナーのチャック・ワグナー氏が、「そろそろ自分でワインを造ってはどうか」と、背中を押してくれたのだ。

ラベルのデザインも自ら行った

ラベルのデザインも自ら行った

1997年が初ヴィンテージで、当時から単一畑のピノ・ノワール(マリン・カウンティのもの)をリリースしていた。メディアをはじめ高評価を得て、キュヴェが増えていった。今回試飲したモントレー・カウンティーのサンタ・ルチア・ハイランズの、ゲリーズとロゼラズは2000年より、ラス・アルトゥーラスは2005年より造り始めた。

住まいはロシアンリヴァー・ヴァレーの中央にあり、小さな自社畑もあるが、基本的にぶどうは栽培家から購入し、醸造は「ケイマス」の設備を間借りしている。

「ロゼラズ・ヴィンヤード」は、ゲリー・フランジオーニ氏が、「ゲリーズ・ヴィンヤード」は、フランジオーニ氏とピゾーニのオーナーのゲリー・ピゾーニ氏、幼馴染のふたりが拓いた畑で、いずれも引く手あまたの人気だが、本人から「うちのぶどうを使わないか」と直接電話でオファーがあったのがきっかけだったという。また「ラス・アルトゥーラス」の畑は、ロゼラズやゲリーのすぐ近くにある畑で、ワグナー家が所有。ここのぶどうを使えるのも彼だけの特権だ。

「7マイルしか離れていないのに、まったくフレーバーが異なる」と、マクドナルド氏。それは、立地条件だけでなく、ピノ・ノワールのクローンによっても違いが出るという。

各クローンのアロマの特徴を記してくれた。

ポマール/干し茸、チェリーパイ

2A/チェリー、ラズベリー、バラの花びら

113/プラム、チェリー、ラズベリー、杉

114/ザクロ、ブルーベリー、コーラ、スパイス

115/バラの花びら、レッドチェリー、ブラックベリー

777/ブラックチェリー、ブラックベリー、リコリス、タバコ

また、醸造で酵母を使用する場合も香りによって使い分けており、更には樽使いにも関わってくるという。マクドナルド氏のワイン造りにおいて、香りが鍵となっているようだ。

自社畑の名はミス・リルズ・ヴィンヤード。その名の由来のリル夫人も共に来日した

自社畑の名はミス・リルズ・ヴィンヤード。その名の由来のリル夫人も共に来日した

「サンタ・ルチア・ハイランド2012」3つの畑のブレンド。「早く飲めるようにブレンドしている。瓶詰め前に、香りによってブレンドを決める。まずはこのキュヴェを決め、残りを単一畑とする」。色は濃く縁は紫。香りは閉じ気味で、次第に香ばしさ、熟した黒い果実の香りがエキスのように現れる。ボリューム感がありふくよかだが、酸もきれい。

「ゲリーズ・ヴィンヤード2010」少しオレンジがかった、明るめのルビー色。やさしい香り。赤い果実が主体でスパイスも香る。果実味が充実し、なめらか。完熟した果実を思わせる。タンニンは包まれている。

「ロゼラズ・ヴィンヤード2010」オレンジがかっているが、色はより濃い。スパイシーで、ハリのある果実の香り。なめらかさで、酸もしっかりしている。

「ラス・アルトゥーラス2011」まだ香りは閉じている。果実味がよりまろやかで、フレッシュな酸もあり。生き生きとしている。触感が心地よい。

豊かな香りと果実味のワインだけでなく、ラベルも印象的だ。「私はアフリカン・アメリカンで、アフリカンアートがとても好きなので、まだアフリカへ行ったことはないが、この絵は自分で描いた」と、説明した。現在マクドナルド氏は73歳だという。

(Y. Nagoshi)

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