「ドナルド・ヘスが初めてアメリカに渡ったのは1970年代のこと。スイス人の彼はミネラル・ウォーター“Valser” で成功をおさめ、当初はそのビジネスをさらに拡大するために渡米したのだが、そこでナパのワインを初めて飲み、ワインビジネスに興味を抱くようになったんだ。その翌日、彼は電話帳で調べてロバート・モンダヴィに面会を申し込んだ。いろいろ話をするなかで、ロバートは『ナパは世界でもベストのカベルネ生産地だが、畑を探すなら標高が高い山岳地はダメ。栽培が難しいからね』と忠告してくれた。ドナルドはその後何週間もかけてカリフォルニア州内を巡った。土壌やマイクロクライメットの違いを学ぶなかから、最終的に1978年、マウント・ヴィーダーに900エーカーの土地を購入することになったんだ」と、ヘス・コレクションの醸造責任者デイヴ・ガフィは語る。
「マウント・ヴィーダーはサンフランシスコ湾と標高の高さ、そして独特の火山性土壌が相まって、小さな果実と低い収量、そして凝縮しパワフルなカベルネが産出される」という。
ヘス・コレクションでは、現在、マウント・ヴィーダーの標高が異なる位置に計3か所の畑を所有しているほか、ナパヴァレーの北東部、ハウエルマウンテンの東の裾野、ポープ・ヴァレーにもAllomi Vineyard(82ha)を所有。標高235~290mの南西面に拓かれたこの畑は、35のブロックに5種の異なるクローンのカベルネを栽培しているが、午後の日差しを受けて、マウント・ヴィーダーよりも暑く乾燥。しかし、夜は冷え込み、酸の乗りの良いワインを産出する。土壌は粘土ローム質の沖積土で、比較的肥沃だ。
この日の試飲のテーマは、マウント・ヴィーダーとポープ・ヴァレーの自社畑から造られたカベルネ・ソーヴィニヨンの味わいの比較、そして、ヘスのユニークさのひとつであるナパ産マルベックの魅力を探ることだ。
Allomi Cabernet Sauvignon 2015 プティ・シラーを6%、プティ・ヴェルドを2%ブレンド。アメリカンオーク樽(新樽25%)で18か月熟成。黒系果実とバニラの風味。アタックはソフトで、甘さとフレッシュさを兼ね備えた味わい。「アメリカンオークは製樽業者によって品質が均質でないものが多い。自分はカベルネにクローブやバニラ、ココナッツなどのニュアンスを加えるのは好みではないが、2003/4年にかけてこのワインに合う製樽業者を見つけた。それはボルドーとナパの両方で製樽を行っているデンプトス社で、ミディアム+でトーストし、その後3年寝かして乾燥してから使っている。プティ・シラーを6%入れることで、味わいに円やかさとウエイトを持たせている」。
続きはWANDS2019年2月号をご覧ください。
2月号は「ビール、WANDS400号のあゆみ、ジョージアワイン」特集です。
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