満を持するというのは弓を十分に引き絞ることで、それが転じて準備を十分にして機会の来るのを待つという意味で使われるようになった。コノスルのクラシック・メソッド(ボトル二次発酵)スパークリングワイン「センティネラCentinela」の発売に至る経緯はこの“満を持する”という言葉がぴったりはまる。
コノスルの醸造責任者アドルフォ・ウルタドからこのワインの計画を初めて聞いたのは2009年秋のことだった。もう7年以上も前の話である。
コノスルはチリの中でも特に冷涼な気象条件の土地にブドウ畑を拓き、そこにピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ゲヴュルツトラミナーを植え、
数々の実績を積み上げてきた。ヴァラエタルワインから始めて、より複雑味のあるプレミアムワインへと進み、ついにはピノ・ノワールの逸品・オシオへと発展した。いまでは世界で
最も広いピノ・ノワールの栽培面積をもつ生産者になった。
アドルフォが長らくあたためてきた思いは、シャンパーニュに負けないクオリティのスパークリングワインをチリのブドウで造ることだった。「ブドウの力に確信がもてたので、スパークリング・ブリュットを造った」のが2008年のこと。ビオビオ・ヴァレーのシャルドネを主体にピノ・ノワールと少量のリースリングを加えたもので、二次発酵はボトルではなくタンクでおこなった。
なぜタンクで始めたのか、その理由をアドルフォは次のように説明した。
「二次発酵から瓶熟成まで一貫して涼しい環境におくことは難しい。コノスルは1990年代に創業した新しいワイナリーなので地下熟成庫が狭いからだ。樽熟成用に作った地下セラーは赤ワインのマロラクティック発酵を促すため庫内の温度を上げることがあるため、ここに熟成中のボトルを保存することはできない。商業ベースでボトル二次発酵を完遂するには庫内の温度の安定した専用セラーが必要になる。だから初めはタンク二次発酵を採用した」。
しかし一方で、この時すでに「ボトル二次発酵の試験はすでに数回やっている」と自信ありげに語っていた。そして2010年の収穫期までにボトル熟成スペース建設の目途を立て、2010年産から本格的に取り組み始める予定だった。ところが2010年2月27日にコンセプシオン沖の大地震が起きてワイナリーは大きな被害を蒙り、このクラシック・メソッド計画はいったん保留になった。ワイナリーの補修を終え、2013年になってようやく再スタートをきったので、この春リリースされるセンティネラは2013年のミレジメである。
一次発酵を終えてからすでに4年が経とうとしている。この間、アドルフォは定期的に熟成中のボトルを開け、試飲を繰り返した。そして昨年秋、「ようやく納得できる味わいになった」ので、今春のリリースを決断した。(K.Bansho)
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