ウコ・ヴァレーに注目を集めた クロス・デ・ロス・シエテ

写真:アンデスを臨む850haもの広大な敷地。ロラン家を含めてボルドー4家によるプロジェクト。

アルゼンチンのワイナリーが輸出に目を向海外市場で通用する品質を求め、コンサルタントとして招かれたミッシェル・ロラン氏。頻繁に訪れているうちにウコ・ヴァレーに魅せられた。ここでロラン・チームが目指していることとは。

取材・文 名越康子

世界中を飛び回りあまたのワイナリーでコンサルタントを行っているミッシェル・ロラン氏が、ボルドーの仲間と始めたプロジェクト「クロス・デ・ロス・シエテ」。その広大な850haの敷地は、ウコ・ヴァレーの中央に位置するトゥヌジャンにある。正確な位置を確認すると、トゥヌジャン南部で2012年にGIに認定されたビスタ・フロレスのエリアから5kmほど西に位置していると言う。

「クロス・デ・ロス・シエテ2018」は、偉大なヴィンテージのひとつで、フレッシュ且つ凝縮している。

標高970~1,200mの高地にあり、日較差が大きい。夏には18~20°Cも異なる。そのため夜間にブドウの代謝が抑えられ、酸が高く保たれ、ポリフェノールやアントシアニンが豊かになり凝縮感や深い色合いが得られる。その結果、長期熟成可能なワインを生むことができるのだ。畑は北東向きで斜度が5%あるため、日照量にも恵まれており、ウインクラーの気候区分では「III」にあたり(IIである年もある)ブドウが良く成熟する。また、アンデスの麓にあるのも利点だ。山に近いため雹や嵐から守られている。そしてドリップ灌漑に使用する地下150~220mから汲み上げる地下水は、氷河の溶解水や雪解け水でpHが低いためワインに自然な酸がもたらされる。土壌は不均質な沖積土で、小石、大きな石、砂から成り、粘土はほぼない。高い位置ほど岩石は鋭角的で石灰質の堆積物もある。大変水はけの良い土壌である。

このような恵まれた環境で、マルベックを中心に、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラー、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランの栽培を始めた。畑の開墾から行ったため、初ヴィンテージは2002年。当初から各国の評論家より高評価を得続け、ウコ・ヴァレーの名声を上げるのに大きな役割を果たしてきた。ところで、近年とくにウコ・ヴァレーにおいてGIが徐々に増えてきている。それに対してロラン・チームはどのように考えているのか意見を求めた。

「品質の高いワインができてこそ、GIを有名にすると考えています。高品質で個性的なワインを長期間一貫して造り続ける代表的な生産者がいて初めて、アペラシオンの品質について語ることができます。ボルドーでは何世紀にも亘り行われてきたことです。しかし、まだアルゼンチンではこういった考えが尊重されているとは言えないのではないか。ともするとマーケティングが優先されることがあると感じることがあります」。本当の意味でウコ・ヴァレーが躍進するのは、まだこれからであると考えているようだ。

最新ヴィンテージの2018年は、「ここ30年で最も素晴らしいヴィンテージのひとつ」だと言う。夏のはじめは暑かったがその後はドライでクール、そして3月から4月にかけて日較差が過去最大となり成熟が早まった。その結果、例年より2週間早い収穫で、アロマと果実と酸のバランスが最高だった。じつにバランスが秀逸で、熟成後の姿も大変楽しみだ。

アルゼンチンでコンサルティングを始めたミッシェル・ロラン氏は、まず畑仕事をより重視し綿密に行うべきだと告げたと言う。

 

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