ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密「マイ ウイスキー、マイ ストーリー」 第2回 

〜世代を超えて「オールドパーを選ぶ理由(わけ)」〜

 

ある特定のものを、無性に食べたくなったり飲みたくなったりすることがある。例えば坂角総本舗のゆかりをサクッとかじりたくなることがあるかと思えば、和泉屋のリング型のクッキーを頬張りたくなることもある。

そういう時は、以前味わった時の香りや味や食感が思い出されている。加えて、いつ頃誰とどんな風にして楽しんだのか、頭の中で映像が回ることもある。不思議なことに美味しい思い出は、たとえほろ苦い経験であっても懐かしくよきものとして残っていることが多い。

 

<上質を知る人の選択>

オールドパー独特の穀物の甘みについて教えてくれた全日空の機内アドバイザー19年目の井上勝仁さんは、「オールドパー 12年」を飲んで「懐かしい味」だと呟いた。ワインが専門の井上さんだが、会う時は必ず「オールドパー 12年」だった、という人がいた。

20数年前に知人から紹介された年配の男性だった。博識で洞察力が鋭く、物事を根本から考える人なので、話が面白かった。時おりご自宅に呼ばれては、その人物が気に入っていた「オールドパー 12年」を相伴していた。

大和民族の話からワインの起源、果ては物体を構成する電子についてなど、話の幅も広かった。「何かを極めると、全体像が見えてくる」と教えてくれたのもその人だった。

yakko飲み方は決まって水割りで、おつまみは冷や奴。それも必ず木綿豆腐。絹ごしはなめらかな反面、水分比率が高いので「大豆本来の味」は薄くなる。それよりも「素材の味わいがしっかりと残るもの」を、料理でもお酒でも好んでいた。

残念ながらその方はすでに天に召されたが、ご子息ともつき合いが続いていて、やはり会うと「オールドパー 12年」の水割りだ。

とても優しく威厳のある父が飲んでいる姿を見ていた。一人で飲むことはなく、誰かと楽しむために飲むのがオールドパーで「お酒に飲まれることは全くなく、飲めば飲むほど仕事にも精力的に打ち込む」父の存在感は、いかに大きなものだっただろうか。いつか父と同席するようになり、「非常にこだわりのある味わいだと感じた」とともに、父の選択眼に納得した。

他の酒類も飲むが、ウイスキーはオールドパーだ。「味わいがまろやかで、水割りにしても本来の香りや味わいがしっかり楽しめる」。上質なもの、本質的なものを求める方向性も、父親譲りだ。

 

<派手さではなく品格の酒>

nakayama 他にも「父から教えてもらった」ことがきっかけで、「オールドパー 12年」を愛飲し続けている人がいる。中山弥成さんは一部上場会社を務め上げ、現在セカンドキャリアで多くの人をサポートしている。

学生時代に「品位があるウイスキーで、しかもボトルが持ちやすい」と薦められた。飲んでみると、そのマイルドな味わいとスムーズな食感に魅了された。興味があり調べてみると、152歳まで生きたトーマス・パー翁の逸話があったり、ラベルの肖像画を描いたのはルーベンスであったりと、ストーリーがあるのも面白かった。「プライドをもって友人にも薦められる」よきスコッチを教えてくれた父に感謝の念を抱いた。

父は医者だったこともあり「酒には決して飲まれてはいけない」とも言っていた。「しかし、飲めなければいけない。いい酒は知っておくべきだ」という言葉も鮮明に覚えている。

若い時分はちょっと背伸びして、友人とそれぞれ別のバーで好みの1本をボトルキープして、2、3軒ハシゴするのが楽しかった。中山さんがキープした1本は決まってオールドパーだ。ピアノバーで音楽を聴きながら、水割りかロックで飲むのが何より心地よかったのを覚えている。

「オールドパーは高価だから、憧れの存在でもあった。でも、いいものを使わないで飾っておくようなことは好まない。ともに飲み、時間を過ごす。人と人を結びつけるものだったのでしょう」と、いかにも懐かしそうだ。

「バーボンが気軽でカジュアルに楽しめるジーンズ的な存在だとすれば、スコッチは自分を見つめ直す大人の時間の相方で、上質な衣服のよう」。

中でも「オールドパー 12年」は、「最も安心してくつろげるうえに、飽きない。派手さはなくてあまり主張しないけれど、なくては困る。本妻のような存在でしょうか」。

だから中山さんは、今も自宅に1本キープしているという。

butterお薦めのおつまみは、レーズンバター、オイルサーディン、チョコレート。ただ自宅で飲む時は、奥様の家庭料理と合わせることが多い。カレイの唐揚げ。チーズとシソをはさんだトンカツ。カジキマグロ。「オイリーなものにとてもよく合う」。そうかと思えば、寿司や鰹のタタキなどの和食にも、もってこいだという。マイルドで包容力があるからだろう、食べ物を選ばない性格なのかもしれない。

chocolateただし、水割りにしてもロックにしても「見えないところにコストをかける」のが重要だと感じている。外で飲んだ時、水や氷で味わいを台無しにしてしまった一杯を出されたことがあるからだ。本来の味わいを十分に楽しむためには、大きな溶けにくい氷や、最低限浄水器を通った水が必要となる。

やはりオールドパー飲みには、こだわりが多いようだ。

 

ある友人がこう言っていた。「うちの父もオールドパーをよく飲んでいて、とてもよいコミュニケーションツールのような存在だったみたい」。

自分が主役を張るのではなく、人を繋ぎ、世代を繋ぐ。多くの場面で美味しい思い出を生み出す、名演出家のように見えてきた。(Y. Nagoshi)

撮影協力:表参道「アンクルハット」

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ワインジャーナリストが探るオールドパーの秘密 第4回 〜食後酒から食中酒へ/後編〜

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