国内で2番目となる ワインの地理的表示 「北海道」が誕生した

国産ブドウ100%から造られる「日本ワイン」の新しい表示規定「 果実酒等の製法品質表示基準」が3年の経過期間を経て、いよいよ今年10月30日から発効する。それを前にして、このほど、ワインの地理的表示(GI)が北海道に誕生した。地理的表示は国が地域ブランドを保護する目的で指定しているもので、ワインのGI指定は2013年7月の山梨県に続いて5年ぶり、2番目となる。

今年6月28日付けで国税庁長官指定を受けた地理的表示「北海道」では、官能的要素とその自然的、人的要因について北海道産ワインの産地特性をまとめ、北海道のワイン(発泡性を含む)の化学的要件を次のように定義している。

①アルコール分は14.5%以下、

②総亜硫酸は350mg/kg以下、

③揮発酸値は1.5g/ℓ以下、

④原則として補酸することなく、果汁糖度21%未満のブドウを原料とした場合の総酸値は白およびロゼで5.8g/ℓ以上(酒石酸換算)、赤ワインで5.2g/ℓ以上。果汁糖度21%以上のブドウを原料とした場合の総酸値は白およびロゼで5.4g/ℓ以上、赤ワインで4.8g/ℓ以上。

そしてその上で、GI北海道を申請認定、表示するための製造規定の概要を以下のとおり定めた。

 

【原料】

①北海道で収穫されたブドウのみを使用したワインであること。使用できる品種は計57種で、内訳はヴィニフェラが30品種、ラブラスカが8品種、ヤマブドウが3品種、ハイブリッド16品種。

②酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の原料を用いたものであること。ただし、香味料はブドウの果汁またはブドウの濃縮果汁(いずれも北海道で収穫されたブドウだけを原料としたもの限る)に限り用いることができる。

③果汁糖度はヴィニフェラ種で16.0%以上、ラブラスカ種は13.0%以上、ヤマブドウおよびハイブリッド種は15.0%以上であるブドウを用いること。ただし、天候が不順の場合は、その年度に収穫されたブドウに限り必要果汁糖度をそれぞれ1.0%下げることができる。

④原則として水、アルコールおよびスピリッツを使用していないこと。

 

【製法】

①酒税法が規定する「果実酒」の製造方法により、北海道内において製造されたものであり、「果実酒等の製法品質表示基準」に規定する「日本ワイン」であること。

②糖類を加える場合は、その加えた糖類の重量の合計が果実に含まれる糖類の重量以下であること。

③香味料を加える場合は、加える香味料に含有される糖類の重量が香味料を加えたあとの果実酒の重量の100分の10を超えないこと。

④果汁の総酸値が7.5g/ℓ未満である場合、補酸は官能的に酸味を増す目的とみなし、これを認めない。ただし、果汁糖度が21%以上であり総酸値が7.5g/ℓ以上ある場合に限り、色調の安定化、亜硫酸調整等の品質保全の目的でpH調整を行う必要最小限の補酸として1.0g/ℓまで認める。

⑤除酸剤については、総酸値を2.0g/ℓ低減させるまで加えることができる。

⑥貯蔵する場合は北海道内で行うこと。

⑦消費者に引き渡すことを予定した容器に北海道内で詰めること。

 

【管理】

①地理的表示「北海道」の審査・認証にあたっては、地理的表示「北海道」使用管理委員会(北海道小樽市色内1-1-12 小樽運河ターミナル NPO法人ワインクラスター北海道内)を管理機関として、同管理機関が作成する業務実施要領に基づいて確認を受けること。

②管理機関は、ブドウ栽培期間の天候が不順であったと認める場合にはただちにその旨を公表する。

 

GI北海道の意義とは

GI「北海道」は、北海道のワイナリー26社で構成される道産ワイン懇談会が中心となり、2015年頃から国税庁や北海道の後押しを受けながら準備を進めてきた。

日本ワインの新表示基準は消費者保護の立場から、これまで曖昧だったブドウの出自とワインの醸造地・製造地との関係を表示面で整理する狙いがあるが、地理的表示(GI)はさらに一歩踏み込み、その地域のブドウを使いその地域で製造されるだけでなく、定められた生産基準に適合したワインにのみ表示が許される。いわば、産地名が有するブランド価値を保護するのが狙いだ。

地理的表示「北海道」の場合は、ヴィニフェラだけでなくラブラスカやヤマブドウ、ハイブリッドなど全部で57もの品種が認定されている。GI HOKKAIDOと表示されたワインがどれだけ産地の個性を表現できるかは今後の運用次第ということになるが、消費者が商品を選択する際にまずは安心が保証されるという意味で大きな意義を持っているといえよう。

「GI 北海道の指定により、たとえば“冷涼栽培地がもたらす豊かな酸とフルーティな味わい”など、北海道産ワインがもつ特性と産地との関係が明確化される。道内におけるワイン用ブドウやワインの品質向上はもとより、これまで以上に多くの愛飲者に認められる北海道産ワインとなっていくことに期待したい」と、道産ワイン懇談会の勝井勝丸会長(池田町長)は語っている。

 

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