ピュアで繊細、テロワールを表現したオートクチュールのワイン「ドメーヌ ペロ・ミノ」

「ドメーヌ ペロ・ミノ(Domaine Perrot-Minot)」は現在モレ・サンドニを拠点に10.2ha の自社畑を所有し、ヴィエーユ・ヴィーニュのニュイ・サン・ジョルジュやヴォーヌ・ロマネ、1級シャンボール・ミュジニーやジュヴレ・シャンベルタン等を生産。特にジュヴレ・シャンベルタンでは多くの特級畑を所有しているのが特徴だ。

ファインズが開催したチャリティ試飲会に参加するために来日した5 代目となる現当主、クリストフ ペロ・ミノ氏はオートクチュールの世界に身を置いた後、7年間にわたりボーヌでクルティエの仕事に携わり、1993年からドメーヌを引き継いだという変わり種。「ワイン造りは技術だけで無く、アーティスティックな面も欠かせない」と考える氏は、テロワールの特徴をワインに表現させるために、①農薬や化学肥料を使わず、低収量で手摘み、②畑で選果を行った後、さらにおよそ10mの長さの選果台では16~20人がかりで一つひとつの房を真ん中で切り、房の内側の顆粒まで健全で熟度の高いぶどうだけを選別するようにしている。

目指しているスタイルは、「繊細で上品、喉ごしがよくて自然に体に入っていく様な飲みやすさがあり、若くても長く熟成させても楽しめるワイン」。とはいえ、これまで20年以上に亘るワイン造りのなかでクリストフは当初、力強いワインを目指していた。その後2000年代に入ると新しい自分のスタイルを模索するようになり、2005年からははっきりと上品で繊細な味わいのワインを目指すようになったという。「2005年はぶどうの熟度が進み、結果的に構造のしっかりとしたワインができてしまった。だから、現在のようなスタイルの特徴が出せたのは2006年から」だった。

スタイルの変化に伴い大きく変わったのは醸造法。たとえば、抽出が過度にならないようにピジャージュを止めルモンタージュに切り替えた。また、13年以降少しずつ対象を広げ、15年からは全てのワインで除梗を行っている。瓶詰め前には清澄や濾過も一切行っていない。

この日、比較試飲に供されたのは2013年産の二つの特級畑ワイン、Charmes Chambertin とMazoyères-Chambertin。マゾワイエールは、通常シャルム シャンベルタンとして販売されることが多い。それは、マゾワイエールは英語圏では発音がしにくくシャルムと表記した方が売りやすいというマーケティング上の理由に加え、シャルムとマゾワイエールを個別に瓶詰めできるだけの面積を持っているドメーヌは決して多くないからだ。現在、マゾワイエール・シャンベルタンとしてワインを出しているドメーヌはペロ・ミノの他はカミュ、リシャール、トプノ= メルム、デュガ=ピィだけとか。

しかし、この二つの特級畑は隣合っているとはいえ、テロワールが大きく異なる。砂利混じりの粘土石灰質土壌のマゾワイエールは表土が厚く、ミントやタバコ、スパイスなどの野生的なニュアンスの香りをもち、骨格がしっかりとしている。一方、表土が浅いシャルムは赤系果実、花の香りが豊かで、エレガントかつ女性的。しかもペロ・ミノが所有するシャルムの畑はアルマン・ルソーのシャンベルタンの直ぐ下に位置していて、シャンベルタンの力強さと偉大さをも兼ね備えている。そうした特徴の違いは、この日の試飲をとおしても素直にうなずけるものだった。

もう一つ、2013年産とともにシャルム・シャンベルタンの垂直比較試飲で供されたのが2012年産と2004年産。冷涼な2103年産がフレッシュで引き締まった味わいを特徴としているのに対し、日照に恵まれぶどうの熟度が上がった2012 年産は甘さをもった黒系果実の香りが豊かで、口のなかではたっぷりとしたヴォリューム感が広がる。一方、2004 年産は当初のヴィンテージ評価は2005 年の影に隠れて決して高くないものの、瓶詰めから10 年経った今飲むとリコリスやゲイミーなニュアンスをもった熟成香が心地良く、しかもフレッシュでシャルムならではのミネラル感をしっかりととどめている。熟成したグランクリュ ジュヴレ・シャンベルタンの魅力を伝える1本だ。 (M. Yoshino)

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