<試飲対談/ボジョレの多様性、熟成可能性を探る>

9月号で掲載したクリュ・デュ・ボジョレの現地取材の際、いくつかの古いヴィンテージに出会った。ワインの移動距離がほとんどない現地だから状態がよかったのかもしれないが、綺麗な熟成を経て、しかも若さを感じるものが多かった。

ボジョレ・ヌーヴォーに象徴される生き生きとした果実風味は、確かにボジョレの魅力のひとつではあるが、クリュの場合には少し置いてから飲むほうがより真価が発揮されるものもあるのではないだろうか。そういう仮説のもと、ワインに精通する石田博氏、柳忠之氏のふたりに試飲対談を依頼した。

(試飲は3つのフライトに分けた。まずブラインドで試飲し、偏見のない印象をメモしてもらい、その後ラベルを見ながらそれぞれの印象を語ってもらった。取材協力:ザ・リゴレット 渋谷)

 

 

<フライト1:熟成15〜22年を経て>

柳 2番が一番熟成していますかね。

編集部 どのぐらい経っていると思いますか?

柳 う〜ん、20年ぐらいでしょうか? 他と比べてアルコールも強そうで、焼けた感じが出ているので、暑い年で熟成が早く進んだのかもしれませんが。

石田 どれも同じぐらいの年代だとすれば15年ぐらいは経っていそうですね。どれも輝きも残っていて、特に3、4、5番は生き生きしていて風格もある。1番はボジョレらしいワインが熟成した結果でしょうか。これは若い時の方が魅力的なチャーミングなタイプだったのかもしれませんね。

(ここでラベルを公開)

柳 5番は若々しいですね。これが10年以上経っているとは思わなかった。

石田 そうですね。5番はまだ開ききっていない感じですね。香りは出てきていますけれど若々しくて、色もビビッドで、ピュアで。スタイルが他と全然違いますね。味わいがふくよかで、タンニンも豊かなのにきめ細かくて。

柳 そう、きめ細かいですよね。

石田 でも現時点では3番が最もバランスよく、調和がとれている。

編集部 今美味しい状態にあるということですね。

石田 はい。テクスチャーが緻密でタンニンも密度が高くジューシーで。3番にきて気品が増した。2番は時間が経つと、ややカラメルやランシオの香りが出てきてしまいましたが、ボジョレ・シューペリウールですからクリュと比べるとかわいそうですね。

編集部 しかも1も2も、現地では10ユーロもしないみたいですよ。

石田 新着ヴィンテージの時から価格を上げていないのかもしれないですね。

柳 そのまま残っていた、と。でも面白いですね。

石田 私も一度ボジョレに行ったことがあり、現地で熟成したものを試飲させてくれた。確かにゆっくり熟成しますよね。でも、それはなぜか?という疑問が解けていない。

柳 1にしても2にしても、何か梗のような要素が残っているような印象です。

石田 ベジタルな複雑さは一様に感じられますよね。紅茶のような、どこかブルゴーニュで全房醗酵をしている造り手のもつ複雑性と似ているところがありますよね。シラーについても同様に全房醗酵のものに見られます。このネガティヴではない青いトーンは、総じて熟成しても残りますね。

柳 でもシャトー・デ・ジャックは100%除梗なんですよね。

編集部 はい。そうです。

石田 そうですか。でもベジタルな複雑さはありますね。

柳 そうするとシャトー・デ・ジャックの場合には、果皮からきているのかも。

編集部 マセレーションは長いですね。フライト1全体を通していかがでしたか?

柳 3番以降が2002年だとは思わなかったですね。もう少し若い2010年や2012年も混ざっているのかと。

石田 全体を通して、3、4、5は2000年の前半でポテンシャルが高く、1、2は反対にポテンシャルが低めで2000年代後半なのかと思ったのですが、1、2はボジョレ・シューペリウールで2000年以前ということは、やはりガメイは熟成するのだという結果なのですが、どのような要因で熟成可能なのかを知りたいですね。それほど酸も高くなくタンニンも豊かなわけでもなく……。

柳 そう、だからそれは梗からなのかな、と。でもシャトー・デ・ジャックの場合には果皮に由来するのかもしれない。

石田 今世界的には伸びている生産地域は、多くのデータも公表しているし、なぜ熟成するのか、ということも説明できる。オーストラリアも南アフリカもそうですし。ボジョレもそうしてほしいですね。

  • 1995 Beaujolais Supérieur “Cuvée Catherine Corteille de Vaurenard” / Château de Vaurenard

1672年からの歴史ある一族で、25haの畑をボジョレに所有。現在このアイテムは造っていないようで、これ以上の情報は見つからなかった。。

  • 1997 Beaujolais Supérieur “Cuvée Baron de Richemont” / Château de Vaurenard

1と同じ造り手で、Vinification en grappes entières,房ごと5週間マセレーションし、その後フードルで2年間熟成。

  • 2002 Moulin à Vent / Château des Jacques
  • 2002 Moulin à Vent “Clos des Thorins” / Château des Jacques
  • 2002 Moulin à Vent “La Roche” / Château des Jacques

3、4、5はシャトー・デ・ジャックのムーランナヴァンの畑違い。中でも5のラ・ロッシュは、風車のすぐ下の畑で標高は254m。「1級に値する」畑。いずれも2002年で、ドライで温かい夏は暑すぎることなくバランスの取れたブドウが収穫できた素晴らしいヴィンテージ。造りは、収穫後は選果と除梗の後に12℃にし、その後は自然に任せ自然酵母が活動し始めるのを待つ。マセレーションは合計3〜4週間。圧搾の後、10〜11ヶ月の樽熟成。使用する小樽は新樽から3年目。   (Y. Nagoshi)

つづき(フライト2:約10年熟成の2つの異なるヴィンテージの比較/フライト3:現在日本市場にあるヴィンテージの比較)はWANDS 2017年10月号をご覧下さい。ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

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