フィオーナ・モリソンMW 「レートル」と「リフ」を語る

©Domaines Jacques Thienpont

フィオーナ・モリソンMW

シャトー・ル・パンの生みの親で夫のジャック・ティエンポン氏と醸す

カスティヨン・コート・ド・ボルドーの「レートル」とサンテミリオンの「リフ」を語る

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フィオーナ・モリソンMWとジャック・ティエンポン氏

フィオーナは、スコットランド出身で、英国、フランス、アメリカで学び、ワイン業界での経歴は40年ほど。そのうち30年間をジャック・ティエンポン氏とパートナーとして、ボルドー右岸に3つ所有するエステートの運営にも携わっている。

「二人が愛するワインのスタイルは共通しています。生命力、エネルギー、純粋性があるワインです。ヴィンテージごとに条件が変わろうとも、共通するものはあると信じています」と、フィオーナは言う。

ジャックの出身はベルギー。ベルキーは、もともとボルドー右岸のワインにとって最大の消費国だった。その理由は、19世紀初めにナポレオンがスペインと戦争するために橋をかけるまでは、ボルドーはジロンド川で右岸と左岸で分離されていたため、右岸のワインは汽車によってベルギー、オランダ、ドイツなど北欧や東欧に運ばれていたから。そして、ティエンポン家は1842年からワイン商を営んでいた一族で、現地で試飲して樽で選び購入し、ベルギーでボトリングしていた。彼らは目利きで、ラフィット、イケム、D.R.C.など高品質なワイン商として有名だった。その後、20世紀初めに右岸でエステート経営を開始し、サンテミリオンのトロロン・モンドを取得。1924年にはヴュー・シャトー・セルタンを。1930年代初頭に恐慌の影響でトロロン・モンドを売却せざるを得なくなったが、歴史は回り、2010年に再びサンテミリオンに取得したエステート「リフ」はちょうどトロロン・モンドのすぐ隣だった。

2016年には、カスティヨン・コート・ド・ボルドーの「レートル」を購入した。その「レートル」と「リフ」のワインを紹介するプレスミーティングが、「レートル」の日本正規代理店に選ばれたラック・コーポレーションによって3月末に開催された。そこで聞いた内容をお伝えする。

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カスティヨン・コート・ド・ボルドーの「レートル」

サンテミリオンとポムロールは地図で見るとハートの形。そしてその東隣に位置するのがカスティヨン。石灰岩の台地にある。深い粘土と化石を含む石灰岩はどちらも保水性がある素晴らしいコンビ。石灰岩はカスティヨンまでで、崖の向こう側はベルジュラックの森。

「私たちは、3つのエステイトにそれぞれ樹木の名前をつけています。レートルL’Hetreは、日本ではブナの木。ラベルにはその切り株を描いてもらいました」。ちなみに、セカンドの「ラ・レゾン・デートル」には葉っぱのデザイン。(綴りは少し違うが、「なぜなら、その理由は」を意味するフランス語でもある)

27haの畑を所有と共に2015年に購入。「とても美しくて感動した」のも購入の理由の一つだったという。品種は90%がメルロで10%がカベルネ・フラン。現在、カベルネ・フランを増やしているところ。セカンドには、樹齢20年までの若木、粘土の深い区画や標高が低い区画のブドウを中心に使っている。2022年のヴィンテージから新しいセラーで醸造している。現在、ワインメーカーで責任者を務めるのは、アントワーヌ・マリオ氏。収穫は全て手摘み。コンクリートタンクで発酵している。

「今日紹介する2023年ヴィンテージは、私のお気に入りの年。9月にインディアンサマー(小春日和)が多く見られ、素晴らしく、特にカベルネ・フランの出来が良かった」。

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「ラ・レゾンデートル 2023」 La Raison d’Hêtre

メルロ83%、カベルネ・フラン17%。22%新樽。2023年は素晴らしいヴィンテージだったため、セカンドは全体の18〜20%ほど。

「アプローチしやすく、スモーキーなタンニンにはスパイシーで少しチョコレートのような香りも感じられる。ブドウの樹木、森、石灰岩など自然の風景を感じられる味わいに仕上がっていると思います」と、フィオーナさん。

試飲すると、整然とした香りの中にほんのりスパイスと熟した凝縮したチェリーが香り、果実が生き生きとしている。しなやかなアタックにフレッシュな酸、細やかなタンニンが続き、余韻もフレッシュで、ほのかな苦味がブラックチョコを思わせる。丸みよりもしなやか、上品さが感じられる味わい。

「レートル 2023」 L’Hêtre

メルロ85%、カベルネ・フラン15%。25%新樽。

「こちらは多層的な香り。秋の果実、カシス、垣根に使う植物なども。オークやジャム的な感じが前に出ることもありません。10年経過すれば品質はさらに高まります」。

試飲すると、丸みも感じられる香りで、ほのかにスパイスも感じられる光沢ある香り。とても滑らかなアタックで、テクスチャーが心地よく、タンニンも丸みを帯び、豊か。ストラクチャーもしっかりしている。ほのかな苦味はやはりブラックチョコ的な印象。

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サンテミリオンの「リフ」

2010年に取得した「リフ」は、トロロンモンドの隣に位置している。9haの畑にはメルロ75%、カベルネ・フラン25%が植えられている。畑はサンテミリオン・グランクリュのエリアではあるが、ここは「サンテミリオン」

26か所でボーリングして土壌分析し、土壌と苗木と台木の組み合わせなどが良くないと判断し、4haを引き抜いた。ここも区画ごとに醸造管理している。

「リフ」はイチイの樹のこと。お墓の敷地内に植えられることが多く、樹木が魂を受け入れてくれるとされ、赤い実は毒性があり、葉には傷を癒す効能が。幹は弓に使用されていて、現代では野球やクリケットのバットにも利用されている。英語読みにすると、Ifは日本語だと「もしも……」を表し、毎年の収穫は毎回チャレンジであることを思い起こさせる名前でもある。

2019年は、取得してから10年ほど経過したヴィンテージ。冬は湿度高かったが、結果的に完璧な年だったという。「開花時期は天候良くて収穫量も安定し、夏の終わりに日較差が大きくなりブドウのフレッシュ感が得られ、果皮がきれいに育ったためタンニンはスムーズに。温暖な年には、カベルネ・フランが果実感を引き上げてフレッシュさを出す役割を果たしてくれます」。

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「リフ 2019」 L’If

メルロ75%、カベルネ・フラン25%。新樽50%。

「クラシックなサンテミリオンの姿、つまりフレッシュさと質の良いタンニン、赤い果実(黒い果実より)、石灰岩に由来する塩っぽさも感じられます」。

試飲すると、ほんのり熟成の要素も感じるがまだ開ききっていない香りで、スパイス、少しだけドライなチェリーに、わずかにゲイミーさが加わる。まろやかさとフレッシュさがバランスし、ほの苦みが余韻を長くする。タンニンが細やかでフレッシュ。

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最後にフィオーナさんに一つ質問してみた。収穫期をなるべく遅くできるように工夫しているということだが、気候変動前の収穫と比べるとどうなのだろうか。すると、決して気候変動前と同じような時期に戻ったわけではないという。

「ただ、まとめて収穫していた以前とは異なり、今では区画ごとにより細かく収穫時期を判断し精密に行っているので、結果としてより良い品質のブドウが得られるようになっています。もちろんその分収穫人の確保が難しいけれどね」と、フィオーナさん。しかも、上で言及したように早朝、日の出から収穫開始とのこと。こうして丹精込めて造られたワインは、やはり、じっくりと味わいたい。

正規輸入代理店:ラック・コーポレーション

text by Yasuko Nagoshi

「フィオーナ・モリソンMWが語る、ボルドーの今」もぜひご覧ください!

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