2018年を上回る出来のクインテッサ2019/すべての区画で土地の個性を引き出し

1996年よりバイオダイナミックを導入し、昨年デメテール認証を取得。堆肥を用い、常に畑の様子を観察している。それぞれの区画でそれぞれの品種が最高の成熟を得られるよう、ストレスがかからないように自主性を与えていると言う。それにより、ドライなフィニッシュや固いタンニンなどブドウの望まないものが出なくなるそうだ。

昨年同時期のインタビューで、
「冷涼な2018年は過去最高の出来栄え」だと語った
エステート・ディレクターのロドリゴ・ソト氏。
2019年はさらに複雑なレイヤーが得られ、
2018年を上回る品質だと言う。その理由とは。

取材・文 名越康子

2019年のクインテッサを試飲すると、果実の熟度は高く、硬いわけでないが、パワフル過ぎず、ボリューミーとも感じさせない。テクスチャーがとてもなめらかで、実にシームレスだ。ロドリゴ・ソト氏に感想を伝えると、うれしそうにこう答えた。 「クインテッサが求めているコンセプトはそこにあります。ナパ・ヴァレーにはひとつの畑のひとつの側面を強調しようとするワイナリーが多く存在します。しかしこのエステートにはさまざまなエレメントが存在するため、ひとつひとつをすべて細かく理解し、どのように組み合わせてこの畑全体を表現しようかと考えています。その結果、複雑性や多層的な香りや味わいが生まれるのです」。

カルメネールがブレンドされているということだけでなく、ナパでとてもユニークなワイナリーであるゆえんはここにある。さて、2018年は過去最高だと思ったが、実は2019年の方がもっと良い結果が得られたのはなぜだろうか。
「過去5年の平均より開花が13日遅く始まりましたが、夏はやや気温が高かったことで均一に成熟しながら生き生きとした酸を維持し、理想的な収穫につながりました。2018年よりも涼しくて収穫量が低く、より多層的で複雑性が備わっています。すべての区画でそれぞれの品種が土地の個性を引き出し、完璧に成熟できた結果だと考えています」。

3つの畑は合計26区画に分けられ、独自のフレーバーを醸し出すため、綿密な土壌分析により栽培方法を変えている。東側の丘は白っぽく、ヴァカ山脈由来の火山灰土壌だ。パウダーのような細やかなタンニンを生み、フィニッシュにチョーキーな要素を感じさせ、エレガントで長く続く余韻をもたらす。

1989年植樹の最も古いブドウが植えられている中央部の赤い土壌は、ヴァカ山脈が噴火して流れてきた堆積物で、石がゴツゴツしていて水はけがよい。ストラクチャーや背骨を形成し、 石英のような凝縮したフレーヴァーをもたらす。ナパ川に沿った畑は、河川由来の沖積土壌でシルトや粘土で形成される。ここのブドウはクラシックなナパらしい、ソフトで大きく、丸くて果実味たっぷりのワインになる。これらをすべて区画ごとに醸造し、150以上のワインを試飲しブレンドすることで、クインテッサらしい複雑性が生まれる。 2019年に続く2020と2021もとても暑かった。クインテッサにとって望まない条件下である。厳しい年にいかにマネージし理想に近づけるのか。来年のリリースも楽しみにしたい。

(左)エステート・ディレクターのロドリゴ・ソト氏は、オーナーのヴァレリア&アグスティン・ヒュネーウス夫妻同様にチリ出身で、オーガニック栽培と醸造の第一人者。 (右)2015年からワインメーカーを務めるレベッカ・ワインバーグ氏。


クインテッサ2019 Quintessa 2019 カベルネ・ソーヴィニヨン91 % 、カベルネ・フラン4% 、メルロ2% 、カルメネール2% 、プティ・ヴェルド1%。ブラックチョコレート、チェリー、カシス、スパイスなどが香る。テクスチャーのなめらかさがとても印象 的で、果実の熟度、生き生きとした酸 、きめ細やかなタンニンの一体感があり、エレガントで力強い。シームレスという言 葉そのもので、この若い段階から完璧なバランス。どのような熟成 をするのだろうか。2019年は9月1日よりボルドーのネゴシアン経由でリリースされ始めたところ。

https://www.quintessa.com

 

 

 

 

 

 

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