1,700~2,000m超の秘境が生む エル・エステコ ブラン・ド・ブラン&ノワール

圧倒的に赤ワインのイメージが強いアルゼンチンで、近年白ワインへの関心が高まっている。中でも「エル・エステコ」の2銘柄は、高評価にしてリーズナブル。そして独自の個性を備えている。そのユニークさの源とは。

取材・文 名越康子

エル・エステコのブドウ畑があるカルチャキ・ヴァレーは、アルゼンチン北部に位置する。ここはアルゼンチンワインの2.5%しか生産していないため、メジャーとは言えないが、大変特徴的な産地である。南緯26°にあり、夏至の日には日照時間が13時間46分もあり、冬至でも10時間31分あるという。亜熱帯気候であってもおかしくない場所で、サボテンも育っている。しかし、標高が1,700~2,000mもの高地のため、年間平均気温が15°Cと涼しい。そして山脈で湿った空気が遮られるため雨は年間わずか200mmと少ない。12~1月にぱらつく程度で、晴天日は年間で220~340日もある。高地だから涼しいが日射量が多く紫外線が強く日較差も大きいため、光合成が盛んに行われブドウは早く完熟し、果皮が厚くなり香り成分や色素が豊か、そして酸のフレッシュなブドウが得られる。

「エル・エステコ」の名を冠するアイテムのうち、2017年が初ヴィンテージの「ブラン・ド・ブラン」と「ブラン・ド・ノワール」が、近年急速に注目を集めている。これまでアルゼンチンと言えば赤、とくにマルベックが注視されてきた。しかし、上質な白ワインの評価が高まっており、今後もさらに注目度が上がる気配。

エル・エステコの「ブラン・ド・ブラン2019」(左)と「ブラン・ド・ノワール2019」。ラベルにはサボテンが描かれている。

「ブラン・ド・ブラン2019」は、複数品種による白。ステンレスタンク発酵のマルサンヌ(20%)、ルーサンヌ(20%)、ヴィオニエ(5%)はフレッシュ感、ミネラル、エレガンスを。60hlのフレンチオークのフードル発酵のシャルドネ(40%)、そして3分の1を60hlのフードルで発酵したトロンテス(15%)はストラクチャーと余韻を与えている。

醸造責任者のアレハンドロ・ペパ氏は、フランスでインスピレーションを得た。「アルゼンチンでブレンドの白は少ないですが、私たちは高品質で特別な、ユニークなワインを生み出す力を内包しています。マルサンヌとルーサンヌを試飲して、そのエレガンスと力強さに興味を抱き、帰国後すぐに新しい白の開発に一から着手しました。デリケートなアロマのエレガントな白ができたと思います」。「ブラン・ド・ノワール2019」は、ピノ・ノワール100%で「ブラン」とあるが色はサーモンピンク。果皮浸漬ではなく優しくゆっくりと圧搾した結果の自然な色のようだ。6か月間バトナージュしながら熟成している。

「カルチャキ・ヴァレーの中でも南西に位置しキルメス山脈の麓であるチャナル・プンコは、世界で最も高地にある畑のひとつで、標高2,000mに位置します。石灰質が豊かでミネラルに富む土壌で、2000年から優れたピノ・ノワールを生産しています。当初はスパークリングワインや「ドンダビ」に使っていましたが、アルゼンチンで最も繊細なロゼになったと自負しています」と、ペパ氏。どちらも独自の個性があり、ネーミングとともにとても印象的なワインだ。

醸造責任者のアレハンドロ・ペパ氏。「アルゼンチンでブレンドの白は珍しく、ピノ・ノワールの100%のロゼもほぼないはず」。

 

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