宮嶋勲氏、今イタリアで最も伸びているワイン「ルガーナ」のマスタークラス開催。

イタリアワインのエキスパート宮嶋勲氏がルガーナ協会からの依頼を受け、今イタリアで最も伸びていて注目すべき「ルガーナ」について、マスタークラスを開催した。会場となったイル・リストランテ「ルカ・ファンティン」では、シェフのルカ・ファンティン氏が、6種類のルガーナ1本ずつに特別な料理を創り見事な共演を見せてくれた。

ルガーナの産地は、北イタリアのガルダ湖畔にある。ロンバルディア州とヴェネト州にまたがるガルダ湖は、イタリア最大級の湖でありその湖畔は高級リゾート地としても知られている。大きな湖の恩恵で、北部にも関わらず地中海性気候のためオリーブやレモンも栽培可能である。ここはドイツ人に人気の場所で、夏のバカンスに来るたびにお気に入りのワイナリーを訪問し、車のトランクに入るだけたっぷり購入して帰るのだそうだ。そういった環境から近年まで他の国にはあまり輸出されなかったため、それほど認知度が上がらなかったという。

今でも生産量の40%はドイツが消費しているが、販売量は2018年に前年比8.6%増に、2019年は前年比27%増で2200万本、そして昨年2020年においても11%増を見込んでいる。では、なぜこれほど人気が急上昇しているのだろうか。

 

宮嶋氏は、その特徴とポイントを次のように説明した。

*料理を邪魔せず引き立ててくれる、シンプルで自己主張をしないワインである。

*第一アロマは強くはなく、白い花、柑橘類、アーモンドやスモーキーさを感じる。

*味わいは活力に満ち、酸とミネラルがしっかりしている。

*味わい深く、飲み飽きしない。

*樽をきかせても負けることがないのがトゥルビアーナというブドウ品種。

*長期熟成能力があり、10年以上経過しても酸とミネラルが生き生きとしていてその勢いを失うことがない。

20年、30年前の、インパクトの強い華やかな香り、凝縮感、たっぷりとしたボディーのワインが好まれた時代とは、明らかに傾向が異なる特徴を有していることがわかる。

実際に「15年ぐらい前までは、規定の範囲内で10%のシャルドネをブレンドする生産者が多かったですが、今ではほとんどがトゥルビアーナ100%」という。

 

トゥルビアーナ(かつてはトレッビアーノ・ディ・ルガーナと呼んでいた)というブドウ品種は、DNAはトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェやヴェルディッキオと同じようだが、ルガーナ協会によると「似ているが、異なる」とのこと。ただし「トレッビアーノ・トスカーナとは全く関連がない」。

この品種はガルダ湖の南側に位置する平野部と丘陵地で栽培されている。「平野部は粘土質土壌で、ここから生まれるルガーナは閉じていて固く、この地ならではのスタイルに出来上がる。そして丘陵地は氷堆積土壌で、トロピカルフルーツのトーンが現れる」。

ルガーナDOCには、スパークリングワイン、ルガーナ、ルガーナ・スペリオーレ、ルガーナ・リゼルヴァ、ルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァの5つのカテゴリーがある。

紹介された以下の6銘柄は、すべてトゥルビアーナ100%。

Lugana DOC Brut 2018 <Olivini オリヴィーニ>

20年前にワイン産業に参入。瓶内二次発酵によるスパークリングワインで、デゴルジュマンは2020年11月。

レモンなどの柑橘類のフレッシュなアロマで、上品な味わい。ほどよい果実感があり、酸とミネラルがミドルパレットからしっかりと現れる。

天ぷらにも似たアカザエビのうま味を引き立て、味わいを引き締めるので、食べて飲んでと繰り返したくなる組み合わせ。

 

 

 

Lugana DOC Terra Dorata 2019 <Oselara オゼラーラ>

1991年創設の比較的若いワイナリーで、自社畑は13ha。フリーランジュースのみ使用。瓶詰め前までシュールリー。

白桃などの熟した果実の香りがする。「典型的なタイプ」ではないものの、口中の後半から酸とミネラルの勢いが増してきてルガーナらしい後味。香りも楽しみたい人に良さそう。

アオリイカの甘みと果実の甘い香りと果実感がちょうどよいバランス。

 

 

 

Lugana DOC Hamsa 2019 <Cascina Le Preseglieカッシーナ・レ・プレセリエ>

年間生産量6万本。アグリツーリズムも運営。手摘み収穫。ブドウをクエン酸を溶かした水で洗ってから醸造。一部、5℃で15時間クリオマセレーション。

ルガーナらしい、閉じ気味で還元的な香り。なめらかなテクスチャーで、酸とミネラルがとても綺麗に余韻まで長く続く。

帆立貝の香りをグッと引き上げ、ゆったりとした相性。後味もとても綺麗。

 

 

 

Lugana DOC Inanfora 2019 <Borgo La Caccia ボルゴ・ラ・カッチア>

90haの敷地のうち30haがブドウ畑。南東向きの丘陵地の畑。テラコッタのアンフォラで、温度管理した部屋で発酵し。アンフォラとステンレスタンクで4〜5か月熟成。醸造コンサルタントは、ステファノ・キオッチョリ。

香りは閉じ気味だが柑橘類が徐々に出てくる。アタックは丸みがあるが、後半で収斂性が現れる。料理を求める味わい。

このワインを用いた白ワインバターソースをかけた蛤のリゾットと、とてもよい相性で、蛤の香りが余韻に長く残る。

 

 

 

Lugana Superiore DOC Gigi Rizzi Collection 2018 <Seiterre セイテッレ>

ファントーナ農園の最良のブドウのみ、通常より10〜15日遅く手摘み。ステンレスタンクで3か月シュールリー。その後、新樽バリックで12か月熟成。

2018年は涼しい年でありながら、香りは果実感も樽由来の要素もあり、リッチ。低温調理により蒲焼き的にした鮪との相性が抜群で、香りがとても印象的な組み合わせ。

 

 

 

Lugana Riserva DOC Vigne di Catullo 2017 <Tenuta Roveglia テヌータ・ロヴェリア

現在の当主の曽祖父が、この地でワイン造りを開始。テヌータ・ロヴェリアとしてワインを販売し始めたのは1988年より。ブドウ畑は110ha。このキュヴェは、搾汁率50%で、ステンレスタンクにて24か月熟成。

香りは控えめながら、アタックがとてもなめらかで、ふっくらとしたテクスチャー。一瞬、酸がソフトに感じるが、後半から勢いを増して長く伸びていく。香ばしい甘鯛の香りと味わいに融合し、両者のうま味が倍増する。

 

 

 

このマスタークラスに参加していた数名の若手トップソムリエ陣は、ルガーナのワインそのものの「質の高さ」、特に「口中でミドルパレットからの酸とミネラルの伸び」に感心していた。また、今回の料理との組み合わせはもちろんのこと、他にも「様々な料理との組み合わせの可能性が考えられ汎用性が高いワイン」である、との感想を述べていた。

イタリアン、フレンチ、そして日本食や中華、家庭料理など、様々なオケージョンで楽しめそうだ。

(Y. Nagoshi)

 

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