大橋健一MWが語る ジョージアンワインの魅力 =Back to the future=

ジョージアといえば、最近流行りのオレンジ・ワインの国だ、という印象がある。クヴェヴリと呼ばれる、いわゆるアンフォラで醸しているから一甕ごとに味が違うとか。何しろ印象的なワインだが情報も輸入されているワインも少ないから、それ以上広がる余地がないのではないかと考えていた。

ところが、大橋健一MWが、ジョージアンワインは「まるでバック・トゥー・ザ・フューチャーのようで素晴らしい」というので、どこに魅力を見出したのかインタビューすることにした。ちなみにジョージアはトルコの北東に位置し、西は黒海に面している、コーカサス山脈の南の麓にある。2015年春までは、日本ではグルジアと呼んでいた。人口は400万人に満たない小さな国だ。

 

 

<<現地ではオレンジではなく”アンバー・ワイン”>>

日本では、長期間スキンコンタクトさせた白ワインを「オレンジ・ワイン」と呼ぶのが一般的になっている。ところが、そのお家元とでもいうべきジョージアでは「オレンジ」ではなくて「アンバー・ワイン(琥珀色のワイン)」と言う。どうやらオーストラリアやイギリスのワイン・ジャーナリストが「オレンジ・ワイン」と書いたのが始まりのようだ。確かに「琥珀」と呼ぶ方がより「伝統」的な雰囲気を醸し出せそうだ。

<<クヴェヴリは醸造用の甕>>

土の中に埋められた様々な大きさの甕に、ブドウを入れて醗酵させるのがこの国の伝統的な造り方だ。かつては除梗などせず軽く破砕しただけでそのまま投入していたようだが、今では除梗することも多い。マセレーションの期間も造り手によって異なる。冬の間は甕に蓋をして土を上からかぶせる。半年ほどク頂きたいヴェヴリで寝かされたワインは「味わいに深味があり、日本の出汁の文化にもよく合うのでは?」と大橋MW。ただし、中には亜硫酸を添加していないワインもあるので「扱いが難しい」。「基本的な知識を持った上で扱って」という。

<<日本市場への期待>>

ジョージアのナショナル・ワイン・エージェンシーでマーケティング・マネージャーを務めるエレーヌ・キクナヅさんに、日本市場への期待感を聞いた。

「日本はとても興味深く活気のある市場だと感じている。そして、日本市場でここ数年間ジョージアンワインは上向いている。ふんだんに存在するジョージアの伝統品種は、日本の消費者にとって珍しく新しい。そしてアンバー・ワインは個性が豊かだ。このようなジョージアの比類ない特性を考えると、これから数年間のうちに日本市場で安定した立ち位置を確立できるだろうと期待している」。

ちなみに、ジョージアンワインの年間生産量のうちクヴェヴリ・ワインが占める割合はおよそ10%に過ぎないという。

(中略)

<注目の生産者>

最後に、この秋から日本に入荷予定の注目の生産者について簡単に紹介する。

**シャラウリ Shalauri**

昨年の「インターナショナル・ジョージア・ワイン・アワード」でトロフィーを収めたのがここ。小規模なワイナリーで、すべてがクヴェヴリによるワイン。カツテリの白、ムツヴァネ・カフリの白、ともに美しい造りで、オレンジピール、アプリコットなどのアロマが芳しくまるでヴィオニエのよう。収斂性もしっかりとしている。熟した百目柿のような濃厚さ。モトックスが今秋より輸入する。

 

**シュミ Shumi**

「インターナショナル・ジョージア・ワイン・アワード」の今年のトロフィーがシュミ。ヨーロピアンスタイルが主流ではあるものの、ここのクヴェヴリ・ワインの名声は全ジョージアで知れ渡るほどの高品質ぶリ! 2007年までボルドーのボーセジュール・デュフォー・ラガローズでコンサルタントしていた人物が今醸造の指導に当たっている。これはヴァンクロスが輸入する。

 

**オルゴ Orgo**
ジョージアのタレント的コンサルタントのゴギ・ダキシヴィリGiorgi Dakishviliが父子で造っている、極小規模なワイナリー。息子のテムリTemuriが立ち上げた「ヴィタベネア」はいくぶん艶っぽく、モダンな印象も感じさせるクヴェヴリ・ワイン。前者は今秋より、後者は来年よりアルカンが輸入。

 

**シャトー・ムクラニ Château Mukhrani**

このシャトーの風光明媚な美しさは訪問の価値が高く、栽培・醸造のノウハウを詳しく聞くこともできる。生産の90%がヨーロピアンスタイルのワインで、コーカサスのオーク樽も使用し、非常に高品質。これもアルカンによる輸入。

 

**ラグヴィナリ Lagvinari**

大橋MWが自然派ワインに長けたイザベル・ラジュロンMWから紹介された銘柄で、現地でも名声を博する。自然派ならではの素朴さ、そして放たれる艶っぽさのバランスが見事。ディオニーが輸入する。

 

**ヴァジアニ Vaziani**

ジャパン・ワイン・チャレンジでトップ・クラスに入った銘柄で、今秋よりモトックスが輸入予定にしている。品質の安定感もさることながら、パッケージング・デザインも秀逸であり、日本市場では非常に親しみやすい銘柄となるだろう。

 

中略部分 <クヴェヴリは少数派> <クヴェヴリはユネスコの世界遺産> <クヴェヴリ&ヨーロピアンの合わせ技で><525種類の伝統品種> は、WANDS 2017年11月号をごらんください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

<ジョージアワインマスタークラス~ ワイン文化発祥の地の基本情報を学ぶ ~>

ジョージアの公的機関The National Wine Agency of Georgia主催
講師:大橋健一MW

対象:日本ソムリエ協会 シニア・ソムリエ以上資格保持者
東京会場:2017年11月27日(月)ホテル雅叙園東京

大阪会場:2017年12月4日(月)ホテルモントレ大阪

このマスタークラスで、バラエティー豊かな伝統品種、そして世界遺産にも登録されたクヴェヴリの手法と、ふたつの類い稀な武器をもつジョージアンワインのベールが一枚剥がされることになるだろう。ニッチ市場ではあるが、興味をそそられる人が多そうだ。ウォンズでは引き続き、このマスタークラスのレポートも後日WANDS誌上で掲載する。

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る