山形県のブドウとワイン

山形県は東北地方を代表するワイン産地である。ブドウ収穫量は、山梨県、長野県に次ぐ第3位で、これは岡山県と同順である(2017年農林水産省調査)。上山市と南陽市がワイン特区に認定され、ワイナリー数も近年増加傾向にあり、今後の動向が注目される産地である。

 

〈山形の地形と気候〉

山形県は東北地方南西部に位置し、北西部は日本海に面しているが山がちの地勢である。県の面積は9,323㎢で全国第9位。東部を奥羽山脈が南北に走り、それと平行して中央部に出羽丘陵、西部に朝日山地、南部に飯豊(いいで)山地が連なっている。

山形県内だけを流れる最上川は全長229kmで、日本三大急流の一つに数えられる。米沢市と福島県の境にある吾妻山系に源を発し、山形県の中央部を北に流れて日本海に注ぐ。最上川は南から米沢盆地、山形盆地、新庄盆地を形成し、日本海に面した庄内平野を通る。

 

山形県の気候は沿岸部と内陸部に大きく2つに分けられる。

庄内平野を中心とする沿岸部は海洋性気候で多雨多湿、冬は北西の強い季節風が吹く。内陸部は盆地に特有にみられる気候で比較的温暖だ。夏の日中は暑くなり、夜になると一気に温度が下がる。気温の日較差が大きくなる事が特徴だ。このことは、ブドウの生育において新鮮な果実味と酸を保持するのに役立つ。

 

内陸部は、さらに最上地方、村山地方、置賜地方に分けられる。新庄市を中心とする最上地方は積雪が多く夏季には大雨が降ることも多い。山形市、上山市、天童市を含む村山地方の平野部は夏の気温が高く、一般的に降雨量、降雪量が少ない。米沢市、南陽市、高畠町を含む置賜地方は穏やかな気候だが、吾妻山系の山間部は豪雪地帯である。

 

ブドウ栽培の盛んな上山市や高畠町では、冬場は氷点下10℃まで気温が下がることは稀だという。例外的に氷点下10℃を下回ることもあるが、凍害のリスクは低いため、冬季に北海道のようなブドウ樹を雪中に埋めることはしない。

 

〈山形のブドウ品種〉

伝統的にデラウェア、マスカット・べーリーA、甲州の栽培が盛んである。地域別にみると、南部エリアの高畠町、赤湯、上山市はデラウェアを、山形市を挟んで天童市、大江町、朝日町ではマスカット・ベーリーAを、そして北西部の鶴岡市や庄内町は甲州を広く栽培してきた。

デラウェアが山形県に初めて植えられたのは明治時代である。それから約100年以上も栽培されており、現在はデラウェア栽培量日本一の産地である。また、マスカット・ベーリーAは川上善兵衛が新潟県で品種交配をしてからすぐに隣接する山形県に入ってきた。甲州は、江戸時代からすでに県内で栽培されており、誰が持ち込んだかについてはいくつかの説がある。

 

1970年代、生食用の種無しブドウブームが爆発的に広がり、ある時期、山形県で栽培されるほとんど全てのデラウェアが種無しブドウであった。種無しブドウの作り方は、ジベレリンというホルモン剤を開花前と開花後に注射して果粒の肥大を促進させ、その結果、種がなくなる。また収穫時期が早まるので、旧盆前(8月)に収穫できるようになり、旧盆の果物として出荷できる。しかし、一方で肥大促進によって大味になってしまうという事実もある。

 

現在は、種ありデラウェアを見直し、ワイン用に栽培しようという動きが出てきている。種ありデラウェアは、果皮が厚く味が濃厚である。生食用の種無しデラウェアはジベレリン処理で手間がかかり、農家の負担も大きくなる。また、生食用は値崩れ(取引価格の低下)をしやすいため、ワイン用の種ありデラウェアを作ることは農家にとってメリットが大きいと考えられるようになっている。

 

〈山形のブドウとワインの歴史〉

山形県では江戸時代からブドウの栽培が始まった。明治時代、高畠町に農業試験場が設けられ、サクランボ、西洋梨、ブドウの栽培がさらに普及した。1940年代から第二次世界大戦中にかけて、酒石酸を軍事利用するため政府はワイン造りを奨励した。その頃、南陽市赤湯周辺には60社ほどの醸造所があったが、終戦とともにその多くは姿を消した。

山形県最古のワイナリーである酒井ワイナリー(1892年創業)や、須藤ぶどう酒工場(1939年創業)、大浦ぶどう酒(1939年創業)、佐藤ぶどう酒(1940年創業)は当時から続くワイナリーである。

 

また上山市でも1920年にタケダワイナリーが創業した。創業者の息子・武田重信は、カベルネ・ソーヴィニョンやシャルドネなどの欧州ブドウを栽培し始め、いち早く本格的なワイン造りに取り組んだ。昭和に入って、西川町で月山トラヤワイナリー(1983年創業)、天童市の天童ワイン(1984年創業)など、各地で小規模のワイナリーが誕生した。

さらに1990年、高畠町で創業した高畠ワインは、現在、生産量で山形県のみならず東北で最大規模のワイナリーに成長した。2019年2月現在、山形県のワイナリー数は14軒ある(山形県観光情報センター調べ)。2017年に設立された南陽市のグレープ・リパブリックが、県内14番目のワイナリーとして登録されている。その後2017年、上山市にベルウッド・ヴィンヤードが、2018年には南陽市にイエローマジックワイナリーが誕生し、山形県のワイナリー数は年々増加する傾向にある。

その背景には、2016年6月に上山市が、同年11月に南陽市がワイン特区の認定を受けたことがある。ワイン特区は政府の進める構造改革特区制度の一環で、これに認定されることで、果実酒またはリキュールの製造免許を申請するときに、通常は最低製造数量基準が6kl

のところ、果実酒は2kl、リキュール1klに引き下げられるというメリットがある。そのため、小さな生産規模の製造・販売が可能になり、新規参入の壁が低くなっている。(Misato Inaoka)

 

山形のワイナリー紹介(タケダワイナリー/蔵王ウッディファーム/サントネージュ/高畠ワイン)など、つづきはWANDS 2019年3月号をご覧ください。
3月号は「日本ワイン、日本の酒類消費、ピエモンテワイン」特集です。
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