「クリュッグ ヴィンテージ2003」日本で発売開始

〜猛暑の年として知られる2003年は、「いきいきとした輝き」を放つユニークなヴィンテージ〜

 

今年の初め頃だっただろうか。エールフランスの短距離便に乗っていて、機内誌をめくった。すると、2008年末よりクリュッグのCEOに就任したマギー・エンリケのインタビュー記事に目がとまった。そこで彼女は、ともかくクリュッグの歴史、ルーツを調べ尽くした、と語っていた。それにより、クリュッグとは何かを探り、クリュッグは単なるラグジュアリー品ではなく、本当に類い稀なシャンパーニュであることを確信したという。その結果、クリュッグは情報発信の方法や内容を変えたようだ。

この11月に6代目当主のオリヴィエ・クリュッグが来日した。MHD モエ ヘネシー ディアジオによる「クリュッグ ヴィンテージ2003」の試飲会で話を聞き、その意図するところがようやくわかった。

 

<クリュッグAPP/より深い理解と楽しみ方>

クリュッグでは、2011年末から裏ラベルにIDコードを入れ始めた。例えば、クリュッグのアプリケーションをダウンロードしたスマートフォンでそのIDコードを読み取ると、目の前にあるクリュッグ グランド・キュヴェの詳細が一目瞭然となる。

krugapp試しに、ちょうど注がれたボトルのIDコードを入れてみた。2014年にデゴルジュマンしたもので、1990年から2006年まで合計11年分142種類のワインをブレンドし、8年間瓶内熟成させたグランド・キュヴェだ、と判明した。

この情報は、単にマニアの情報欲を満足させるためではない。クリュッグは使用する葡萄の品質に妥協することなく、長期熟成可能なワインを数多く蓄えて、それらを贅沢に駆使し、このグランド・キュヴェを造り上げている、ということを示唆するためだ。

ヴィンテージのつかないクリュッグが、「ノン・ヴィンテージ」ではなく「マルチ・ヴィンテージ」と呼ばれるゆえんは、ここにある。

 

krugapp2このアプリケーションには、今飲んでいるクリュッグをより美味しくしてくれる音楽を聞く、という機能もついていた。楽しみ方の提案として「耳」を選んでいるのも面白い。

オックスフォード大学の神経科学の大家曰く「味覚と音楽を感じる脳の場所は同じ」ということから、このプロジェクトを立ち上げた。隔月で6名の作曲家が、ポップス、クラシック、ジャズなど、多岐にわたるジャンルから選んだ曲目が更新される。

「私が滞在していた25年前とは、日本市場は随分変化した。かつてはテクニカルな話で繋がっていたが、今や日本の愛好家は成熟していて多くのことを知っている。だから、たくさんの人が興味をもつようになっている、使うグラスや料理も含めて、どのように楽しむのがよいか、という情報を準備することにした」。

 

既に数千人がダウンロードしているというアプリケーションの導入で、クリュッグと人との繋がり方に変化を感じているようだ。

「若い人でも興味をも抱く人が出てきている。ただ、私たち職人による手塩にかけた作品、という事実に変わりはない。醸造責任者のエリック・ルベルなど、むしろ更に詳細にこだわり始めているぐらいだ」

 

<一人の男の夢>

potato

この画面の左下にある冊子も、小豆色の表紙

クリュッグのイメージカラーは、小豆色に似た深い赤紫色をしている。これは、オリヴィエの曾々々祖父にあたる、創業者ヨーゼフ・クリュッグがつけていた革のノートの色だという。代々、宝物のように受け継がれているもので、今でも尚、そこに記されていることがクリュッグの精神として息づいている。

 

「ふたつの重要なことが書かれている。ひとつは、品質に妥協なし、ということ」

「もうひとつは、クリュッグで造る2種類のシャンパーニュは、個性は異なるが上下の差はない、ということ。No1.はグランド・キュヴェ。No2.はヴィンテージ」

 

クリュッグにとって、グランド・キュヴェは、ヴィンテージを越えたシャンパーニュそのものの寛容さ、芳醇さを表現した特別なキュヴェだ。初代から、このブレンドの方針は変わっておらず、代々その伝統が継承され続けている。

「グランド・キュヴェは、ひとつのオペラとも言える。同じ演目でも、ベースワインや飲む時期によって、毎回幕を開けると少しずつ違うから」

 

一方ヴィンテージは、「特別に伝えなければ」という、記憶に残しておくべき特徴が備わった年に造る作品だ。

葡萄が収穫されワインになった後、まず優先的に選ぶのはグランド・キュヴェに使うワインだ。収穫翌年の1月になると、およその設計図をつくる。毎朝試飲を繰り返す。そして、ベースワインを選んでから、共にブレンドするリザーヴ・ワインのめどもつける。

その年に使うリザーヴ・ワインが決まってくると、新しいワインの中からどれをリザーヴとして残しておきたいのかがわかってくる。ヴィンテージを造るかどうかの決定は、それらを終えてから。それでもやっぱり造っておきたい、と思えたら、造る。だからヴィンテージは「No.2」なのだ。

 

「初代は、いつ飲んでもすべての要素が詰め込まれたシャンパーニュを造りたかった。だから、今でもクリュッグは『一人の男の夢』を造り続けているようなものなのだ」

オリヴィエは「これと同じこと」と、iPhoneを指して言った。ヨーゼフ・クリュッグを、スティーヴ・ジョブズと重ね合わせているのだろう。ビジネスというより夢を体現したものに近い、と言いたかったにちがいない。

また、今考えていることがひとつある。

「毎年、同じアイデアで造っているが、毎回まったく同じではない。だから、何回目のキュヴェだ、ということを示す『エディション000』と、数字を加えたい。いつの日にか」

クリュッグのグランド・キュヴェが「ノン・ヴィンテージ」ではない、ということを更に強調したいのだ。

kruggrandcuvee

<クリュッグ ヴィンテージ2003>

2002年ヴィンテージに先駆けて、2003年ヴィンテージがリリースされることになった。記憶に残る猛暑の年だ。

「開花が早く、夏は猛暑のためフランスでも多くの死者が出たほど。平年より夏は10度も気温が高かった。葡萄の成長はとても早く進んだが、暑過ぎて成長が止まったものもあった。だから、熟度がバラバラで収穫にとても苦労した」収穫は、1822年以降で最も早い8月に開始され、10月まで続いた。この最も暑い年のストーリーを、残しておくべきだと判断した。過去に猛暑で造ったヴィンテージは、1959年、1962年、1976年、1979年、1989年がある。

「2003年は、それほど酸が高くない。ただ、葡萄のバランスがよく、完成度が高い」

香りからも凝縮した果実や厚みを感じられるほど。柑橘類の皮の砂糖漬け、ナッツやキャラメル、少しドライな桃などが香り、落ち着きがあり、力のある味わいで、新鮮だがとても豊かだ。

クリュッグAPPで、この2003年にお薦めの曲を検索すると、キース・ジャレットが流れてきた。(Y. Nagoshi)

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