創業者ヨーゼフ・クリュッグの夢を音を通して感じるKRUG HOUSE

東京に居ながらまるでクリュッグを訪れたような感覚にさせるKRUG HOUSEが出現した。中でも特別な「音」を耳にしながらクリュッグを口にした空間は、ランスのクリュッグの館にあるテイスティングルームさながらであった。

味覚に関する情報の大半は、鼻から脳へ向かうと言われるように、人間の感覚器官は互いに影響し合っている。数年前、オリヴィエ・クリュッグが聴覚も味覚に何らかの作用を及ぼすとの研究結果が出ていると言っていたのを思い出す。

KRUG HOUSEが東京に現れたのは梅雨前の6月初旬。6代目当主のオリヴィエ・クリュッグと醸造責任者のエリック・ルベル、クリュッグに欠かせないふたりが待っていた。わざわざふたり揃って来日下のは、ユニークな試みを行うためだった。クリュッグについてより深く知り理解するのに、小難しいスペックによるのではなく、それぞれの感性でそのまま受けとめて愉しむ、という方法だった。

「音楽に身を任せて無心で聞いていただきたい」とエリックが言ったその部屋の壁には、400本のボトルが飾られていた。

これは、ひとつのグランド・キュヴェを造るにあたり、オリヴィエやエリックはじめ6名のテイスティングチームが、冬の朝毎日10時から15アイテムずつ試飲するワインの総数だ。そのうち250種類は最新の収穫年のもの、残り150種類は約30年分のリザーヴワインだ。試飲が繰り返され、そこから120種類以上10年分以上が選ばれて春先にブレンドされ、新しいエディションが再構築される。

緑色のボトルは、コート・デ・ブランで栽培されているシャルドネを象徴している。オレンジ色がモンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワール、そして黄色がヴァレ・ド・ラ・マルヌのムニエだ。

「クリュッグではワインと音楽を合わせる試みを10年前から行なっている。毎日試飲する時、私たちは専門用語を使ってコメントしていて、そのひとつひとつの言葉を音にして表現したらどうなるだろうか、というのが最初のアイデアだった。そして、フランス国立音響音楽研究所イルカムに相談を持ちかけた。まずは私たちの専門用語を研究者に理解してもらうために数か月かけ、10か所のブドウ栽培地区の個性を音楽にして表すことに成功した。今日はそのうち3つの風景を体験していただく」。

まず、高音が響き天空へ昇っていくような余韻が感じられる音楽が奏でられた。

「コート・デ・ブランのシャルドネの、ピュアで光り輝く部分を表現したいと考えた。特にクロ・ド・メニルのシャルドネは夜空で瞬く星、あるいは弾ける花火のような光り輝く存在だ。繊細でエレガントでエアリーな雰囲気を必ず備えているのがシャルドネ」。

次に、荘厳な低音が長く続き、広がりや華やかさが感じられる音楽が流れた。

「モンターニュ・ド・ランス南部のピノ・ノワールは、ストラクチャーがしっかりしていて裏切られることのない土台を築いてくれる」。

最後にチャーミングでソフトでキラキラとした心地よく調和した音が聞こえた。

「ヴァレ・ド・ラ・マルヌのムニエは、フルーティーで爽やかさが際立ち闊達で、ブレンドの時に私をサポートしてくれる。その様子を可愛い小鳥たちが枝から枝へと渡っていくように描いてくれた」。 (Y. Nagoshi)

輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ

https://www.krug.com/jp

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