アルゼンチン北部、標高1,800mのブドウ畑 エル・エステコのオーガニック栽培

エル・エステコのあるカファジャテは、アルゼンチン・サルタの南西180kmにあり、アルゼンチン最北部のブドウ栽培の中心地である。標高2500m~3000m級のキルメス山脈とその東側のアコンキハ山脈に挟まれたカルチャキ・ヴァレーの東向き斜面にブドウ畑が拓かれている。6,000m級のアンデス本脈はそのすぐ西方にある。

カファジャテは南緯26度。気候区分は亜熱帯で本来なら暑すぎてブドウ栽培は不可能だ。一方、海抜高度は1,700m~2,000mで、これまた普通なら高山植物も育たない寒冷地のはずだ。ところが極限の暑さと極限の寒さがバランスよく中和されて、カファジャテを世界でも稀なブドウ栽培地にしている。カファジャテの日射量と日射角は亜熱帯のそれであり、日中の日差しは紫外線がとても強い。だからカファジャテのブドウは早く熟し、果皮が厚く、果皮に色素と香りの成分を多量に含んでいる。品種の香りが強く色の濃いワインができる所以である。

エル・エステコは2001年にオーガニック栽培を開始し、5年後の2006年にアルゼンチンの有機認証団体・アルヘンサートの認証を得た。現在は、①イニシアドラ畑、②ラス・メルセデス畑、③ラ・マラビージャ畑の三か所が有機認証を得ており、栽培面積は併せて○○haになっている。

 

エル・エステコの醸造責任者アレハンドロ・ペパ

有機栽培とワイン造りの実際を醸造責任者のアレハンドロ・ペパに聞いた。

「カルチャキ・ヴァレーの自然環境は有機栽培には最適の条件を備えている。年間降水量は200mm弱で、灌漑をしなければ植物は育たない。日差しはとても強く、万年雪を被ったアンデスから涼しい風が吹いているからブドウ果が黴に侵される心配はない。

エル・エステコの自社畑すべてを有機栽培に切り替えることは、カルチャキの自然条件との関係では全く問題がない。やると決めたら、すぐにでも移行できる。問題は畑の除草にかかる人件費を捻出できないことにある」。

エル・エステコは有機栽培ブドウでオーガニックワイン・クマCUMAを造っている。Cumaはこの地の先住民アイマラ族の言葉で、クリーンとかピュアという意味らしい。有機栽培ブドウの収穫日が決まると、ワイナリーはブドウのレセプションやパイプ、タンクを洗浄し、専用チューブの準備などで慌ただしくなる。搬入当日はアルヘンサートの立会いのもと、すべてのワイナリー作業がクマに集中する。硫黄の添加量は0~80mg/l、酵素も酵母も添加しない。

 

現在、クマ・オーガニックには赤ワイン3種(カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック、シラー)、白ワイン(トロンテス)、マルベック・ロゼの5種がある。輸入元・スマイルは、今秋、クマ・オーガニックのラベルをリニューアルする。そして、複数品種をブレンドしたクマ・オーガニック・ブレンド2種(レッド・ブレンド=マルベック50%、カベルネ・ソーヴィニヨン50%。ホワイト・ブレンド=シャルドネ70%、トロンテス30%)も華やかなボタニカルラベルで新登場する。クマ・オーガニックの年間生産量は約5万ケースで、カナダや米国へも輸出しているが最大の市場は日本である。

 

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