八ヶ岳を臨む小高い丘にあるレ・パ・デュ・シャ=猫の足跡畑は、今年も晴天だった。東京は雨でも、必ず雨は上がる。ドメーヌ・ミエ・イケノは、2007年に植樹を開始し今年で10周年を迎えた。毎年発売が始まるとすぐに売り切れてしまうようだが、今年は2015年をリリースした。
<バランスよい畑>
訪問するといつも、はじめに畑を見せてくれる。とても綺麗で丁寧に管理されていると感じられる畑だ。標高750mの高地で風通しがよく、八ヶ岳から富士山までパノラマ状に一望できる立地にある。
ここをほとんど一人で管理している池野美映は、珍しく自慢話をした。モンペリエからわざわざ訪ねてきたブドウ栽培の権威が「すべてのバランスがよく完璧だ」と褒めてくれたという。「樹勢が適切で、穂木と台木の接合部分がとてもよい状態にあり、枯死したものもなく全体が均一だ」とのコメントだった。
このような絶賛を得たのは、毎日の積み重ねの結果だろう。どのような手入れをしているのかについて少し話してくれた。
比較的恵まれていると思うが「日本は雨量が多いから」と、ここでは草生栽培を行っている。そして、タイミングを見計らって刈った草は、収穫後に漉き込んでいる。昔は桑畑だった場所で50年間放置されていた場所だったため、当初は施肥もしなかった。3年ほど施肥はゼロで、ちょうど小渕沢は馬の町として有名なため、その副産物による堆肥に石灰を加え、徒長し過ぎない程度に与えている。また、この場所は強風が吹くことがあり、ワイアーが枝などに触れて傷がつくと雑菌が入り込む危険性があるので注意が必要だ。
<生産量の増加>
3.6haの畑には、シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロが植えられている。当初は3分の1ずつにしていたが、シャルドネを増やして40%にした。収穫は毎年9月半ばから始まり10月半ばまでかかる。最初にピノ・ノワールを収穫し、続いて「月香」用のシャルドネだ。丘の上方にある区画のシャルドネは成熟が少し早く、そこを夜間収穫する。ここではムーンライト・ハーベストとラベルに記している……(つづく)。(Y. Nagoshi)
つづきと<2015年ヴィンテージ>は、ウォンズ2017年10月号をご覧ください。 WANDSのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!
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