2016秋冬ワイン需要を探る

ワインの消費が停滞している。

ワイン販売各社の2016 年上半期(1 月~6 月)販売実績を総合すると、前年同期比98~99%で、前年水準を割り込んでしまった。特に、国産低価格ワインは前年比4~5%減と落ち込みが大きい。輸入ワインはチリワインが依然として増えているので前年比2~3%増といったところ。

 

前年割れの原因は、5 月のブレグジットで株価が下がり、消費マインドがすっかり冷めてしまったことにある。そしてこの後の7 月、8 月の売行きがさらに悪化している。

業務用需要は相変わらずパッとせず、料飲店向けの高額品がなかなか動かない。それだけでなく、ここにきて居酒屋チェーン向けの低額品もよくない。

 

売行きが良いのは量販店頭に並ぶ動物ラベルのチリワインだけ。極端にいうと、スーパーの品揃えはアルパカ、プードゥ、サンタ(ピューマ)があればそれで充分という状況だ。国産品やカリフォルニア産低価格品がそのあおりを受けて売行きが鈍っている。

 

一方、販売量は幾らか減少したものの昨年の価格改定(値上げ)によって販売金額は増えており、利益は改善してきている。インポーターに上半期の商況を聞くと、量では伸び悩んでいるが販売金額は悪くないという声が多かった。

 

長らく右肩上がりの成長を続けてきたワイン市場だけれど、アルコール飲料全体の消費量は年々減少し、アルコール分の少ない飲料へ消費が移行しているから、ワインがいつまでも増え続けることは適わない。主要国からのスティルワイン輸入量とスパークリングワイン輸入量の年次推移を見ると、スティルワイン輸入量は2012 年以降の4 年間、2,200万ケース台に留まったままである。なかでもフランスワインは、2012 年の681 万ケースをピークに毎年減少し、2015 年は607 万ケース、今年はこのままだと600 万ケースを割り込むことになるだろう。もちろんこの間に、チリワインなどのバルク輸入・国内瓶詰品があったから、その分を上乗せすれば輸入ワインの市場規模はいくらか膨らんでいると言えるのだが。

 

このところのワイン消費の停滞現象を、ワイン市場の奥行はできたけれど間口が広がっていないとする見方がある。ワインの新しい飲み手を開拓しきれていないというわけだ。この間、ワインの値段を下げ、容器・容量の多様化を進め、コルクを止めてスクリューキャップにした。これでずいぶんワインに近づきやすくなったと思うのだが、それでもまだ間口が狭い、敷居が高い、中へ入るには抵抗があるという。いったい何が足りないのだろうか。

 

今年上半期の酒類市場を見ると、消費の伸びている酒は、クラフトビール、ハイボール、RTD などアルコール分の比較的少ない飲みものだ。ワインのライト・ユーザーがこういうカテゴリーに移ったということなのだろうか。こうした消費傾向を見ると、今後、ワイン市場を拡げる上で重要になってくるのは、「低アルコール」と「飲み方の提案」なのかもしれない。(K.B.)

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