特集 輸入リキュール/秋からの取引基準の変更で踊り場状態から脱出なるか

6月1日からの改正酒税法の施行に伴う取引条件の変更は、納価交渉が遅れていたホテルや大型居酒屋チェーンの一部でも8月末までにほぼ完了した。9月以降のメニュー改定時には、ビール類の値上げが予定されるが、こうしたなか、需要喚起策のひとつとして、輸入リキュールを含むお酒の飲み方提案がさらに活発化しそうだ。9月1日からはカンパリブランドの代理店が数十年ぶりに変更する。さらに、輸入リキュール市場のボリュームゾーンであるカシスで、久しぶりにキリンから新商品が投入されるなど、今後の市場活性化の起爆剤となるか大いに注目される。

 

本格リキュールへ回帰の動き

メーカー・卸筋とも「ビールを含めて値段が上がっている中で、お客さんにより本物、本格的なものを提案したいという流れが強まって来るのではないか」とみている。

料飲店における秋冬のメニュー改定時にはまずはビールの値上げが予想されるが、スピリッツ&リキュールの分野でも新たな飲み方提案が活性化しそうだ。

すでに、スピリッツでは、ビーフィータージントニ、ラムハイ、クエルボテコニックなど新たな飲み方提案が進められている。この結果、上半期までの販売実績はビーフィーター(ジン)112%、バカルディ(ラム)103%、クエルボ(テキーラ)111%増といずれも上向いているので、新しい飲み方提案の効果は実証済みといえる。

一方、輸入リキュールについては、居酒屋ではコンク需要が強く、その提案領域は主にバーやMOT 業態に限定されてきた。加えて、バーテンダーも自らリキュールを作り出す傾向が強く、これがレンジリキュールの伸び悩みの一因ともなってきた。ただ、リキュール全体の需要が減って来ている訳ではないので、今回の取引条件の変更を契機に、ユーザーの関心がより本格感やプレミアム感をもった製品へとシフトすれば、本格リキュールにとっては追い風となりそうだ。

ビールメーカーの担当者によれば「チェーン料飲店の囲い込み政策の中で、これまで原価を下げるためにコンクに置き換わったところも(今回の納価改善で)一段落して、本格リキュールにまた戻るのではないか。9月以降はそうした流れがより鮮明になってくるだろう」と話している。

 

カンパリブランドの代理店変更

カンパリ、アペロールを9月1日から扱うアサヒビールでは、「8月末段階の在庫は買い取り、9月1日から一気に垂直立ち上げする」と勢いづいている。

ウイスキーでは『ジャックダニエル』と『ジムビーム』の代理店変更により、バーボン及びテネシーのアメリカンウイスキー市場が活性化し、今なお成長軌道にあるという現象を生んだことは記憶に新しい。

特に、カンパリは根強い人気ブランドで、その認知率は高い。アペロールも同様だ。アルコール分はカンパリの25%に対し、アペロールは11%と低いので飲みやすい。グローバル市場では昨年、アペロールがカンパリを逆転している。事前注文の吸い込みもいいようだ。いずれのブランドもアサヒビールが最も得意とするオンビアマーケットが主戦場でビール営業との相乗効果も大きい。カンパリとアペロールの両輪でブランド育成を図る考えだ。

カクテルでは、定番のカンパリソーダ、カンパリオレンジ、スプモーニ、ネグローニを提案する。世界ベストクラシックカクテルランキングにおいて、ネグローニは2位(1位はオールド・ファッションド)なので、伸び代があるとみている。

 

キリンが3年ぶりにカシス新商品

キリンはデカイパーブランドの既存カシス(クレーム ド カシス ノワール・ド・ブルゴーニュ)に加え、フランス産カシス100%使用の日本限定商品『カシスロゼット』(アルコール分17%、エキス分58.5%)を8月29 日より新発売した。レンジリキュールでは3年ぶりの新商品となる。1000 円前後の価格帯とすることで、主に業務用市場の開拓を図る。

デカイパーブランドのコア製品であるオリジナルピーチツリーとの両輪として、ブランドの認知率アップにつなげたいところだ。

飲み方提案では、引き続きワンミックスカクテルとして、カシスロゼットを1対3の割合でアップした、カシスソーダ、カシスオレンジ、カシスウーロンを訴求する。また、料飲店向けに、デカイパーグラス360ml とフリーポアラーをセットにしたスタートキャンペーンを実施する。

オリジナルピーチツリーでは、広口のジャーを使った、ピーチツリーフィズ、ファジーネーブル、ピーチウーロンを提案する。9月以降、キリンのセールスが強化月間として全業態で取り組み、年末にかけて、カシスとピーチで高い伸び率を計画している。(A.Horiguchi)

ビック酒販の輸入リキュールの売上ランキング
順位 商品名
ポール・ルヴィエール クレーム・ド・カシス
ポール・ルヴィエール クレーム・ド・ペシェ
カルーア コーヒー リキュール
ルジェ クレームド カシス
マリブ
ベイリーズ アイリッシュクリーム
カンパリ
ディサローノ アマレット
コアントロー
コカレロ
ゴディバ チョコレート リキュール
イエガーマイスター
カルーア 抹茶
ジャックダニエル テネシーハニー
ルジェ クレームド ペシェ
ジムビーム アップル
ペパーミントジェット27
アペロール
マスカットリキュール ミスティア
グラン マルニエ コルドンルージュ
※集計期間:2017年7月1日~7月31日

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