- 2016-2-23
- Beer

ビール、発泡酒、新ジャンルを含むビール類の昨年課税数量は11年連続の前年割れとなり、市場縮小傾向に歯止めがかからなかった。ただ、ビールについては平成8年以来、19年ぶりに前年を上回るなど“ビール回帰”という変化の兆しがみえる。
こうした中で、大手ビールメーカー4社は年明け早々、相次いで今年の酒類事業方針を発表した。各社に共通しているのはビールカテゴリーへの再注力である。これは将来のビール類の酒税一本化とビール減税を見据えた各社のカテゴリー戦略といえる。そのドメインともいえるビールの基幹ブランドへ再投資する動きと、さらにアサヒとサントリーは新ブランドで新たなユーザーを獲得することによって、新市場を開拓し、総需要拡大につなげようという動きである。
昨年9月に新スタンダードビールとして上市されたサントリーの『ザ・モルツ』は20~40歳代をターゲットに、麦芽100%の「UMAMI」を訴求することで、その販売実績は328万ケースと当初計画を大きく上回った。これにより「9~12月のビール市場が102%と上向き、ビールカテゴリーの活性化にも大きく貢献できた」と振り返った。
さらに、同社では、嗜好のトレンドを“30年周期”で捉えていると次のように説明。「1950年代から高度経済成長期の第1波は『苦味』、1980年代後半からバブル期とその崩壊までの第2波が『辛口』、そして現在の第3波は『味わい』だろう。ビールにも味わいの多様性が求められ、それはコクであり、香りであり、旨みである。そういう考え方から当社のポートフォリオはこの味わい軸に揃えた」。今年の『ザ・モルツ』の販売計画は730万ケースで、中期的には1000万ケースを目指すという。
一方、アサヒビールは“究極のコクキレ”に加え、糖質50%オフを実現した『アサヒ ザ・ドリーム』を3月23日に上市する。
主力商品『スーパードライ』は1987年に日本初の辛口生ビールとして誕生し、今年は発売30年目を迎える。コクのある苦味のビールが主流だった時代に、“辛口・キレ”を求める新たなユーザーを獲得し、ビールの新時代を築いた。そして、現在では他社の追随を許さない1億ケース超のブランドにまで成長しているが、ここ数年は漸減傾向にある。
こうした中で同社にとって7年ぶりとなるビール大型新商品が『ザ・ドリーム』だ。開発の経緯について、次のように説明する。
「1万人という大規模な市場調査から、ビールユーザーの嗜好を徹底的に深堀して2年がかりで商品開発した。現在のビールカテゴリーには、プレミアムビールに代表される“コク重視”とスタンダードビールの“キレ重視”の商品が45対55の割合(缶ビール)で存在するが、“コクとキレ”を両立させたブランドは存在していない。ビール№1メーカーの責務として、この領域でのオンリーワンであり、ファーストエントリーという考え方から、商品開発に挑戦した。試作品を1500人のビールユーザーに試飲させたところ、8割に購入意向が見られた」
「最近の糖質オフ市場の伸長をみても最高にうまいビールを体のことを気にせずゴクゴク飲みたい、これこそがビール通の夢ということで、新商品では“究極のコクキレ”に加え、糖質50%オフを実現した。従来の製造方法では、その味覚のバランスから困難とされてきた領域を、当社の高い技術力と革新的な製造方法でクリアした。新たな定番ブランドとして市場創造を図る。糖質オフというのは時代の要請。海外を見渡せばミラーライト、クアーズライト、バドライトしかり。うまいビールをゴクゴク飲みたいというのは万国共通」。
広告キャラクターにはラグビープレーヤーの五郎丸歩選手を起用。初年度販売計画は400万ケース。ビール新時代の幕開けとなるか大いに注目される。(A. Horiguchi)
画像:3月23日発売の『アサヒ ザ・ドリーム』
詳細につきましては、「ウォンズ」本誌「2月号」P.6〜17の「ビール特集」をご覧下さい。WANDS本誌の購入&購読はこちらから
2015年ブランド別販売量ランキング | ||||
ブランド | 販売量 | 前年比 | ||
(万ケース) | (%) | |||
① | スーパードライ | ☆ | 10,383 | 97.9 |
② | のどごし<生> | 〇 | 4,650 | 110.7 |
③ | 淡麗 | ● | 3,950 | 99.7 |
④ | 金麦 | 〇 | 3,692 | 101.7 |
⑤ | 一番搾り | ☆ | 3,470 | 104.2 |
⑥ | クリアアサヒ | 〇 | 3,175 | 110.9 |
⑦ | ザ・プレミアム・モルツ | ☆ | 1,756 | 99.2 |
⑧ | 黒ラベル | ☆ | 1,618 | 100.2 |
⑨ | スタイルフリー | ● | 1,330 | 110.5 |
⑩ | キリンラガー | ☆ | 1,280 | 91.3 |
⑪ | 麦とホップ The gold | 〇 | 1,058 | 91.5 |
⑫ | ヱビス | ☆ | 952 | 98.8 |
⑬ | アサヒオフ | 〇 | 605 | 93.1 |
注1:全て各ブランドの合計販売量。
例えば『淡麗』は「麒麟淡麗<生>」「淡麗グリーンラベル」「淡麗プラチナダブル」の合算。
注2:☆はビール、●は発泡酒、〇は新ジャンル。
最近のコメント