アルゼンチンワイン ズッカルディの新しい取り組み

アルゼンチンのメンドーサからファミリア・ズッカルディのホセ・アルベルト・ズッカルディ社長が来日した。輸入元のサッポロビールがズッカルディ・ワイン試飲説明会を開き、ホセ・アルベルトがズッカルディ・ワイナリーの新しい取り組みを紹介した。

 

ファミリア・ズッカルディの創業は1963 年。当時はラ・アグリコラと名乗り、果樹栽培から始めてブドウ栽培へと進んだ。当初はバルクワインや濃縮果汁を販売していたが、1980 年にボトリングを開始し、自社ラベルでワインを販売し始めた。ズッカルディはドリップ式灌漑への切り替えが早く、1990 年代後半からペルゴラ仕立てのブドウ樹を垣根仕立てに切り替え、プレミアムワイン造りに乗り出した。

 

ズッカルディはメンドーサ市の南西マイプー地区に本拠をおくが、3 年がかりでウコ・ヴァレーにワイナリーを新築し、それが昨年3 月にオープンした。

標高の高いウコ・ヴァレーのブドウ畑の新植と新醸造所の落成で、ズッカルディはさらに新しい一歩をふみだした。ズッカルディ新時代のキーワードは次の三点だという。①土壌の研究、②コンクリートタンク発酵へのこだわり、③有機栽培へのこだわり。以下、詳しく紹介する。

 

<土壌研究について>

ウコ・ヴァレーに6つの畑を持っている。トゥヌジャンのロス・アルボレスに一つ、同じくトゥヌジャンのビスタ・フローレスにふたつ、そしてサン・カルロスのアルタミラにみっつの畑を持っている。トゥヌジャンの畑はアンデスから流れるトゥヌジャン川の扇状地で、標高の高い扇のかなめの部分には花崗岩が多く、石灰質を含んだ区画もある。また扇が広がった下流部分には小石、砂、粘土質が重なっている。

 

ウコ・ヴァレーは冷涼気候というだけでなく、この土壌の違いに着目して栽培品種や台木を選定し、冷涼地の品種特性が十分に生きるようにしている。開拓当初のころは、冷涼気候の特徴を生かし、当時の流行品種であったシャルドネを植えることが多かった。しかし昨今は、マルベックの栽培地が徐々に標高の高い冷涼な土地へと移っている。そして土壌研究が進むと、それぞれの土壌に適した台木を選んで接ぐようになっている。

 

ズッカルディは話題のグアルタジャリーにも土地を所有しており、ここは標高1,400m、石灰質を多く含んでいる。将来的には、この畑のクール・クライメット・マルベックが市場に出てくることだろう。

 

<コンクリートタンクへのこだわり>

新築したウコ・ヴァレーの醸造所には、発酵用のステンレスタンクとともに、たくさんのコンクリートタンクを新設している。ステンレスタンクに比べるとコンクリートは外部との断熱性に優れている。

またこのコンクリートタンクは、近年、バイオダイナミック農法のブドウでワインを造る人たちの間で人気のエッグタンクの形状を取り入れた独自の卵型を採用している。エッグタンクは、澱との熟成中に外部から撹拌するバトナージュとは異なり、気圧の変化で内部の液体が対流し、自然に澱との撹拌が進行するため酸化のリスクが減少するという長所がある。

ズッカルディではこの卵型タンクで赤ワインも発酵しているようだが、どんな効果があるのか明らかではない。

ウコ・ヴァレーの新醸造所でのワイン造りは、ホセ・アルベルトの息子セバスチャン・ズッカルディが担当している。

 

<有機栽培へのこだわり>

現在、ファミリア・ズッカルディの自社畑面積は1,000haで、このうちの3割が有機栽培認証を得ている。そして2020年にはすべての畑で有機栽培認証を取得することを目指している。

 

今のところ有機栽培区画と在来農法区画は20m以上、離している。これは在来農法区画で行う農薬散布などの影響が有機栽培区画まで及ばないようにするためだ。

畑で使うコンポスト(堆肥)は自前で作っている。その原料は主に発酵終了後の搾りかすで、これに牛糞を混ぜ、8 か月間かけて熟成している。合成肥料から堆肥に変えることで土壌中に棲む微生物が増え、土壌が力をつけている。ブドウの収穫量も在来農法区画は11トン/haであるのに対して、有機栽培区画は9~10トン/haと少なめだ。(K.Bansho)

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