WAPIRITSの挑戦① 『いいちこ』から『TUMUGI』へ 新たなニッポンのスピリッツに

三和酒類副社長下田雅彦氏に聞く

麦焼酎のトップブランド『いいちこ』の製造元である三和酒類(大分県宇佐市)は麹スピリッツ『TUMUGI』を2015 年に商品開発し、今年は本格的なバー業態向けのプロモーション活動を開始している。

『TUMUGI』は日本伝統の麹文化から生まれた和のスピリッツである。麦焼酎『いいちこ』から『TUMUGI』へと至る商品開発の経緯と、『TUMUGI』でニッポンのスピリッツをどう変えるか、工学博士でもある下田雅彦副社長に話を聞いた。

 

来年創業60周年を迎える三和酒類

当社は1958年9月5日に地元の日本酒メーカー3社(翌年1社が参加)が共同瓶詰場をつくるために出資して設立しました。清酒だけでなく、ワインや焼酎、さらにもろみ免許で食酢原料用の製造も手掛け、いろいろなことにチャレンジする会社として歩んできました。来年で創業60 周年を迎えますが、そのチャレンジ精神は創業以来変わりません。

1978 年の創業20 周年事業として『いいちこ』の開発に着手し、当時の和田社長の下、名前を公募するなどして、翌年1979 年2月の発売に至りました。それまで匂いがきつくて飲みづらいといわれた本格焼酎でしたが、『いいちこ』は香りがよくて飲みやすいと評判になり、全国的な焼酎ブームのきっかけとなりました。私は『いいちこ』発売から5年後の1984 年に入社し、技術系の責任者として今日に至っています。

 

『いいちこ』誕生から全麹仕込みへ

『いいちこ』誕生から今年で38 年目を迎えますが、この間を振り返ると、麹に対する技術革新の歴史でした。通常の本格焼酎では、清酒と同様に蒸米を使った米麹が一般的な仕込み方法です。米麹だと原料処理も安定していて造りやすいからです。一方、麦は吸水をコントロールするのが難しく、麦麹が不安定で醪の発酵がなかなかうまくいかなかった記憶があります。また、『いいちこ』は飲みやすいけれども、飲み応えとしての旨みとか甘さをどう引き出すかというのがずっと技術的な課題でした。そこで注目したのが沖縄の泡盛です。泡盛には麦焼酎にはない旨みや甘さがありますが、それは麹だけで仕込んだ全麹仕込みがベースになっていることに気付き、『いいちこ』にも応用することで味わいの幅を広げる一つの突破口となりました。

全麹仕込みというのは、原料をすべて麦麹にするので、手間もコストもかかり、当社にとっては一大チャレンジでした。

『いいちこ』を1989 年6月にリニューアルした際に、全麹仕込みでつくった原酒を使うことにより『いいちこ』に旨みや甘みを持たせた今のスタイルが出来上がりました。さらに清酒でいうと酒米の王様「山田錦」に当たる新しい麦の品種開発にも成功して、麦焼酎『西の星』を商品化し、2001 年6月に発売しました。本格的な全麹仕込みがスタートしたのは、2002 年4月に生産拠点である日田蒸留所の操業を開始してからです。

 

2014年には「麹プロジェクト」が始動

日本の食文化である味噌・醤油や、酒文化である日本酒・焼酎の双方に共通しているのが麹をベースにしているということです。つまり、麹は日本の伝統文化と言えます。

こうした中で、私たちは1994 年8月の新聞広告「麹という名の宝箱」というコピーで、『いいちこ』のブランド戦略を明確にしました。その後も1997 年3月に「麹文化の酒。」、1999年11 月に「麹でつくる蒸留酒のうまさを極めます。」に引き継がれ、麹文化の蒸留酒であることをずっと訴求してきました。

さらに、初の新聞広告から20 年後となる2014 年8月からは「焼酎はどこまでうまくなるか」をテーマに、「麹プロジェクト」を始動しました。焼酎ブームも一段落した中で、麦焼酎の本質的な価値を、そもそもの麹づくりから、もう一度見直そうと考えたからです。

この麹プロジェクトを推進するために、シンボリックな意味を込めて、『いいちこ 日田全麹』と『いいちこ 空山独酎』の2つの商品には「麹マーク」が入っています。

 

『TUMUGI』誕生までの道のり

当初は『いいちこ』をバー業態でカクテルとして使って頂くという発想がありました。

実際に『いいちこ』が目指す最高峰の麦焼酎『いいちこフラスコボトル』をカクテルベースとして使って頂くような提案も行いました。フラスコボトルは、全麹仕込みで、なおかつ清酒の吟醸酒づくりのように原料の麦をさらに磨きをかけた商品です。

バーテンダーの方々に利き酒してもらうと、

ストレートでは高評価を戴きましたが、カクテルにした時にアルコール度数が30 度では低く、せっかく持っている商品の良さがうまく引き出せないというご意見を頂き、40 度は必要だという結論に達しました。

そこで何とか焼酎の良さを活かしながら、麹文化の蒸留酒に磨きをかけてチャレンジしたのが『TUMUGI』です。全麹仕込みの原酒に5つのボタニカルを別々に浸漬・蒸留した原酒をつくり、それと本格焼酎をブレンドしているので、焼酎でなくスピリッツとなります。

 

“WAPIRITS”の土俵を広げる

『TUMUGI』はジン、ウオッカ、ラム、テキーラに次ぐ第5のジャンルである和スピリッツ(WAPIRITS)に位置付けています。

今はジンブームによって、国産のクラフトジンがいくつも登場していますが、その延長線上で、国産クラフトスピリッツとしてのWAPIRTS の土俵が広がっていけばいいと考えています。その結果として麦焼酎の可能性も広がるのではないかと期待しています。

そして、九州、沖縄を含めたエリアが日本のスピリッツの発祥地として、世界からも注目される存在になれたら嬉しい。そのためにはこれから10 年、20 年かかるかもしれません。TUMUGI も現在はまだ5万本の販売計画ですが、まずは10 万本、そして20 万本、30 万本へと広げていく予定です。(A.Horiguchi)

三和酒類の主な出来事
1958年 三和酒類設立
1972年 赤松本家酒造・熊埜御堂酒造場
・和田酒造場・西酒造場が企業合同
1974年 果実酒『アジムワイン』発売
1979年 麦焼酎『いいちこ』発売
1989年 宇佐市に本社移転(90年に本社社屋完成)
1998年 『いいちこフラスコボトル』発売
2001年 麦焼酎『西の星』発売
2001年 安心院葡萄酒工房操業開始
2002年 日田蒸留所操業開始
2005年 『いいちこスペシャル』発売
2008年 『いいちこ日田全麹』発売
2014年 『いいちこ空山独酎』発売
2015年 『いいちこ長期熟成貯蔵酒』発売
2015年 WAPIRITS『TUMUGI』発売

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページ上部へ戻る