Shaw + Smith 二人のMWが語る豪州ワインの進化の軌跡

南オーストラリア州アデレイド・ヒルズの「ショウアンドスミス」、タスマニア州南部コール・リバー・ヴァレーの「トルパドル」。この二つのワイナリーのオーナーであるマイケル・ヒルスミスMWと、2010年からグローバル・セールス&マーケティングマネージャーを務めているディヴィッド・ルミアMWの両氏がこのほど来日した。両MWが揃って日本を訪れるのは初めてのこと。

「進化し続けるオーストラリアワイン ― ピノ・ノワールとシャルドネ」と題して、輸入元のファームストンがセミナー試飲会を開催した。

 

冒頭、「過去10年、オーストラリアのワインづくりは温暖地域から冷涼地域へと広がりをみせ、それに伴ってワインのスタイルも大きく変化しつつある。その変化が特に著しいのがシャルドネとピノ・ノワールだ」とマイケルが切り出した。

それを受けて、ディヴィッドが次のように説明した。「オーストラリアのシャルドネは1971年に初めて商業的に造られるようになったが、最初の頃はリッチで過熟、オーキーでMLFも100%おこなっていた。しかし、今では上品でエレガント、フレッシュではつらつとした酸をたたえたスタイルに変わってきた。過去10年で我々が学んできたことは冷涼地における栽培法とクローン選択、そしてワインづくりにおける哲学の進化だ。広大なオーストラリアでは65のAVAがあるように気候条件も土壌タイプも多様だが、より標高が高く、南緯が下がったところでワインづくりが行われるようになってきた」。

「栽培面では低収量、オーガニック(あるいはバイオダイナミック)の実践、樹齢の重要性についても研究が進み、ショウアンドスミスのように100%手摘みで収穫するところが増えている。醸造面では、低温醸しや全房圧搾、酵母の選択、新樽使用やMLF、バトナージュの比率など多様な選択肢があるが、大切なのはブルゴーニュの物まねでなく、自分の畑の条件に合ったより正確なワインづくりを心がけるようになっていることだ」。

 

この日、ソムリエ森覚氏をコメンテイターに迎えて行われたシャルドネの比較試飲に供されたのは、次の6種。

William Fevre Chablis 1er Cru Montmains 2014

Thomas Morey Chassagne Montrachet 1er Cru Clos St Jean 2013

Shaw + Smith M3 Chardonnay 2015

Shaw + Smith Lenswood Vineyard Chardonnay 2015

Shaw + Smith Tolpuddle Vineyard Chardonnay 2015

Cullen Kevin John Chardonnay 2015

M3シャルドネはレンズウッドの自社畑ぶどうを中心に、アデレイド・ヒルズ各地のぶどうをブレンド。除梗破砕をせずに野生酵母で発酵。バトナージュは発酵の後半期に2~3回程度に抑え、新樽比率も3割以下に抑えている。

レンズウッド畑シャルドネは、南東向き斜面にあるブロック4だけのぶどうを使って、全房、野生酵母で発酵。樽熟成は10か月。

トルパドル・シャルドネは砂岩と粘土質の上に石英が覆っている北東向き斜面の畑に1889年に植樹されたぶどうを使用。豊かな酸とアロマ、凝縮感をもった味わいが特徴。MLFはほぼ100%。

「この3つのワインに共通するのはフィニッシュに残るシトラスの香りと旨み。これまでのオーストラリア産シャルドネとは一線を画す旨みがあり、力強さをもった果実の風味が素晴らしい」と森氏はコメントする。

 

一方、ピノ・ノワール。「オーストラリア産ピノは、かつてはヘビーで力強くアルコール度も高く、シラーのような濃い色調だった。しかし、今はエレガントでバランスとれ、香り豊かなピノが造られている。これは冷涼産地で施肥を行わずに低収量で栽培し、手摘み。全房あるいは除梗だけを行って破砕せずに発酵し、新樽比率を下げて濾過をせずにボトリングするようになったため」だという。

比較試飲に供されたのは、次の5種類

Domaine Jean-Marc Bouley Volnay VV 2014

Domaine Géantet-Pansiot Gevrey Chambertin VV 2014

Shaw + Smith Pinot Noir 2015

Shaw + Smith Tolpuddle Vineyard Pinot Noir 2015

De Bortoli PHI Pinot Noir 2014

ショウアンドスミスのピノ・ノワールは標高500mにあるレンズウッドの自社畑のぶどうを手摘みし、全房あるいは除梗だけを行って発酵。発酵前および後にもゆっくりとした醸しを行い、10か月フランス産オークで熟成したもの。森ソムリエは「プリティという表現がピッタリするような味わい。このワイン1本で和の懐石全てをカバーできるだろう」とコメントした。

また、ほとんど同じような醸造法を用い樹齢26年のぶどうから作られるトルパドルのピノについては、「後半に甘味とスパイス、そしてプーアール茶の香りがある。和食でいえば、醤油味より味噌を使った料理に合うだろう」と評価した。 (M. Yoshino)

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