この10本でチリのプレミアムワインが分かる。
1本およそ1,500円。カッシェロ・デル・ディアブロを飲めばチリワインの品質の到達点が分かる。さらには、現在ただいまのチリで栽培されているブドウの品種特性がはっきり見えてくる。
「コンチャ・イ・トロは過去20年にわたり、チリの各地にそれぞれの品種ごとの栽培適地を探してきた。そしてそのブドウでワインを造り、カッシェロ・デル・ディアブロ・レセルバのレンジで紹介してきた。カッシェロの品質はすばらしく向上している」と断言する。
ことに冷涼地で栽培するピノ・ノワールや白品種の品質向上が目覚ましいと思う。
チリ中央部にはブドウの天国ともいうべき栽培環境が揃っている。コンチャ・イ・トロはそこに9,000haもの広大な自社畑を所有し、適地適品種の栽培精神を貫いている。カッシェロに使うブドウは自社畑産が大部分を占めるが、一部はコントロール・グレープを使う。コンチャ・イ・トロは契約栽培とか購入ブドウという言葉を使わず、コントロール・グレープとよんでいる。これは自前の畑ではないけれど、自社スタッフが直接その栽培に関わり、頻繁に畑を巡回して技術指導をするブドウのことを指している。
自社畑9,000haの中で特筆すべきは、冷涼な栽培地に所有する約2,500haの畑だ。コンチャ・イ・トロの冷涼地開拓は、カサブランカから始まってビオビオ、リマリ、ラペル・コスタへと広がっている。ことに北の産地リマリは、コンチャ・イ・トロが主導的に開拓したもので、約1,600haものブドウ畑がある。
ラペル・コスタのウクケルは海岸線から僅か15km の距離。すぐ北にあるレイダ(アコンカグア・コスタ)によく似た気候条件だ。ここでは、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリージョ、シャルドネ、ピノ・ノワール、リースリングを栽培している。
リマリのパイオニアと目されているマルセロ・パパがリマリを解説する。
「シャルドネはカサブランカよりリマリでの栽培が適していると思う。リマリには小ぶりの房をつけるシャルドネを選抜して植えた。また2005年以降に新植した樹は台木に接木している。台木を使うのはフィロキセラ対策ではない。ヴィニフェラの根は怠惰で、地下深くに伸びて意欲的に水分やミネラルを吸収しようとしない。リマリは表土を厚い粘土質が覆っている。ヴィニフェラの根はこの表土の範囲内に留まって灌漑水を捕まえるだけだが、台木を使うと深い心土まで根を伸ばしてミネラル分を掴む。石灰質を多く含むリマリでは、このことがとても大切だ」。
プエンテ・アルトで醸造家と一緒に10本のカッシェロ・デル・ディアブロ・レセルバをテイスティングした。ここでは2本だけ紹介する。
<カッシェロ・デル・ディアブロ ソーヴィニヨン・ブラン2016>
土壌 古い波食棚や河岸段丘に由来する土壌
醸造 ステンレスタンク
味わい 柑橘、洋梨、ライムなどのフレッシュなアロマにトロピカルフルーツが少し。青リンゴの香りもする。フレッシュで爽やか。カサブランカのブドウが柑橘とボディとストラクチャーを、ラペル・コスタが熟したトロピカルなニュアンスを、リマリが引き締まったミネラルの味わいを担当している。
<カッシェロ・デル・ディアブロ カベルネ・ソーヴィニヨン2016>
産地 セントラルヴァレー(マイポ主体)
土壌 河岸段丘の沖積土、丘陵地の崩積土
醸造 ステンレス発酵、アメリカンオーク樽熟成
味わい チェリー、ブラックカラント、プラムの香りにほんのりトーストのヒント。ミディアムボディ、とても滑らかなタンニン。熟した果実ときれいな酸味がバランスよく感じられて余韻が長い。英国にはこのカベルネだけで年間140万ケース輸出している。いつも変わらぬ味わいを維持していることが評価されている。(K. Bansho)
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