開園8年目を迎えたグランポレール池田ヴィンヤード

グランポレール安曇野池田ヴィンヤードは2009年の開設以来8年を経て葡萄樹が大きく成木化しつつある。今年6月にはAIを利用した観測機を導入し、圃場環境のデータ集積によってさらに精緻な葡萄栽培を目指している。また、来年春には新たな区画0.6haにピノ・ノワールを増植する予定だ。

(左から)森本真紀ワイン事業部部長、工藤雅義チーフワインメーカー、宮石徹常務取締役営業本部長

日本アルプスワインバレーに属する「安曇野池田ヴィンヤード」は、長野古里ぶどう園に続いて、サッポロビールが長野県内に所有する2番目の自社圃場。敷地面積12.6ha の圃場は標高約560~630mの南西向き斜面に広がっている。西は北アルプス、東は中山山地に囲まれたこの地は、南北に風が吹き抜け、午後からは平たん地から吹き上がる風も加わり一年を通して風通しの良い環境下にある。特に、夏の夕方は北アルプスを経由した冷涼な北寄りの風によって夜温が下がり、昼夜の寒暖差が大きい。酸味が残り、特に赤ワイン品種ではポリフェノール豊かな果実を産出するのが特徴だ。

標高差を利用して14区画に分かれた圃場では、すでに6品種のブドウが植栽されている。品種別内訳は、メルロ3.2ha、カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランが各1.6ha、シラーが1.3ha、そしてピノ・ノワールが0.3ha で、全てギュイヨ式の垣根栽培。ここでは石が多いので、除草剤を極力使わず、基本的に草生栽培を実践。圃場の南西に位置する3区画で栽培されているシラーは土中の窒素成分をコントロールすることにより萌芽率を落とさない様に努めている。またピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランは南北に吹き抜ける風を考慮しつつ、垣根の畝の方向を工夫しながら病害対策を実践。収穫期に現れる椋鳥やヒヨドリなどの鳥害は、バードパンチャーや大きな鳥をイメージした吹き流し、超音波などで対処している。

AIを活用した観測子機“e-kakashi”

「我々はこの畑でまだ8 年の経験しか無いが、(栽培に対する知見は)前半4年と後半4年とでは大きく変わった」と、栽培責任者の田中亘氏。今年6月には5カ所にAIを活用した観測子機“e-kakashi”を設置し、日照量や畑内および地中温度、水分量や養分量などのデータを取り始めている。「最低2年はデータの蓄積が必要だろうが、防除や収穫のタイミングなどに役立てていきたい」という。

さらに、圃場内で標高が最も高い630mの新しい区画0.6haでは、来年春にピノ・ノワールを植栽する。北海道・余市では2006年からディジョン・クローンをつかってピノ・ノワールの栽培に取り組んでいるが、ここではUCディヴィス#5 をつかい、成木後に2トン(212ケース分相当)の収量を目指している。また、同じ池田町内の農業生産法人「ヴィニョブル安曇野」および生産農家1軒と新たな契約を結び、メルロ1.24ha、シャルドネ0.26haの栽培・仕入れを順次開始する。

 

「我が社では今年2017年から2020年までの中期事業計画を策定したが、そのテーマの一つはワイン事業をビールに次ぐ『第2の柱』へ育成することだ。翌2018年には日本ワイン・グランポレールは15周年を迎える。それに向け、“グランポレールを日本を代表するブランドへ”成長させるべく、①国内外の情報発信力強化、②原料調達力の強化、③売上規模の拡大の3つを目指す」と、宮石徹常務。

栽培責任者の田中亘氏

長野産ブドウ調達力を現行より14%増強し、グランポレール全体の販売を2016年の3万1500ケースから2020年には3万5000ケースに引き上げることを目指している。(M. Yoshino)

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トップ画像:北アルプスの山並みを望む安曇野池田ヴィンヤード

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