ボルゲリの風とフィネスを表す「グラッタマッコ」 Grattamacco/ボルゲリ Bolgheri

ボルゲリといえば、ティレニア海に平行して走る街道がワイナリーの目抜き通りだ。しかし、ここで2番目に長い歴史をもつ「グラッタマッコ」の畑は丘の上にある。平地ではなく丘から生まれるボルゲリらしい、独自の個性を備えている。

 

<3か所の畑>

グラッタマッコの敷地は、森に囲まれている。1977年にベルガモから来たピエルマリオ・ミレッティ・カヴァッラーリにより、2haに初めて植樹されたのはサンジョヴェーゼとトレッビアーノだった。当時、この立地で何か赤と白用に植えると考えれば、ごく普通の選択肢だったに違いない。

しかしサッシカイアの影響だろう、1980年代にカベルネ・ソーヴィニヨンを植樹した。その後に他の品種も増え、今では3か所に合計26haの畑を所有し、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、メルロ、サンジョヴェーゼ、ヴェルメンティーノ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドを栽培している。

ワイナリーのすぐ側にある畑は、北東から北西向きで標高120m。風通しがとてもよく、雨の後に特によく吹くのもアドバンテージのひとつだ。また、7月から8月には最高気温が30℃にもなるが夜間は15℃まで下がり、日較差も十分にある。

この畑にはサンジョヴェーゼ、メルロ、そして白ワイン用のヴェルメンティーノがある。街道沿いの平地では、サンジョヴェーゼには暑すぎて夏に成長が止まってしまうと聞いたことがある。丘の上の畑だからこそ、サンジョヴェーゼが生きるのだ。

オーナーのクラウディオ・ティーパ氏

2002年にモンテクッコの「コッレ・マッサーリ」も所有するティーパ家がここを購入した。その後、ガイアの「カ・マルカンダ」の向かいに2ha購入しアルベレッロ(株仕立て)でカベルネ・ソーヴィニヨン70%、カベルネ・フラン25%、プティ・ヴェルド5%を2004年に植樹した。「猛暑の2003年の後、水不足に備えてプーリアなど南イタリアに倣うことにした」と醸造長のルカ・マッローネ。

2003年からここで仕事を始めた彼は「グラッタマッコ」だけでなく、「コッレ・マッサーリ」、近年グループに加わったモンタルチーノの「ポッジョ・ディ・ソット」、すべての醸造長を務める人物だ。

さらに最近、標高200mの10haの畑を買い足した。カーサ・ヴェッキアと呼ばれる区画で、樹齢17年のカベルネ2種とメルロが栽培されており、これからサンジョヴェーゼも植樹すると決めている。

 

<シンプルな造り>

醸造所へ入ると、いくつもの木樽が並んでいた。700ℓのティネッロと呼ばれる醗酵槽で1982年から使用している。自然酵母で温度管理も行わない極めて「シンプル」な造りだ。2週間ほどの醗酵中は日に2、3回ピジャージュを行い、マセレーションは1週間ほど。

一度ステンレスタンクへ移し、2月初めまで静置しておく。それは、人為的な清澄をしないことと、ワインの出来によって購入する樽を決めるからだ。小樽はフレンチオークで、ピノ・ノワール仕様の長く低い温度によるミデイアム・トーストを基本としている。毎年100樽を新調し、厚さやトースト方法によりおよそ5種類を仕入れている。

地下の樽熟成庫の壁は、この地の土壌を表すフリッシュがむき出しになっていた。柔らかな石灰岩・砂岩・頁岩互層で、庫内の保湿に役立っている。グラッタマッコは約18か月の眠りにつき、その後ブレンドされる。

 

<単一畑のキュヴェ>

すでにある単一畑のキュヴェに「ラルベレッロ」がある。平地の2haのアルベレッロ(株仕立て)の区画で、3品種を収穫時にブレンドしてしまう。

一畝にカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドという順番で植えられていて、その順序で収穫を進めている。「カベルネ・フランの出来がとてもよく、鍵となっている」とルカ・マッローネ。

丘の畑の土壌はフリッシュが基本で砂利が多いのに比べ、平地では粘土と砂が多い。標高、風通し、土壌などの違いにより、グラッタマッコがフィネスの赤なのに対して、ラルベレッロはパワフルな赤になる。

「丘の葡萄は収穫が平地より1週間ほど遅く、ワインの熟成もゆっくり。丘のワインは果実の甘みよりドライな印象で、ミネラル感が特徴だ」と説明する。

2年後に新たなキュヴェが生まれる予定だ。カーサ・ヴェッキアの区画は「アイア・ヴェッキア」から購入した。「前オーナーのペレグリーニは賢明な人で、ニュージーランドの土壌学者ダニエル・シュスターを招聘してクローンや台木を選び、植樹した」。

その中にある畑「マエストラーレ」は、北向きで北風の影響もありカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロがゆっくりと成熟するため複雑さが得られる。「2品種を同時に収穫し、醸造した」という。

「この付近は昔からサンジョヴェーゼを栽培していた場所だったが、それだけではシンプルになる。ボルゲリらしさを表現するためにカベルネなどとブレンドすると決めた」。

この新しいキュヴェ「マエストラーレ」ができれば、ボルゲリの丘らしさが、より映し出されるにちがいない。

 

“Grattamacco Bianco”Bolgheri Vermentino 2015 醗酵は樽とステンレス併用。2015年はリッチな年だったため、3分の2がステンレスだった2014年に対して、より複雑性を出すために樽を70%と多めに。4〜8か月間バトナージュ。翌年4月頃にブレンドして瓶詰め。フレッシュなレモンのような香り。なめらかな口当たりでフレッシュな酸と塩っぽさが心地よい。クリーミーさは樽熟成に、酸の高さはカリウムの少ない土壌に由来する。

Bolgheri Rosso 2015 ステンレス醗酵で8か月樽熟成。10%のみ新樽。カベルネ・ソーヴィニヨン60%、カベルネ・フラン20%、メルロ10%、サンジョヴェーゼ10%。94年が初ヴィンテージ。香りは若干閉じ気味だが黒い果実が感じられ、なめらかなアタックで、充実した味わい。タンニンにも若さが感じられる。丘らしさをこのキュヴェにも感じる。

“L’Alberello” Bolgheri Rosso Superiore 2014 6,000本ほどの少量生産。アルベレッロ仕立ての単一畑。カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドを混醸。通常より1分長めにトーストした樽を使用。色が濃く、香りは閉じ気味ながらスパイスが感じられる。凝縮感があり、まだタイトさもあるが厚みのあるなめらかなテクスチャー。収斂性はしっかり。

“Grattamacco Rosso” Bolgheri Rosso Superiore 2013 カベルネ・ソーヴィニヨン65%、メルロ20%、サンジョヴェーゼ15%。「雨で造らなかった1984年以外はどの年もボトルが残っている。初ヴィンテージの1979年はほぼサンジョヴェーゼ100%だった。1982年にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドし、バリックも使い始めた。80年代後半から今のブレンドの基本ができた」。香りが華やかで、熟した果実、スパイス、なめし革などが感じられる。なめらかなアタックで、タイトで上品さがあり、収斂性もしっかり。余韻が長い。

 

2016年ヴィンテージ:2016年も暑く心配していた。例年だとメルロを9月から収穫するが、8月26日から始めた。ボルゲリ・ロッソ用のメルロはフレッシュさが必要なため、早めに収穫するからだ。その1週間後にグラッタマッコ用により樹齢の高いメルロを収穫する。とても小粒で2012年を思い出した。サンジョヴェーゼは9月1日から収穫し、その後にヴェルメンティーノ。9月半ばからカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンと進み、9月末まで収穫を続けた。(Y. Nagoshi)

輸入元:モンテ物産(株

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