日本ワイン特集・甲州種を考える/耕作放棄地に甲州を植える98WINEs の新しい提案

ブルゴーニュでブドウ栽培と醸造を学び、メルシャンや勝沼醸造で長くワイン造りに携わった平山繁之が、今年、独立して98WINEs 合同会社を創業した。甲州市玉宮地区にワイナリーとワインアカデミーを建て、耕作放棄地に甲州ブドウを植える計画だという。玉宮地区福生里(ふくおり)の醸造所予定地で平山に聞いた。

 

平山繁之は耕作放棄地にワイナリーを建てる

「日本ワインを取り巻く状況は大きく変化しています。歴史の長いワイナリーがある一方で、規制緩和によって毎年、多数のワイナリーが開設されています。しかし、ブドウの栽培や醸造、ワイン造りの基礎を学べる場所が不足しており、ワイン造りの本質から外れた経験不足のワイナリーが多数存在しています。

98WINEs は日本ワインの人材育成に関わります。栽培と醸造を実地に学び、独立したい人を支援します。そして、新しい日本のワインシーンを提案してワイン消費の裾野を広げていくとともに、延いてはアジア各国のワインと連携することでアジアの農、人、楽に繋がる場所を構築しようと思います」。

 

中央自動車道を勝沼インターで降りると、ブドウ畑の景観が広がる。欧米の産地は垣根栽培のブドウ畑だが甲州市は棚栽培だ。もう一つの違いは、ここでは居住地と畑が一体化し、日常の生活空間にブドウ畑が入り込んでいる。

 

「こんな場所は世界中探しても甲州市だけです。これを大事にしたいのです」と、平山は言う。ワインを通して土地を感じ、自然の恵みに感謝して季節の作物で食卓を囲むことのできる地域。それが平山の言う「農、人、楽の場所づくり」である。

 

ところが甲州市では農業従事者の高齢化が進み、耕作放棄地が確実に増えているのが実際だ。玉宮地区もその例にもれない。玉宮地区の果樹農家は2005 年138 軒から2015 年97 軒に減っている。この97 軒のうち甲州を栽培しているのは4 軒だけ。30~40 年前はみんなが甲州を植えていた。それがあっという間に巨峰に変わり、いまはシャイン・マスカットだ。シャイン・マスカットの収入は甲州の4 倍だから。

 

いまならまだ甲州を作った経験のある年配者が多くいる。彼らに聞くと、

「玉宮の甲州は粒が小さくて、勝沼より下にみられていた。醸造用には向いていたけれど、当時はみな生食用だったから(粒の小さいものは劣等とみなされた)」。

玉宮地区福生里は標高700m、勝沼より平均気温が4℃ほど低い。それで小粒のブドウになったと平山は考えている。

 

玉宮地区福生里から甲府盆地の底部は見えない

玉宮地区は、大菩薩嶺への谷筋の南向き斜面に広がる地域で、下竹森(標高400m)、竹森、福生里、平沢の順に標高が高くなる。ちなみに甲府盆地の底部の標高は300m だ。この地域の土壌は黒ボク土(火山灰土と腐植で構成される)と粘土で、ブドウ栽培の最適地である。近い将来、すべての耕作放棄地に甲州が復活することだろう。

 

どんな苗を植えるのか。「いま、山梨県が甲州の系統選抜に取り組んでいます。たくさんの畑を見て仔細にチェックし、粒の小さいもの、色のよく乗ったものを探す必要があると思います。できれば日本中の甲州をすべて洗い出して、優良なもの小粒のもの特徴のあるものを探すべきでしょう」。

 

平山は甲州の仕立て方に棚作り・一文字短梢を採用するという。収穫量は反収2トンでよい。ブドウ栽培で生計を立てるには収穫量の確保が大事だから。

「ある畑は、毎年、安定して糖度20 度の甲州を収穫しています。反収は1.8トンです。この人は樹勢管理が非常にうまい。樹の状態を毎年チェックし、結果のよくないものは4~5年で植え替えるのです」。

 

単位当たりの収穫量も大事だけれど、どういう甲州ワインを造るのかをきちんと定めることも必要だと平山は言う。

「わたしは、ワイナリーで手をかけず、ブドウのありのままを活かすことが大事だと思っています。いまは、甲州のアルコール分を12%にすることが目的化しているように思います。補糖もしないし、濃縮もしない。極端な話、アルコール分9%の甲州でもよいのではないでしょうか」。

 

98WINEs の目標は甲州種40トン。20トンを自前で作り、残りの20トンを購入する。はじめは購入ブドウの勝沼甲州でスタートし、徐々に玉宮に甲州を植えて、最終的に玉宮で揃えるという。(K.Bansho)

つづきはウォンズ 2017年10月号をご覧ください。WANDSのご購入・ご購読はこちらから  デジタル版もできました!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る