- 2018-12-12
- Wines, フランス France, ブルゴーニュ Bourgogne, 日本 Japan
2014年以来、4年ぶりに来日したアルべリック・ビショーにインタビューした。
ことしはメルシャンがアルベール・ビショーのワインを輸入して40年の節目の年に当たる。40年前(1978年)、私の父・アルベールが三楽オーシャンの鈴木さん(三千代会長、鎮郎社長)と、このビジネスをスタートした。その後、メルシャンはキリングループの傘下となったが、相変わらずきちんとした付き合いが続いている。メルシャンは自社ワイナリーを持って古くからワイン造りをしていたからワインをよく識っていたので、メルシャンから教わることが多かった。私は1996年に父から社長職を譲り受けた。
当時のブルゴーニュのネゴシアンは、生産者からバルクワインを買い付けて自社のラベルを貼って販売するビジネスが主流だった。しかし、私は自前の畑でブドウを栽培し、醸造・熟成も自前でおこなうドメーヌワイン・ビジネスに力を注ぐことに決めた。
さいわいなことに、ビショー家はドメーヌ・デュ・クロ・フランタン(コート・ド・ニュイ)とドメーヌ・ロン・デパキ(シャブリ)、ドメーヌ・デュ・パヴィヨン(コート・ド・ボーヌ)を所有していた。私の代になってからは、2003年にシャトー・グリ(コート・ド・ニュイ)、2005年にドメーヌ・アデリー(コート・シャロネーズ)、そして2014年にドメーヌ・ド・ロシュグレ(ボージョレ)を購入した。いまマコネのドメーヌの購入を検討しており、これが実現すれば北から南までブルゴーニュの銘醸地のすべてにブドウ畑(ドメーヌ)を所有することになる。
それぞれの産地に個別に醸造設備をおき、専任の責任者とスタッフを配置する。そして栽培、醸造に関するすべての統括をアラン・セルヴォーが担当し、ドメーヌ・ロン・デパキの醸造責任者だったマチュー・マンジュノがアランを補佐する。マチューの代わりにシャブリのロン・デパキを担当するのは若いセシリア・トリマイユで、彼女はシャトー・マルゴーでキャリアを積み、いまシャブリに挑戦している。すべての産地にドメーヌを所有し独立したワイナリー・チームがワイン造りをするのは、ブルゴーニュではとても珍しいことだと思う。
アルベール・ビショーは全部で300haのブドウ畑を使ってワインを生産している。このうち108haが自社所有畑で残りは契約栽培畑だ。ブドウ栽培を統括するエステート・マネージャーのクリストフ・ショヴェルは言う。
「ドメーヌの畑と契約栽培畑の管理の仕方に大きな違いはない。契約栽培家をパートナーと呼んでおり、パートナーの畑でビショーの栽培スタッフが作業することはないが、栽培期間の節々に必ずパートナーを訪問してブドウの様子をみる。それは開花の後の病気の有無のチェック、ブドウの食味をして収穫のタイミングを決めることなどだ。パートナーからはすべてブドウを購入している」。
ワインの品質の80%はブドウ畑に起因するとビショー社は考えている。そしてブドウはナチュラルなバランスのとれた時にはじめてその力を十分に発揮する。だから減農薬、有機栽培というブドウ栽培の仕方を選択している。除草剤の使用はブドウ樹の自己防衛能力を低下させるので極力使わない。ブドウ畑を十分に耕すことで樹がしっかり根を張って養分やミネラルを吸収しやすくしている。こうした取り組みがワインに土地の個性、テロワールを表現することに繋がると考えている。ビショー社のコート・ドールのドメーヌは有機認証を得ており、シャブリ、ボージョレのドメーヌは有機認証へのアプローチを選択している。
地球温暖化に由来する気象の激甚化は、ブルゴーニュのブドウ栽培にもおおきく影を落としている。アルべリックは言う。
「15年前に比べてブルゴーニュの平均収穫日が11日も早まっている。遅霜や雹の被害はいっそう大きくなった。そして、2003年夏の猛暑がブルゴーニュの収穫日決定の転機になった。2003年以前のブルゴーニュは一般に糖度と酸度を調べて収穫日を決めていた。酸度を気にかけていたが、ポリフェノールの成熟という考え方は新しいものだった。以降はタンニンの成熟を確認して摘むようになっている。
地球温暖化現象はブルゴーニュのブドウ栽培にポジティヴな要素ももたらしている。それはたとえば日照量の増大だ。冷涼な気候が特徴のブルゴーニュに暖かい日が多くなり、ブドウ栽培条件はずっと改善されている。2018年ヴィンテージはその良い方の例になると思う」。
クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット・レゼルヴ
シャルドネ(オーセロワ)60%、ピノ・ノワール(コート・シャロネーズ)40%。リザーヴワインを25%使用、12か月のボトル熟成のあと澱を抜いてドザージュ(6~8g/l)。その後4か月のボトル熟成。フレッシュで香りに熟した果実や蜜のニュアンス。甘いトーン。やさしい口当たり、上質なスティルワインのような余韻を楽しむことができる。
ドメーヌ・ロン・デパキ シャブリ・グラン・クリュ ヴォーデジール2015
25%は樽発酵、8か月樽熟成、樽の3分の2は350ℓ容量。残りはステンレス。8か月後にブレンド。洋梨、熟した白い果実、フローラルな香り。活き活きした酸味、味わいにインテンスがあって香ばしさもある。2015年はブドウが良く熟してリッチなヴィンテージ。
ドメーヌ・デュ・パヴィヨン ムルソー・プルミエ・クリュ レ・シャルム2016
新樽25%、大きめの樽でワインと澱との接触期間を長くしている。やさしい柑橘の香り、フローラルで香りに強さはあるが樽由来の要素は抑えられている。ほんのりやさしい甘みを伴ったアタック、フレッシュで複雑味がある。まだシャープでタイトな味わい。丘の上部にある区画なのでタイトな味わいになるという。
ドメーヌ・ド・ロシュグレ ムーラン・ア・ヴァン ロシュグレ2015
ニューワールドの上質なピノ・ノワールを想起させる。チェリー、ストロベリーなど赤い新鮮な果実の香りがたっぷり。やさしいタンニンときれいな酸味のバランスがすばらしい。余韻にほのかな土のニュアンスがある。これがボージョレの特徴か。
ドメーヌ・デュ・クロ・フランタン ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ レ・マルコンソール2014
チェリー、プラムなどの果実の香りにキノコのヒント。香りに強さと複雑さが生まれている。やさしくフレッシュなアタック、ミドルパレットには膨らみと強さ、複雑味がある。エレガントなタンニン、上質の酸味のバランスがよくそれらが一体となって長い余韻に繋がっている。
※「アルベール・ビショー」はメルシャンが輸入・販売している。
WANDS 12月号は「オーストラリアワイン/南アフリカワイン」特集です。
ウォンズのご購読・ご購入はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!
最近のコメント