注目を集めるボルドーのブドウ栽培 ECOチャレンジとは

ボルドーのECO チャレンジに関するボルドーワイン委員会のレポートを要約した。

一つはクライメット・プラン2020。温室効果ガスの排出削減、省エネルギー、再生可能エネルギーの創出、そして節水と全て20%減の目標を掲げ、生産者と地域住民が包括的な取り組みに参加。2017 年には、ボルドーワイン産地の60%以上がこのような環境配慮の取り組みに関わっている。

農業とエコロジーを掛け合わせた「アグロエコロジー」。ブドウ畑の生態系や環境はもちろん、経済や社会への影響も考慮しながら、それぞれの仕組みを活かし、造り手と飲み手が共に幸せな生活を実現していくことを表している。アグロエコロジーに根ざした具体的な取り組みが、AOC仕様書レベルでもスタートしており、ボルドーワイン生産地のおよそ80% をカバーする複数のアペラシオン保護団体が、次のような条件を展開し始めている。

①ブドウ畑全体で除草剤の使用を禁止する(フランス初)。
②薬品使用に関する手法、頻度および量に関する認識と計測の義務化。
③認可された抵抗性品種の導入(畑の最大5%まで)
④環境認証獲得に取り組む義務など。

①については、ボルドーのほとんどのAOCが取り組んでいる。ペサック・レオニャン(2019年から)とサンテミリオンには、農薬の残留物を含む排水の処理義務化を追加しようという動きもある。これらの新しい項目は、INAOの承認後に施行されることになる。

また③は、殺菌殺虫剤を使わない有効な手段として注目を集めている。抵抗性品種とは、主要なカビ病(ベト病、ウドンコ病、ボトリティスなど)に対して、薬品を使用しなくても自然な耐性を示す品種のことで、遺伝子組み換えではなく、交雑でつくったハイブリッドのこと。

 

AOCボルドーとAOCブライ・コート・ド・ボルドーの生産者協同組合テュティアックTutiac は、拠点マルシヤックに実験中の抵抗性品種を植えている。これが環境を尊重したブドウ栽培の発展のための一つの解決策となり、薬剤使用量を抑えることが、消費者の優先的に求めることの一つとなると考えている。

 

INRA(フランス国立農学研究所)とIFV(フランス・ブドウ・ワイン研究所)の専門家の協力のもと、現段階ではAOC認定外品種だが、将来的には認定されるように包括的な取り組みがなされている14品種(黒ブドウ8種、白ブドウ6種)を選定。すべて自然交配によるもので、ベト病とウドンコ病への耐性を示している。

黒ブドウ8 種のひとつCabernet Jura は、カベルネ・ソーヴィニヨンから生まれた種で、ウドンコ病には中程度の耐性、ベト病とボトリティスには強い耐性がある。Cal 1-15 は3つの病気に強い耐性がある。白ブドウ6 種のうちCabernet Blancは、ウドンコ病とベト病には中程度の耐性だが、ボトリティスには強い耐性。収量が多くなる可能性がある。Cal 6-04 はソーヴィニヨンとリースリングの交配。3 つの病気に対して強い耐性がありアロマが豊か。

 

また、ボルドーで最大の畑面積をもつ家族経営企業の一つ、ヴィニョーブル・デュクールも、将来を見据え2014 年6 月以降、アントル・ドゥ・メールで2 種類の抵抗性品種を3ha の畑に植樹している。ボルドーの海洋性気候と栽培技術に適応できるかを検証し、ブドウの生育期における殺菌殺虫剤の使用量を50%以上減らすこと。また、これらの新しい品種のワインを長期にわたって流通販売することが可能であることを証明するため実験に取り組んでいる。

 

抵抗性品種以外にもベト病をはじめとしたブドウ病害に効果が期待できるというマイクロアルガ(微小な藻の一種)の研究にも注目したい。ボルドーのImmunRise 社が、バイオ殺菌殺虫剤の効力をもつ分子を生成するマイクロアルガを発見。まだ実験段階だが、ベト病に100%、灰色カビ病に50%、エスカの原因となる4~7種のカビに50%の抑制効果があったという結果が得られた。2017年にINRAの畑で実地実験。効果のさらなる検証とともに、環境と生物に対して本当に無害かどうかの証明も必要で、実際の導入にはまだ時間がかかるが、ますます期待されることだろう。

 

WANDS2018年9月号は「2018秋冬のワイン需要を探る」「イタリアワイン」特集です。
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