シャンパーニュと酵母の自己分解の影響 Champagne & Yeast Autolysis

ご存知のようにシャンパーニュは、伝統的に瓶内二次醗酵によって造られている。二次発酵期間も含めて15か月以上セラーで保管しておかなければならず、そのうち12か月は澱とともに熟成することが義務づけられている。しかし、大半の造り手が規定よりも長い瓶内熟成を行なっている。そして昨年のドザージュの変化についての考察で、多くが以前より瓶内熟成期間を長くしているとわかった。

今回は、瓶内熟成期間にどのような変化が起こっているのか、それぞれの造り手がどのような意図で瓶内熟成期間を決めているのかを取材した。

 

<酵母の自己分解(酵母の自己消化 yeast autolysis)>

酵母が役割を終えて死滅し、澱(lees)となると、自らの酵素の作用で細胞を壊していく。これが酵母の自己分解と呼ばれている作用だ。

酵母の細胞はプロテインなどでできていて、複数の化合物を解き放っていく。澱は酸化防止の役割を果たすことも知られているが、それだけではなく香りや味わい、口当たりにも影響を及ぼしている。例えば細胞壁を作るマノプロテインとグルカンは、テクスチャーやストラクチャーに影響する。細胞内のアミノ酸とペプチドはアロマのプレカーサー(前駆体)になる、などということもわかっている。

今回取材して気がついたのは、シャンパーニュでは伝統的に長期瓶内熟成が行われてきたため、多くの造り手が経験値で瓶内熟成期間中にどのような変化が起こるのかを体得している、ということだ。だから、それほど科学的な解明を進めようと考えていないようだ。

また、この酵母の自己分解の影響は、瓶内熟成期間だけではなく、一次醗酵後、リザーヴワイン保存中にも受ける可能性がある。そして、それぞれの段階で及ぼす影響には違いがあるともわかった。

酵母の影響を色濃く出したいのか、あるいは果実の個性をより前面に出したいのか、あるいはどちらも微妙にコントロールして独自の方向性へと進むのか。それぞれの造り手により、方針や求める姿が異なる。訪問した10軒の様子をレポートする。(Y. Nagoshi)

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訪問先:Louis Roederer, Duval-Leroy, Bollinger, Lanson, Henri Goutorbe, Jacquesson, Collard-Picard, Billecart Salmon, Centre Vinicole Champagne Nicolas Feuillatte, Krug

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