本来のアリゴテの姿を追求するドメーヌ・ド・ヴィレーヌ 

ドメーヌ・ド・ヴィレーヌの当主であり栽培と醸造をすべて取り仕切る、ピエール・ド・ブノワが来日した。「フィロキセラ前は、アリゴテがシャルドネやピノ・ノワールと同じ地位にあったのは事実だ」という。

 

ブーズロンからの誘い

サンセールのブドウ栽培家に生まれ育ったピエール・ド・ブノワは、DRCのオーナーでもありドメーヌ・ド・ヴィレーヌを設立したオベール・ド・ヴィレーヌの甥にあたる。「叔父からドメーヌに参画しないかと誘われたが、実は一度断った」という。その当時はパリで弁護士の仕事をしていて、パリ生活も快適で、とてもブーズロンの田舎で毎日過ごす気にはならなかったようだ。

しかし、それから毎週末ブーズロンを訪ねて一緒に試飲などしていたところ、1999年に思わぬ展開となった。フードルからまだマロラクティック前のアリゴテを試飲していて、まるでサンセールのソーヴィニヨン・ブランのようなアロマが感じられて衝撃を受けた。「ブーズロンが私を歓迎してくれていると感じた」。アリゴテはグエ・ブランとピノから生まれた品種でシャルドネなどと兄弟関係にあること、品質が高いだけでなくテロワールを十分に発揮できる品種だと感じたことなどから、このドメーヌを引き継ぐ価値があると確信した。

そして2000年の10月からドメーヌに入り、長靴を履いて畑に出ることから始めた。観察していると、古木が多いと気がついた。樹齢115年も現存する。しかも、アリゴテ・ドレAligote d’Oreという古いクローンだ。「ドメーヌを継ぎ、アリゴテ・ドレも引き継ぐことが私の役割だ」と考え、マッサール・セレクションにより苗木を増やしている。

 

アリゴテ・ドレの魅力

通常のアリゴテは、セレクション・クローナルによるものでアリゴテ・ヴェールAligote Vertと呼ばれている。「フィロキセラ前のブルゴーニュには、サシィ、トゥルソーなど含め30ほどの品種が植えられていた。ピノ・ノワールでも異なる種類が存在した。ピュリニー・モンラッシェとムルソーのシャルドネも違っていた。皆、よく観察してそれぞれのテロワールに最適な品種を植えていた。しかし、フィロキセラ後にセレクション・クローナルによって均一化されたクローンが植樹され、ブドウ品種ありき、という考え方に変わってしまった」。しかし幸いなことにブーズロンにアリゴテ・ドレが残されていた。

鉛筆の先がレ・フィア畑

ブーズロンの畑は、谷間を境に南東向きと北西向きの丘の斜面にある。樹齢115年の古木が植わっているのは、ブーズロンの街のすぐ南で北西向き斜面にあるレ・フィアLes Fias畑だ。ピエールが2008年にAOCブーズロン生産者組合の組合長に就いてから、ソーヌ・エ・ロワール県から奨励金をもらい、レ・フィア畑の優れた苗木を選び、接木して増やし始めている。「まだアリゴテ・ドレはこのドメーヌ内にしかないが、ゆくゆくはブーズロンの他の栽培家にも分けたいと考えている」。

「フィロキセラ前は、アリゴテがシャルドネやピノ・ノワールと同じ地位にあったのは事実だ。近年、温暖化の影響でシャルドネは収穫が早まる傾向にあり、酸を保つためにフェノリックが成熟しない状態で収穫されているのを危惧している。しかしアリゴテは、果皮が厚いため収斂性もあり、例え酸が下がったとしても収斂性がフレッシュさを補うことができるはず」。オベールの時代から、テロワールをより表現するために有機栽培に転換したが、ピエールの提案で10年前からビオディナミに転換した。「土壌の養分がブドウに吸収されていればいるほど、酸の高低はあってもpHが安定しているから酸化のリスクは低い」。

 

アリゴテの熟成

現在ドメーヌ・ド・ヴィレーヌは9つのリュー・ディに17区画所有しており、平均樹齢は65年。合計9haで、その70%が早めに収穫できる南東向きにあり、30%はゆっくりと成熟する北西向きにある。畑はすべて標高250〜310mの間に位置し、冷風が吹くのでピノ・ノワールやシャルドネには寒すぎるがアリゴテにはちょうどよい。土壌は粘土石灰質と泥灰岩で、表土が薄い。この土壌は、昔アリゴテが多く栽培されていたアロース・コルトンによく似ているという。

ピエール・ド・ブノワ。
コート・シャロネーズやメルキュレも造っているが、2011年からリュリーで畑やドメーヌを購入し続けており、主なプルミエ・クリュをすでに30haを所有している。

北西向きの斜面にある大きな区画レ・コルセルには3区画所有して、どれも仕立てが異なる。彼は「ディアーブル・デタイユ(仕立ての鬼)」という異名を持っているらしく、仕立てにはこだわりがある。それぞれの特徴を尋ねると「ギュイヨは、わずかな養分でも吸収できるから痩せた土壌向き。ゴブレは、地中海沿岸の仕立てなので日照量が多い区画に。加えて、リッチな土壌であっても収穫量をコントロールできる。コルドンはその中間でバランスよい土壌に向く」と説明した。

醸造は9つのリュー・ディごとに、28〜30hlのフードルで行っている。小樽より酸化還元がゆっくりと行われるのが利点のひとつ。また、フードルの中で液体が自然に「∞」の動き(8を横に倒した形の対流)をするという。「これはシンボリックな永遠を表す形で、ワイン造りに関わったすべてのものや人が、この中に永遠に記録される」と考えている。

最新の2018年(日本未入荷)、2017年、2016年を比較試飲した。

2018年はフレッシュで柑橘類や蜂蜜の香り、そしてストラクチャーのある味わい。2017年はより熟した果実のふっくらとした香りと味わい。2016年は、最も香りが高く、なめらかなテクスチャーが感じられ厚みもあり、後味はフレッシュ。2016年がちょうど香りも味わいも華やかになり始めてきたところで、リリース後数年すると魅力が倍増すると感じられた。

「1988年からのヴァーティカル・テイスティングをちょうどサンフランシスコで行ったところで、1989年と1993年が最も人気だった。シャルドネがニュートラルな品種なのに対して、アリゴテは果皮が厚く、アリゴテ・ドレはさらに果皮が厚くアロマティックだ。若い時には品種特有の香りがするが、時間とともに粘土質を思わせるテロワールを語り始める。これには3年から10年かかる。フルーツを忘れて、やっと天、宇宙と繋がりテロワールが現れ始める」。

 

「もともとは宇宙飛行士になりたかったが、最終的に土に根を下ろした仕事をすることになった」とピエール。しかし話を聞いていると、ブドウを通して宇宙空間と触れ合っているかのような、特別なセンスと感覚の持ち主だと感じられた。(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

関連記事

ページ上部へ戻る