古木プロジェクトがもたらす 南アフリカワインから起こる産業革命

3回目となるマスター・オブ・ワイン(MW)のキャシー・ヴァン・ズィル女史と大橋健一氏の合同セミナー。今回は世界的な農業コンサルタント、ロサ・クルーガー女史が加わり「オールド・ヴァイン・プロジェクト – 産業革命」と題したセミナーが行われた。ロサ女史は古木のブドウ樹研究の世界的第一人者で、世界最大級のワインコンペティションIWCにおいて昨年パーソナリティ・オブ・ザ・イヤーに輝いている。

右からロサ・クルーガー女史、大橋健一MW、キャシー・ヴァン・ズィルMW

 

オールド・ヴァイン・プロジェクト

「産業革命」と銘うたれたように、今、南アフリカで行われているブドウの古木に対する取りくみが、ロール・モデルとして世界のワイン産業に影響を与えていく可能性がある。

今では樹齢100年以上のブドウ畑が10か所を数え、古木の宝庫として知られる南アフリカ。しかしアパルトヘイトの時代に質より量が重視され、古木の価値は人々の頭からずっと忘れられていたという。

ロサ女史は元々ジャーナリストで、弁護士だった。ブドウ栽培を勉強すると決めた時、彼女は素早く多くを学びたいと考え、1年をかけて世界中の素晴らしいブドウ畑を見て回ること、そして様々な生産者から直接学ぶ方法を選んだ。旅中、魅力的なブドウを実らせていた多くのブドウの古木、それらのブドウから造られたワインの確かなテロワールを味わいに感銘を受け、「南アフリカにも素晴らしいブドウの古木があるはずだ」と帰国後すぐにSAWIS(南アフリカのワイン畑や生産者についての情報を管理する機関)へと向かった。しかし当時のSAWISからはブドウ畑や生産者に関する情報は機密で教えられないと言われた。その後、彼女は何年も自ら四駆を運転し南アフリカ中の古いブドウを探しては書き留め……(中略)。

 

認証マークとネックタグはOld Vine Projectホームページより

世界初、公的な古木の認証制度

2018年、南アフリカの公的な制度として、OVPのメンバーで樹齢35年以上のブドウからできたワインは、ボトルにそのブドウの植樹年を記したシールを貼ることができるようになった。ラベルに古木であることを表示するとき、樹齢が何年以上なのかを規定している国は他にひとつもない。そしてこのシールにより、消費者はそれらのワインがどこから来たのか、そしてワインの歴史もたどることができる。

(中略)

今後のOVPの活動に注目していきたい。

 

 

 

<試飲したワイン>

キャシー・ヴァン・ズィルMWと大橋健一MWがスピーカーとなって8種のOVPメンバーワインを試飲した。

1 Mullineux Leeu Passant Lötter Cinsault 2015
植樹:1932年
地域:Franschhoek
アルコール:13.5%
残糖:1.8 g/ℓ
総酸度:5.1 g/ℓ
pH:3.66

「100年前に行われていた栽培法を実践している。サンソーは、マリヌーのフラグシップ品種のひとつ。一切新樽を使わず、サンソーのキャラクターを忠実に表現しており、甘やかなストロベリー、深みのある風味。赤ワインでは4g/ℓくらいの糖を残す生産者が多い中、このワインは残糖1.8g/ℓとドライに仕上げている。そしてフレッシュで自然な高い酸味が実に素晴らしい」。

 

2) Kruger Family Wines Old Vines Cinsault 2017

植樹:1976年
地域:Piekenierskloof畑
アルコール:13.5 %
残糖:2.5 g/ℓ
総酸度: 5.2 g/ℓ
pH: 3.5

OIVはブドウ栽培やワイン醸造においての規定を設けていないが、ブドウを優しく扱うようアドバイスをしているそうだ。「暑いリージョンだが、標高の高いところのブドウで造られており、軽やかさがある。抽出はあまり強くなく繊細なワインだ」。

 

3) Piekenierskloof Grenache 2017

植樹:1973年
地域:Piekenierskloof
アルコール:13.1 %
残糖:2.4 g/ℓ
総酸度: 5.1 g/ℓ
pH: 3.52

「このワインは乾燥した土地にブッシュ仕立てで栽培されている。香りは少し閉じているが、口に含むと赤いベリーの風味が広がる。グルナッシュの持っている繊細なタンニン、甘やかに感じるフルーティーさ、そして高いレベルで残った酸味のバランスが取れている。爽やかでリフレッシングな飲み口」。

 

4) Reyneke Biodynamic Chenin Blanc 2017

植樹:1960年代と1970年代
地域:Stellenbosch
アルコール:12 %
残糖:1.3 g/ℓ
総酸度: 5.1 g/ℓ
pH: 3.35

「ビオデナミの生産者で、ブドウや畑にいる虫、全てに優しい栽培とワイン・メーキングを目指している。アルコールはやや低めの12%だが、水っぽさは一切ない。洋ナシ、桃、フローラルさがあるが、もし若木だったらもっと甘いフルーツ・プロファイルになるだろう」。

 

5) De Morgenzon The Divas Chenin Blanc 2017

植樹:1972年
地域:Stellenbosch
アルコール:14.29 %
残糖:2.9 g/ℓ
総酸度: 6.4 g/ℓ
pH: 3.42

「リッチでライプなカテゴリーに入るワイン。かすかにオーク樽のニュアンスがあるが、ステレンボッシュのシュナンらしい白桃のような甘やかな香りと少し草の香りがある。若干高めの残糖(2.9g/ℓ)とアルコール(14.29%)との調和を高い酸味がとっている。国際ワインコンペティションでの受賞も多数あり、南アフリカ内で最も値段の高いシュナンとなっている」。

 

6) Sadie Family Wines Skurfberg 2017

植樹:1940〜1955年
地域:Skurfberg Mountains、 Olifants River
アルコール:14 %
残糖:2.2 g/ℓ
総酸度: 6.1 g/ℓ
pH: 3.31

スカーフバーグのブドウ畑からは現在5つの生産者がブドウを購入してワインを造っているが、このサーディー・ファミリーが頭ひとつ抜けているそうだ。「この畑はブドウだけではなくルイボスやブル(薬草茶)も育てられている。赤土の土壌で無灌漑なのも特徴の一つだ。ステレンボッシュでは白桃を感じるシュナンの香りだが、スカーフバーグはアカシアや土っぽい香りを感じる。大西洋から吹き付ける非常に冷たい風の吹くところに畑があり、収穫されたブドウは冷蔵車で3時間かけてワイナリーに運ばれている。そしてサーディーはコンクリートの卵型タンクを使って醸造している」。

 

7) Cecilia Pinotage 2016

植樹:1965年
地域:Citrusdal Mountains
アルコール:14.5 %
残糖:3.1 g/ℓ
総酸度: 5.3 g/ℓ
pH: 3.63

「ここ3年雨らしい雨が降っていない乾燥した土地にブッシュ仕立てでブドウが栽培されている。ブラック・チェリー、ブルーベリー、少しハーブのニュアンスがあり、ボリュームのあるボディだ」。

 

8) Boekenhoutskloof Semillon 2016

植樹:1902年、1936年と1942年に植樹
地域:Franschhoek
アルコール:13.72 %
残糖:2.3 g/ℓ
総酸度: 5.0 g/ℓ
pH: 3.38

1936年と1942年の区画は自根である。「蜜蝋のようなニュアンスの出るセミヨンのクローン。セミヨンによくある草木の青い香りはない。セミヨン・グリ、セミヨン・ブランを混植し、一切新樽を使用せずワインを造っている」。 (Rie Matsuki)

http://oldvineproject.co.za/

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