ボルドーのグランヴァンに比肩する、エレガントで余韻の長いワイン。イスラエルのドメーヌ・デュ・カステル

「自分は完璧主義者だが、何事につけ調和が無ければ完璧とはいえない。絵画も銅像も調和があってこそ、初めてアートと呼べる。ワイン造りも同じで、一つのことにこだわるのではなく、異なる品種や畑の区画、そして収穫のタイミングなど多くのディテールを調和させてこそ完璧なワインに近づくことができると考えている」。ドメーヌ・デュ・カステルのオーナー、エリ・ベンザケン氏は自らの哲学をこのように語りはじめた。

ドメーヌ・デュ・カステルのオーナー、エリ・ベンザケン

ドメーヌ・デュ・カステルのオーナー、エリ・ベンザケン

1970 年、家族とともにイタリアからイスラエルに渡ったエジプト系ユダヤ人のベンザケン家は、当初は養鶏、そして兵役から戻った後はイタリアンレストランを営んでいた。エルサレムの西、海から40Km 離れた標高700mの高地、ジューディアンの急斜面に初めてカベルネとメルロを植えたのは1988 年。夏も冷涼で乾燥しているこの地の土壌は、岩混じりの粘土石灰質、表土が浅く痩せているのが特徴だ。そして24 か月樽熟した92 年産ワインを95 年に初リリースした。このワインはセレナ・サトクリフMW に“離れ業” と評されるほど高く評価された。葡萄栽培もワイン造りも全くの独学で、当初は趣味の域を出なかったが、これを契機にエリは生業として本格的にワイン造りを目指すことになる。以来、ベタンヌ&ドゥソーヴ、ロバート・パーカーJrなど並み居るワイン評論家達が常に高い評価を与えるワインが造られ続けている。

イスラエルでは1990 年代に存在したワイナリーはたったの5つ。しかしその後の新規ワイナリーラッシュで、今では140 ほどのワイナリーが存在しているといわれる。そうした中にあって、ドメーヌ・デュ・カステルは草分け的存在であると同時に、トップドメーヌの一つでもある。現在は、ボーヌでワイン造りを学んだ末弟アリエルがCEO、長男イータンがCOO、姉のイラーナが輸出部長を務める家族経営ワイナリーだ。

この日の試飲の第1 部は、’ C’ シャルドネデュ カステル ブラン。現行ヴィンテージの2013 年は、濃い色調をもった黄金色、柑橘や熟した桃などの香りに樽香が溶け込みはじめ、ミネラリー。口の中でもオイリーな厚みが感じられ、フレッシュな酸が骨格を支えている。20%は早摘み、60%は熟した適期、残り20%はやや過熟な状態のときにと、手摘みで3 回に分けて収穫し、それぞれ、酵母や樽を変えて発酵熟成させた後にブレンドしている。バレルサンプルとして出された2014 年産はまだ樽香が前面にでているが、優しいアタックとフレッシュな酸が長期熟成のポテンシャルを感じさせる。

試飲の第2ステージは2014 年産のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティ・ヴェルドのコンポーネントを試飲した後、最後にこれらをアサンブラージュしたワインを試す。香りはまだ閉じ若々しい堅さをもった味わいながら、きめ細かなタンニンは秀逸。凝縮しているが、ちっとも熱さを感じないエレガントさがある。

「目指しているスタイルは、ジャミーではなく、ミッドパレットに優れ、ヴェルヴェットやシルクの様なテクスチャー、軽みとエレガンスがあり、余韻の長いワインだ」。

最後のステージは同じ2001 年産カステルグランヴァンルージュとサンテステフ2 級シャトー・モンローズ、そしてプティ・カステル2007 の比較試飲。モンローズはちょっと土っぽいニュアンスと樽香、ものすごいタンニンのヴォリューム感に圧倒されるが、まだ若く全体のまとまりを欠いている。カステルグランヴァンは果実の風味、優れたテクスチャーが特徴で、「今でも十分に楽しめるが、後3~ 4年は飲むのを待って欲しい」。しかしこのワインは日本ではすでにソールドアウト。2012 年産の到着が待たれている。16 か月フランス産

のオーク樽で熟成させたセカンドラベルのプティ・カステル2007 はレザーの様な香りを出し始めているが、味わいはまだまだフレッシュ。価格性能比に優れるワインだ。 (M. Yoshino)

画像:比較試飲したワイン

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