メゾン カステルがフランス中を探して見つけた傑出したテロワールの作品集「セリー・リミテ」

メゾン カステルと言えば、気軽に楽しめる均質なワインの生産者、というイメージが強かったが、新たなシリーズ「セリー・リミテ」を味見して印象が一変した。

限定シリーズ、という名前の通り生産量には限りがあるが、メゾン カステルの醸造を統括しているワインメーカーのセドリック・ジュナン氏渾身のクラフトワインだ。2016年に「第1章 ラングドック ペズナ」で始まり、翌年に「第2章 ジゴンダス」、そして「第3章 コンドリュー」が加わった。

 

フランス全土との繋がりがある同社がフランス中から卓越したテロワールを探し、現地のトップクラスの栽培家とタッグを組み、その土地でしか生まれ得ないワインを生み出そうというプロジェクトのようだ。鍵となるのは「エレガンス、フレッシュネス、フィネス」。このシリーズを世に出すことで、フランスのワイン造りの知見やテロワールを世界中のより多くの人々に伝えたい、というのが主旨だと言う。

 

まず着手したのが、「第1章 ラングドック ペズナ」。モンペリエから50kmほどにありラングドックの中でも地理的表示が可能なペズナは、シスト、石灰岩、玄武岩などで構成される土壌で、いずれ単独でAOCを獲得するのではないかとも言われているポテンシャルの高い産地だ。セドリック・ジュナン氏が熟知している地域の筆頭で、ここからトップの栽培家2名とチームを組むことにした。栽培について、とくに収穫時期については綿密な話し合いをして、収穫前には栽培家とともに頻繁に区画を歩き最適な収穫日を決定する。醸造、抽出、熟成についても、もちろんだ。そして、2者のワインをブレンドし「セリー・リミテ」となる。本当に、熟した豊かな果実が感じられながらも大変上品な仕上がりだった。

シラー65%、グルナッシュ18%、8%ムールヴェードル、9%カリニャン。20%MC(シラーの一部とカリニャン)と伝統的なマセレーション(シラー、グルナッシュ、ムールヴェードル)。15か月樽熟成(50%新樽、40%2年目の樽、10%タンク)。

 

「第2章 ジゴンダス 」は、ジゴンダスの中でも東端に当たる、デントゥル・ドゥ・モンミレイユという標高が高い地域の畑に注目した。山の頂は730mもあるという。一般的にはジゴンダスは、比較的野生的でガツンとした押しの強さがある印象だが、このキュヴェはとてもエレガントで美しいボディーで驚いた。ジゴンダスで同様の印象を受けたのは、それまでに1度しかなかった。立地だけでなく、栽培や醸造の丁寧さがワインに現れていると感じた。

グルナッシュ主体+シラー。伝統的なマセレーション(グルナッシュは27日、シラーは24日)。15か月樽熟成(30%新樽、30%2年目の樽、12%3年目の樽、28%タンク)。

 

「第3章 コンドリュー」は、このシリーズで初の白ワイン。この流れで行くと、この続きはブルゴーニュ、あるいはアルザスへ向かうのではないだろうかと想像してしまう。ラベルにはau dela de la Brumeと記してあり、霧の彼方へ、というような意味なので畑がやはり標高が高い位置にあり畑が霧の上にあるのだろうか。華やかで複雑な香りが大変魅力的で味わい深い。

ヴィオニエ。全房圧搾の後デブルバージュ。自然酵母で発酵。バトナージュを行い、マロラクティックの後、細かいオリとともに15か月熟成(15%新樽、25%2年目の樽、20%は600ℓの5年目以上の樽。40%タンク)。

 

栽培家2名とタッグを組みブレンドする、というのはジゴンダス、コンドリューでも同様のようだ。畑や栽培家についても、興味をそそられる。このシリーズの続きもとても楽しみだ。

ちなみに、「セリー・リミテ」は未輸入品ながら、神楽坂の「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」でワインと料理のマリアージュのイベントが行われ、少数の参加者はクリストフ・ポコ シェフのお料理との組み合わせに舌鼓を打った。

(Y. Nagoshi)

取材協力:カステル・ジャパン

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