進化を続ける「E.ギガル コート・デュ・ローヌ」を「とさか 六本木」の焼き鳥と愉しむ

E.ギガルと言えば、コート・デュ・ローヌの大御所であり、ワイン好きなら知らない人はいないのではないだろうか。しかし、その最もスタンダードなコート・デュ・ロ―ヌが毎年のように進化していることに気がついている人は、それほど多くないかもしれない。

20年以上日本での小売価格がほとんど変わっていないというこのコート・デュ・ローヌの赤、白、そしてロゼと、「とさか 六本木」の焼き鳥とのマッチングを試みた。ガイド役は、様々な飲食店でワインや飲料のコンサルタントとして活躍するワイン・ディレクターの田邉公一さん(下写真・右)。「とさか 六本木」の料理長を務め、焼き鳥一筋20年の西牧英明さん(写真・左)が、次々と皿を出してきてくれた。いやはや、実に素晴らしい組み合わせのオンパレードだ!

 

<E.ギガルのスタンダードのバリューの高さに驚き>

コート・デュ・ローヌ 白 2017

コート・デュ・ローヌでありながらヴィオニエのブレンド比率が高いのが特徴で、北部ローヌを拠点とするE.ギガルならでは。そして収穫量は平均30hl/haという低さ。(ヴィオニエ55%、ルーサンヌ20%、クレーレット10%、マルサンヌ10%、ブールブーラン5%)

「ヴィオニエの比率が高いだけあって、アロマティックですね。ピーチやアプリコットなどのフルーツが主体の第一アロマが強く、フローラルな印象。若干、白胡椒のようなスパイスやスモーキーさも感じます。味わいはややふくよかで、クリーミー。中盤からのほのかな心地よい苦味もあり、余韻も長く続きます。鶏肉の脂の旨みと相性が良いと思います」と、田邉さん。

 

コート・デュ・ローヌ ロゼ2018

ロゼは収穫翌年の春から夏にリリースされることが多いが、ギガルの場合はステンレスタンクで18か月熟成させてから瓶詰めする。収穫は35hl/haと、やはり低い。品質に妥協なし、の姿勢がここでも垣間見られる。(グルナッシュ70%、サンソー20%、シラー10%)

「少しグリ(灰色)がかった明るいサーモンピンクで、淡い色調です。香りは中程度から強め。オレンジやブラッドオレンジ、ピンクペッパー、そしてややフェノリックな要素も感じられ、少しスモーキーさも。赤い果実のフルーツ感がしっかりしていて、ほのかにキャンディーのような甘いニュアンスがあり、アフターは酸が爽やか。フレッシュで辛口のロゼですね。このロゼは、クリーミーな印象の白よりも冷やして飲むのが良さそうです」。

 

コート・デュ・ローヌ 赤2016

コート・デュ・ローヌ赤は通常グルナッシュ主体のものが多い中、やはりギガルはシラーのスペシャリストゆえ、シラーを50%ブレンドしている。収穫量は40hl/ha。熟成は大樽にて18か月。(シラー50%、グルナッシュ40%、ムールヴェードル10%)

「色はラズベリーレッドですね。干しプラムのようなドライフルーツのニュアンスが少々あり、ラズベリー、ブルーベリー、カシスといった果実、リコリス、ナツメグ、シナモンなどのスパイス、それにアールグレイのような香りも少し出てきています。熟れたコンポートのような果実主体のアタックで、タンニンは緻密できめ細やか。なめらかで、後半に甘苦系のスパイスが香ります」。

一通り味見を終えた田邉さんから「久しぶりに飲んで驚きました。どれもコストパフォーマンスが素晴らしいですね! 見直しました」との太鼓判を押していただいた!

 

<白 セット> 〜ワインのクリーミーな味わいを、鶏のまろやかな味わいと合わせる〜

あらかじめ田邉さんと打ち合わせした料理長の西牧さんが、白に用意してくれたのが「さび焼き」「つくね」「レバームース」。このセットのポイントは、クリーミーな口当たりにあるという。

まずは「さび焼き」を合わせて「実はヴィオニエとわさびは相性が良いのです」と、田邉さん。「わさびの清涼感とスパイシーさが、ヴィオニエ主体のコート・デュ・ローヌ白のスパイス感とよく合い、加えて肉のまろやかさがワインのクリーミーさとナッティーなニュアンスとも共通して相性がよい」と言う。ささみ肉と白ワインは想像範囲内の組み合わせだったが、わさびとヴィオニエの相乗効果は、なるほど! と合点した。

「つくね」も同様に、クリーミーさとまろやかさがワインとの共通点となり「同調」する。また「ほのかなタンニンが、つくねの持つコクとまろやかさを伸ばし、心地よいマリアージュが生まれる」。確かに、実にまろやかな相性だ。

「レバームースはレバーの野性味があるので、赤でもいけます。ロゼの持つフェノールやスモーキーさ、スパイス感とも合います。レバームースの場合は前菜として食べると思いますから、冷やしたロゼ、冷やした赤でもいいと思います。ただ、ギガルの白はやはりヴィオニエ主体のクリーミーさがレバームースと同調します。レバームースは、まず白を合わせて、ロゼや赤でも試してみると表情を変えて面白いと思いますよ」。白と合わせると、香りがふわりと上がり後味がとても心地よい。

 

<ロゼ セット> 〜ロゼは鶏の味わいを爽やかにする〜

「このロゼは柑橘のニュアンスがあるので、柑橘を絞って食べるようなカリッとしたものと」と田邉さん。そして西牧料理長が運んでくれたのが「首皮」(写真・右)と、首筋に当たる「せせり」(左)。確かに、レモンを絞る代わりにロゼを飲むと、またもう一口食べたくなる。

もうひとつ、驚くほど相性が良かったのが「もも肉の唐揚げ ネギ塩ダレ」。唐揚げもレモンなどの柑橘を絞りたくなる料理のひとつだが、ポイントはそれだけではなかった。「衣の香ばしさが、ロゼの黒ブドウからくる果皮のニュアンスと合うのです。それに、衣の油をロゼのフレッシュな酸が爽やかにします。ほんのりとしたタンニンもちょうど良いですね。赤だとワインの方が勝ってしまいますけれど」。衣とロゼの関係は、言われて初めて気がついた。この原理から、チキン南蛮やトンカツも、このロゼワインに合うはずだと言う。

 

<赤 セット> 〜コンポートのような味わいがタレに合い、シラーと鶏の野性味が同調〜

「この赤ワインは、コンポートのようなジャミーなニュアンスがタレに合います。シラーの野生的な血やスパイシーな部分、グルナッシュの果実の熟度の高さやスパイス感もあるので、様々な部位と試してみるのが面白いですよ」と田邉さん。

例えば「ハツ」(写真・奥)「砂肝」(手前)「手羽先」(中央)は、タレではなくて塩。西牧料理長のこだわりで、これらの部位は塩で食べるのが王道だから、敢えてタレにはしなかった。

「ハツは、血や鉄分といった野生的なニュアンスが、ワインの野性味に合いますね。タンニンはあまり多くないので、脂の多くないハツはちょうど良い相性です」・

「砂肝は、白でもよいかと思いましたが、やはり野性味があるので赤のミネラル感や鉄分と合います。咀嚼する時間もあり、噛んでいる間に旨味が出てくるので、そういった意味でも赤の方が合わせやすいですね」・

「手羽先は、味わいのボリューム感と脂が赤とよく合います。皮の香ばしさが、ワインの樽に由来するスパイスやローストのニュアンスともいい」。

タレで出てきたのは、食道と気管である「さえずり」(写真・左上)、「レバー」(左下)、レバーとハツの間の「つなぎ」(右上)、卵巣と卵管という希少部位の「ちょうちん」(右下)。「レバーやつなぎは、肝が持つ血のニュアンスとタレの味わいが、フレンチのジビエネ料理に近いイメージで、熟度の高い黒ブドウを使った赤ワインとよく合います。タレの焼き鳥は食事の後半に食べるので、タイミング的にもちょうどよいですね」。

そして、シメは「煮込み」。砂肝、ハツ、ちょうちんなどの部位の野性味、そして煮詰めたニュアンスや温度の高さが、ローヌの日照量の多さや赤ワインの発酵温度の高さ、そして熟した黒ブドウのニュアンスとよく合うという。

焼鳥もコート・デュ・ローヌも、どちらかといえば身近な存在だ。西牧さんは、当初「炉端焼き」を目指していたが、焼鳥も経験し、次第に「炭火」の魅力にハマってしまったのが焼鳥一筋20年の理由だという。炭からの距離、空気の量、風の通り、時間などにより焼き加減が異なるから目を離せない。もちろん、部位によって焼き方を変える。「シンプルなものほど奥が深い」と言うのは、店長の築地賢さんだ。

コート・デュ・ローヌも同じではないだろうか。複雑すぎず、重すぎず、わかりやすく、今すぐ美味しく飲めるもの、しかもローヌらしいもの。それを求めて年々進化を遂げている。このラインナップと焼鳥の競演を、ぜひ実際に試してみてはいかがだろうか。

輸入元:ラック・コーポレーション

***お店でこのペアリングを実際に愉しんでいただけます!***

「とさか 六本木」

東京都港区六本木3-1-25 六本木グランドプラザ2F

03-3583-3555    六本木一丁目駅、西改札から徒歩3分(駅から直通)

(text&photo by Y. Nagoshi)

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