プレミアムチリ試飲セミナー「カルメネール・チャレンジ」ブラインドテイスティングで、品種のおもしろさ発見

Wines of Chileは、11月27日にプレミアム・チリワインの試飲セミナー&カルメネール・ブラインドテイスティングを自由が丘ワインスクールで開催した。同校で日々試飲のトレーニングを重ね、スキルアップを目指すブラインドテイスティング・アスリートを集め、カルメネールの品種特性と新傾向を把握して貰うことを狙いとした。最初の40分はチリワインの第一人者番匠國男氏がカルメネールについて解説、その後、同校講師の鈴木明人氏がブラインドテイスティングをリードした。

番匠國男氏(左)と鈴木明人氏。

収穫後のカルメネールの畑は美しく紅葉する。だが、その光景は、昔からあったわけではない。四半世紀前にはメルロと混植されていて、カルメネールのみを集めた区画はなかったから。ただ、混植と混同は違う。フィロキセラ禍以前にボルドーからチリにこの品種が持ち込まれたプロセスにおいてメルロとの混同が起こり、栽培家は長らく勘違いしたままワインを造っていた、という説に、番匠氏は疑問を投げる。そもそもワインを品種名で呼ぶようになったのは、カリフォルニアの影響を受けた最近のこと。番匠氏が1991年にチリを初訪問した際、栽培家たちはメルロには早熟と晩熟の2種類あると認識していた。

本当のカルメネールの歴史を紐解こう。フィロキセラ禍以前、複数品種が混植されていたボルドーで、カルメネールの存在意義はクラレットの色を補う役目だったと推測される。フィロキセラ後、混植状態の畑から選抜した穂木を台木に接いだが、豊産性でなく、耐寒性も低く結実不良になりがちで晩熟なカルメネールは選ばれなかった。つまり、100年前には絶滅の過程にあったと言える。

チリにおけるカルメネールのルーツは、フィロキセラ禍以前の1851 年。混植状態のボルドーの畑から運ばれ移植された名もなきブドウだった。1877年の三田育種場のパリの苗木商からの購入記録でも、ボルドヲ・ブラン、ボルドヲ・ノワールとのみ書かれていたのだから、その当時は品種名の記載などなかった筈だ。チリは気候が温暖なため結実不良はない。フィロキセラがいないため接ぎ木の必要がなく、取り木で増やしていくムグロンでブドウの樹は世代交代して来たため、150年の間ずっと形質は維持された。チリの人々は、16世紀にスペイン人がもたらしたブドウ、リスタン・プリエトを、スペイン語で「我が国の」という意味の「パイス」と呼び、このボルドーからのブドウを「フランセサ」と呼んだ。

 

カルメネールの発見は、チリにもバラエタルのムーブメントが起きた1980年代のこと。混植畑にはカベルネ・ソーヴィニヨンはたくさんあった。シャルドネはなかったため、セミヨンにフィールドグラフトでシャルドネを接いだ。メルロには早熟タイプと晩熟タイプがあり、両方を混醸したのでチリのメルロは個性的な味わいだった。このメルロ・チレノあるいはメルロ・タルデと呼ばれる晩熟の方がカルメネールであると判明したのは、1994年11月24日のこと。モンペリエのブドウ学者のジャン・ミッシェル・ブルシクオは、14,000種に及ぶ品種を栽培するフランス国立農学研究所のドメーヌ・ド・ヴァッサルでの10年以上にわたる研究を重ね、チリのブドウ畑を見て回った結果、それが19世紀にボルドーにあった品種だと発表した。Wines of Chileはこの日をカルメネールの日と制定している。

1995年以降、カルメネールとメルロは分けて収穫、醸造されるようになる。だが、誰もカルメネールの栽培法や醸造法を知らなかったため、IBMP(イソメトキシピラジン)による青臭さの目立つワインとなり、それを品種の特徴と捉えられた。2000年代、色濃くアルコールと樽香の強いワインが求められる時代が来た。カルメネールのIBMPを抑える研究が進み、ヴェレゾン前の除葉、点滴灌漑の早めの打ち切り、収穫を遅らせ過熟状態にするなど対策を講じた。過熟させるとIBMPは消えるが、酸が少なくジャミーな味わいになる。今では酒石酸で補酸したり、他品種をブレンドしたりして酸や骨格を補う、2週間ほど早く収穫して少しの青さと自然の酸、みずみずしさを出す、など新しいカルメネールの味わいを求める傾向にある。カルメネールには、IBMPによる青いタイプ、濃厚なタイプ、現代のみずみずしいタイプと3つの変遷があるのだ。

 

鈴木氏によれば、カルメネールはブラインドテイスティングでは当てたい品種だと言う。メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンと間違いやすいため、これを外すと他に影響する。ブラインドテイスティングは2つのフライトで構成された。

<第1フライト>

第1フライトは、4種のワインを試飲してヴィンテージと品種構成、分析値、醸造方法に関するA~Dのテクニカルシートと突き合わせるもの。色調や熟成感などから、通常のテイスティング能力で判断できるが、時代による味わいのタイプの変遷に関する講義内容がヒントになり、全問正解者が数名出た。2017年と2018年ヴィンテージのエレガントでフレッシュな現代スタイルの中に、2011年がひとつだけあり、当時の濃厚さが10年の熟成を経て柔らかな味わいになっているのを体験できた。

 

<第2フライト>

第2フライトは、2種のワインを試飲して何が異なるかを回答するもの。正答は、同じワイナリーの品種構成の違いで、片方はカルメネール75%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%、シラー10%で、もう一方はカベルネ・ソーヴィニヨン75%、カルメネール15%だった。カルメネール主体とカベルネ主体との違いがよくわかるサンプルではあったが、こちらは、すべてがカルメネールの試飲という思い込みがあったからか、正解者はいなかった。

 

最後に番匠氏はカルメネールを冷やして飲むことを勧めた。14℃に冷やしてグラスに注ぎ、16℃くらいまでの変化楽しむと、酸の印象が消えてしまわず、まったりせずにタンニンの主張も感じられると言う。

(Saori Kondo)

 

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