和食と合わせる9種のボバル

左から①「フィンカ・コル・ビ マロコ・ボバル 2021」②「ベラ・デ・エステナス エル・ボバル・エステナス 2021」③「マルケス・デル・アトリオ アウディエンシア・ボバル2020」④「チョサス・カラスカル ラス・ドセス・ボバル 2020」⑤「グルーポ・コビニャス ベテルム・ビニャス・ビエハス・ボバル 2020」⑥「ボデガ・モンテサンコ スロウ・モン・ボバル 2020」⑦「ボデガス・ベガルファロ カブラシア・ボバル・アンフォラ 2020」⑧「ドミニオ・デ・ラ・ベガ パラヘ・トルネル 2018」⑨「フィンカ・サン・ブラス ラ・センダ・デル・カバーリョ・ボバル 2018」

 

和食とのペアリングはスペインワインにおいても重要な観点である。
今年3月のフーデックスでは、スペインワインの3つのセミナーが開催された。
そのうち2つを紹介する(本稿はその前編)。

 

「和食とボバル」

昨年に引き続き、DOウティエル・レケーナ統制委員会は、スペインの在来品種ボバルの試飲セミナーをフーデックス会場にて開催した。ボバルはテンプラニーリョ、ガルナッチャに次いで、スペインの黒ブドウ品種で3番目に栽培面積が広い。色が濃く、スミレやラズベリーの香りに、メントールのような清涼感とスパイス香が特徴。バレンシア州東部の内陸の産地DOウティエル・レケーナは栽培面積の70%がボバルという、この品種の中心地で古木も多い。

セミナー解説はボバル大使の菊池貴行ソムリエだ。当日はスペイン人ソムリエのマヌエラ・ロメラロ氏が考案したペアリングの解説ビデオを聞きながら、9種を試飲した。

 

ペアリングを解説したボバル大使の菊池貴行ソムリエ。

ボバル特有のスパイス香や清涼感で合わせる例:

①「フィンカ・コル・ビ マロコ・ボバル 2021」はフレッシュでジューシーなタイプ。赤系ベリーに加え、シダなどハーブ系の香りがある。提案された料理はニンニク醤油で下味をつけた「鶏の唐揚げ、柚子胡椒風味」。

④「チョサス・カラスカル ラス・ドセス・ボバル 2020」には「キノコと野菜の天ぷら」。果実味の凝縮感に、清涼感、甘味も感じられる。「ボバルは酸が高すぎず、ミネラル感とテクスチャーがしっかりしている。それがサクサクとした天ぷらに合う」と菊池氏。

⑦「ボデガス・ベガルファロ カブラシア・ボバル・アンフォラ 2020」はドライフラワーや森の下草など複雑な香りに、豊かなタンニン。ボディを合わせるため脂身のあるものと合わせるのがおすすめ。提案の料理は「にぎり寿司(和牛とカツオの腹身の炙り)」。

 

燻製香、タンニンの渋味から合わせる例:

③ソフトな口当たりが特徴の「マルケス・デル・アトリオ アウディエンシア・ボバル2020」には「和牛の肉団子の串焼き、焼き鳥のたれと卵黄ソース」。柔らかな肉団子のふくよかなボディと、ロースト香が同調。ワインは3か月の木樽熟成。

⑥燻製やスイートスパイスの香りの「ボデガ・モンテサンコ スロウ・モン・ボバル 2020」には「鰻丼」。蒲焼の香ばしさと合わせやすい。

⑤古木のボバルで複雑なスパイス香とタンニンが豊富な「グルーポ・コビニャス ベテルム・ビニャス・ビエハス・ボバル 2020」には「和牛の餃子」。タンニンの渋味と肉の甘味がマッチ。ワインはフレンチとアメリカンオークの古樽で3~6か月熟成。

②アンフォラ熟成の「ベラ・デ・エステナス エル・ボバル・エステナス 2021」には「カツオのたたき、シメジの南蛮漬け風マリネ、ポン酢添え」。カツオやマグロなど赤身魚が持つ藁系の香りと、ワインの燻製香が調和する。「これらの赤身魚はスペイン南部で獲れ、現地でも赤と合わせるのが定番」と菊池氏。

 

熟成香の出てきたボバルには(2018年ビンテージ):

⑧「ドミニオ・デ・ラ・ベガ パラヘ・トルネル 2018」は熟成感が出始め、甘草やブルーベリー、トリュフなどの香り。果実味が豊富で酸味が穏やかなため、「和牛のすき焼き」ほか、醤油ベースの割り下と。

⑨「フィンカ・サン・ブラス ラ・センダ・デル・カバーリョ・ボバル 2018」も熟成を経て複雑な香りのあるまろやかなボバル。「熟成牛肉のつくね」の風味と旨味が調和する。

 

(N. Miyata)

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