日本産ぶどう100%ワインの表示基準が変わる!? 国税庁長官告示と通達改正で表示義務化へ

今回の「果実酒等の製法品質基準案」も「酒類の地理的表示に冠する表示基準案」も酒類業団体法第86 条が定める規定のなかで、行政としてできることをやろう、という発想。しかし、日本ワインの更なる品質向上と産業としての健全な発展を促す上では、表示の問題だけでなく、ワインそのものの定義や醸造法規定など一貫した法体系の下で進める必要があるだろう。そうした観点から、「ワイン法」制定の必要性を訴えている「ワイン法制定研究会」はこのほど意見と要望をまとめて発表している。

それによると、今回の表示基準を大筋で高く評価しつつ、

①輸入原料のなかで、濃縮果汁を使ったワインが消費者から不当に評価されることのないよう、適切な対応と運用を、

②逆浸透濃縮法など多重効用缶方式以外の方法で濃縮した原料を使った場合は表示の義務が課されないようにされたいという具体的な要望をあげている。

また、産地表示については、「地名がワインのブランドの中に組み込まれている場合における表示基準がわかりにくいと思われるので、具体的なケースに応じた表示の取扱について明確な説明がなされるべき」だとして、「今回の表示制度は従来のものとは大きく異なり、ラベルの大幅な改正、場合によってはブドウ栽培地の変更・新設や醸造・瓶詰め施設の新設などが必要になる事態も予想され、新制度のへの対応には時間がかかるので施行にあたっては十分な余裕をみていただきたい」との要望を出している。

 

明治10 年(1877 年)、本場フランスでワイン造りを学び帰国した土屋龍憲、高野正誠が宮崎光太郎とともに興した日本最初のワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」から始まった日本のワイン産業。それから140 年近い歴史が刻まれてきたが、戦後の農地改革をはじめとするさまざまな制約ななかで、葡萄栽培とワイン醸造は必ずしも緊密一体の関係を築いてきたとは言いがたい。安価で良質なブドウを安定的に確保しようとすれば、おのずと海外原料や他県をまたいで手に入れるしかなかった。今でこそ、ドメーヌ的なワイン造りを志向する若い造り手達が次々と名乗りを上げているが、ワイン業界全体を見渡せばそれぞれのワイナリーの生産規模や原料事情は実に多様だ。こうした中で日本ワインがさらに品質をたかめ、消費者の支持を支えに産業として大きく成長していくためには、何はさておいても、それぞれの造り手が志を高く掲げてワイン造りに励むことが欠かせない。そして、表示をめぐる今回の制度改正がそのための弾みとなれば良いのだが、制度として定着するには時間が必要だろう。正論を急ぐ余りに“ 角を矯めて牛を殺す” ことが無いようであって欲しいものだ。(M. Yoshino)

詳細につきましては、「ウォンズ」本誌「10月号」P.13〜15をご覧下さい。WANDS本誌の購読はこちらから

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