ドメーヌ・ド・バロナーク

ドメーヌ・ド・バロナークは、シャトー・ムートン・ロートシルトで知られる故・バロンヌ・フィリピーヌ・ド・ロートシルトとふたりの息子により、1998年に見出され息を吹き返したエステートだ。ワイナリーと畑があるリムーは、南仏のラングドック・ルーションに含まれるが、山の産地でボルドーに最も近い位置にある。ちょうど地中海と大西洋、そしてピレネー山脈の交差点でもある。

フィリップ・セレイス・ド・ロートシルト氏は、共同オーナーのひとりで5年前にドメーヌ・ド・バロナークも継承した。

「日々、この土地の素晴らしさを実感している。エレガントで深みがあり、上質なワインができる場所であり、年々進化を遂げている。もちろん未来も見据えている」と、フィリップ・セレイス氏。

マネージング・ディレクターのオーギュスタン・デシャン氏もこう言う。

オーナーのフィリップ・セレイス・ド・ロートシルト氏(右)とマネージング・ディレクターのオーギュスタン・デシャン氏(左)。

「常に新しい発見や学びがある場所だ。山の産地なのでまだそれほどでもないけれど、気候変動の影響も受け始めている」。

例えば白ワインにおいては、シャルドネ100%の「ドメーヌ・ド・バロナーク シャルドネ」は2018年が最後になるだろうと言う。2018年は暑い年で、確かにパイナップルなどのトロピカルフルーツの香りが感じられた。そこで、2019年は暑いながらも夜間の気温は下がったが、シャルドネに4%のシュナン・ブランをブレンドし、フレッシュな酸や塩味をプラスしたと言う。2019年はフローラルなアロマも加わり、よりエレガントで酸がキリッとしていて2018年と異なる印象だ。その後も2020年は2%、2021年は5%のシュナン・ブランをブレンドしたそうだ。当初は近隣の畑から購入したが、2020年にはバロナークでも植樹をしたという。

この場所は17世紀に修道院が所有し、フランス革命で公売にかけられて依頼何度かオーナーが変わった。1998年に購入した当時は、110haの敷地のうち43haあるブドウ畑にはシャルドネが最も多く栽培されており、次にカリニャン、グルナッシュ、そしてメルロとシラーが少量あったようだ。しかし、粘土石灰質土壌や砂利質の土壌で、標高250〜350mの立地にあることなどを考慮して品種構成を変更した。降雨量がボルドーより少し多く、収穫もボルドーよりも遅い。メルロ、カベルネ・フラン、シラー、マルべック、カベルネ・ソーヴィニヨンによる赤ワイン「ドメーヌ・バロナーク」を2003年ヴィンテージから生み出した。

「赤用のブドウは9月上旬から10月末まで収穫。標高が高く夜間の気温が下がるので、ゆっくり成熟する。これが重要だ」と、オーギュスタン。

2017年は、なめし皮や少しドライなチェリーやカシス、それにカカオ豆のような香ばしさが加わる香りで、なめらかなテクスチャーでタンニンは細やか。今でも十分おいしく飲める円熟感があるが、「もう一度寝かしておいても良いかもしれない」と、更なる熟成可能性に言及した。

2018年は若々しく、全体的によりデリケイトでエレガント。繊細な余韻が長く続き、とても印象的だった。

「2017年はクラシックなスタイル。暑い年のメルロの力強さが出ている。2018年は新たなスタイルで、よりフィネスやデリケイトさに注力した。メルロの比率も低くした」。ブドウの樹齢も25年以上になり、土地への理解も深まってきたこともスタイルを変えた要因のようだ。2018年以降は、より繊細でバランスの整ったスタイルを追求していくという。(Y. Nagoshi)

輸入元:ピーロート・ジャパン

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